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VTuber 2019.05.06

5人で迎えた新時代 “平成最後のVRライブ”でYuNiが見せた可能性

こんにちは!バーチャルブロガーの浅田カズラです。令和!やってきましたね。新しい元号になったことで、特別なにか変わるわけではありませんが、大きな節目と感じた人は多いはず。各所でちょっとしたお祭り騒ぎになっていたことは、ニュースを聞きかじるだけでも伝わることでしょう。

そんな祝祭ムードは、バーチャルもまた同様。バーチャルな界隈でも催された令和を祝うイベントの中でもとりわけ注目度が高かったものといえば、バーチャルイベントプラットフォーム「cluster」で開催されたバーチャルシンガー・YuNiによる「さよなら平成カウントダウンライブ UNiON WAVE – clear –」でしょう。

4人のゲストも招いたカウントダウンライブは、これまでのYuNiの活動の集大成であると同時に、平成の最後に花開いた「バーチャル」という文化の総決算でもありました。以下、平成を締めくくり、そして令和へのさらなる飛躍も感じられた「さよなら平成カウントダウンライブ」のライブレポートです。

入場〜開演まで

大規模ライブということもあり「まず会場に入れるのか?」という不安があったのですが、入場はかなりスムーズでした。簡単なキャリブレーションを済ませたあとは、ライブ会場に必要なデータのダウンロードを待つのみ。かなりのデータ量だったためか時間こそかかりましたが、トラブルらしいトラブルも起こることなく入場できました。

今回のライブはカスタムアバター使用不可で、参加者全員がクリスタル状の物体に。「全員のアバターを統一」という手法は昨年の輝夜月のライブとも共通していて、会場全体の演出を鑑みれば負荷対応としては順当なところでしょう。
 
真っ暗な空間にはモニターが一つあり、開演までの間、各所から寄せられた応援動画が流れ続けていました。
 
キズナアイからのメッセージも!upd8の縁を感じます。

そして23時ちょうど。令和へのカウントダウンは、定刻通りに幕開けとなりました。

前半戦:ゲストといっしょにデュエット

今回のライブはざっくり説明すると2部構成となっています。平成最後の1時間を走る前半戦は、4名のゲストとともに送るデュエットステージとトークコーナーでした。

選曲はそれぞれのゲストのオリジナルソング。十人十色な歌の数々を、ここでしか見られない組み合わせで披露される、のっけからスペシャルなライブがそこにありました。

with 天神子兎音「フーアーユーなんて言わないで」

まず最初のゲストは天神子兎音。選曲はもちろん彼女のオリジナルソング「フーアーユーなんて言わないで」です。

テンポ早し、早口な箇所あり、早口言葉パートもありな、子兎音様本人をして「これむずいんだよね」と言わしめる一曲。これをうまい具合にパート分けしてノリノリで2人で歌っているではありませんか!あらためて両者の歌唱力の高さを思い知らされた次第です。早口言葉パートでは、なぜか早口言葉を忘れて謎ポーズを取る(後に子兎音様はこれを「機動戦士ガンダムNT」のポスターに似てるとツイートしてます)など、開幕から楽しいステージでした!

そしてトークコーナーでは、うっかり忘れていた早口言葉対決があり、観客もエモートで参加するなどにぎやか。YuNiちゃんからの呼び方が「子兎音」とフランクな感じだったのは新しい発見でしたね!

with 樋口楓「Maple Dancer」

続く2人目のゲストは樋口楓。単独ライブも成功させ、アーティストとしての活躍もめざましい彼女とのステージに選ばれたのは、初期のオリジナルソング「Maple Dancer」でした。

底抜けにパワフルなでろーんの歌声と、繊細なのに力強いYuNiの歌声のコラボ。パワーとパワーの激突の結果、生まれたのはパワフルなハーモニー。テンションが天井知らずに上がっていく!ステージ演出の力強さも相まって、思わずこちらも「Dance!」と叫んでしまう熱量がそこにありました。

トークコーナーでは準備期間のちょっとした裏話や、銀髪つながりで「どっちがお姉さんに見える?」かを競う微笑ましい場面が多かったです。お互いに「顔が良いよね」とじゃれあう光景は見ててホッコリしますねぇ。余談ですが、今回のでろーんはロングヘア仕様。どういう物理演算か、優雅になびくその髪にYuNiちゃんも興味津々でした。

with かしこまり「ルーティン」

3人目は同じupd8の仲間でもあるかしこまり。選曲はちゃんまり初めてのオリジナルソング「ルーティン」。YuNi自身も「好き」と語る一曲です。

「本当に美しい歌声ってあるんだ」って震えました。伸びやかで感情豊かな二人の歌声が重なった時、冗談抜きで歌声が七色に見えたんですよ。ただでさえ好きな曲なのに、こんなにもすばらしいデュエットになって……ヘッドセットの内側にある両目から涙が流れていました。「ハートに こんこん」という歌詞で上掲の画像のようなフリを見せていたのですが、これもエモい……。エモートを打つこともできずに聞き入ってしまった自分がそこにいました。

トークパートは打って変わってガヤガヤとにぎやかに。告知ツイートで言及のあった「ハイボール(梅)」について、「実際に歌ってる最中に観客席へ放水するかって話もあったけど、曲の感じと合わないと判断されてボツになりました」という裏話が飛び出してきて、思わず笑っちゃいましたわね。

with ときのそら「Dream☆Stroty」

そして最後のゲストはときのそら。メジャーデビューアルバム「Dreaming!」から「Dream☆Story」を引っさげての参戦になりました。

今回の「ベスト・オブ・かわいい」受賞です。「Dreaming!」の中でもとにかく明るくてかわいい一曲なのですが、そらちゃんもYuNiちゃんもノリノリでステージを走り回ってました。「そらとYuNiだよっ♪」っていうかけ声が果てしなくかわいすぎて「すき……」ってつぶやいていました。二人とも「めっちゃたのしかった!」という感想を口にしていたのが印象的です。

トークパートもときのそらワールドに引っ張られてか、とても和やかな雰囲気。イベント共演はいくつかあったものの、ステージでの共演は初めてということもあってか、話もかなり弾んでいました。そらちゃんの声がよく通るせいで、「マイクが不調だったときに(そらちゃんが)物理的にマイクから離れて対応してた」といった天然な出来事もあったという話題は笑いを誘っていました。

カウントダウンは5人そろって!

前半戦が終わったところで、ゲスト4人が全員集合。そこそこ広めのステージだったと思うのですが、5人も集まるとけっこう密度がありました。

そしてしばらくの談笑の後、いよいよ24時までわずかに。ステージ正面にてカウントダウンが始まり……

無事、令和を迎えることができました。年越しとはまた違った興奮がありましたね!

ちなみにこの時の様子は、日本テレビの「news zero」にて生中継されました。同番組の河西アナもあの場にいたとのことです。有働アナや櫻井翔さんにも見られていた我々。数奇な出来事もあったもんです。

そして、令和を迎えてしばらくして突如消失するYuNi。一瞬トラブルかと思いましたが、心配ご無用。ゲストたちのかけ声によって、さよなら平成ライブ後半戦――令和最初のYuNiのステージへ突入していきました。

後半戦:YuNiソロステージ

ライブハウスのような黒が多めの会場から一転、YuNiのイメージを彷彿とさせるような真っ白な世界へとライブ会場が変化しました。こうした「場」全体をも変えるダイナミックな演出はVRならでは。これぞバーチャルライブです。

そんな後半戦は、YuNiのソロステージ。最新アルバム「clear」の収録曲を中心に、彼女自身の歌が揃い踏みのステージになりました!

「Destination」

まず1曲目は、映画「LAIDBACKERS-レイドバッカーズ-」の挿入歌にも採用された「Destination」。正統派のアニメOPという感じがあってワクワクするんですよね!YuNiちゃんのノリノリな振り付けはかっこかわいかったし、ステージ全体に風が吹いているようなエフェクトが舞っていて視覚的にもかっこよし。後半戦の最初として、さわやかな一陣の風が吹いていました。

花は幻

そして間髪入れずYuNiの全身を光が包み込み、衣装チェンジ。先日のリアルライブ「UNiON WAVE」にて初お披露目となった純白の新衣装へと装いを新たにし、2曲目「花は幻」へ突入しました。ステージも純白の草木が茂る幻想的な背景に変わり、思わず息を呑みました。

儚くも耳に刻み込まれるような美しい旋律と歌声。それに合わせて舞い上がる花びら。刹那性が全面に押し出された曲の世界観が、ステージ演出とともに表現されていました。シンプルな演出ほど響く。本当に美しいステージでした……。

「ジレンマ」

続いて「clear」収録の新曲で、YuNi初のバラード「ジレンマ」がお披露目。

ステージ中央の円柱状の椅子に座りながら歌う姿は、これまでにない大人びた印象がありました。ステージもユニコーンがメリーゴーランドのように周囲を回っていて、彼女のモチーフが何であるかを改めて思い出させられました。

切なく歌い上げるバラードは新境地で、とてもかっこよい……そして美しい……YuNiはジャンルを選ばない万能さがあるなと気付かされましたね。

「Winter Berry」

さらに続いて、あの「Winter Berry」!背後にはもみの木と雪の結晶!あっという間に気分はクリスマスイブになりました。

さりげなく初披露なダンスがかわいい……。この曲は「みんなで踊ってほしい」という思いで作られたとのことで、来年のクリスマスにみんなで踊りたいですね。

「Write My Voice」

少しのトークを挟んだ後、「透明声彩」の続編と位置づけられる「Write My Voice」の歌唱が始まりました。

ここでステージがさらに一変。ゆにチルたちのYuNiへの様々なコメントが背後に飛び交う、ソーシャル時代を彷彿とさせるギミックが。このような演出は透明声彩のPVでも見られますよね。演出面でも継承を試みている感覚があって、なんというか……非常にエモい……!

インターネットに生きるVTuberという存在ならではありますが、「みんなに支えられている」と強く意識しているYuNiならではの演出ともいえます。象徴的なステージでした。

「ウタオウヨ、ウタオウヨ」

そしてソロステージも最後の一曲へ。最後の選曲は、「clear」最後の収録曲「ウタオウヨ、ウタオウヨ」でした。

ステージもクライマックスとばかりに、YuNiを乗せてUFOのように飛翔!未来に向けて歌い上げるような明るい歌に乗せて、YuNiを乗せたステージは元気よく飛び回っていました。あまりに動きすぎてスクショに収めるのも困難だったのですが、ここまでくればそんなものも無粋でしょう。「ウタオウヨ!ウタオウヨ!」とこちらも口ずさんでしまう、空に広がるようなアッパーなメロディは、トリを飾るにふさわしいものでした!

そして、あたり一面がすべて暗転し、さよなら平成ライブは幕を閉じたのでした。

……と思っていたら。

暗闇の中に灯る光。やがてその光が大きくなっていって――

アンコール:「透明声彩」

上記の演出を経て最後のステージが現れ、耳慣れたあのメロディが流れてきました。アンコールとして選ばれたのは、彼女の代表曲「透明声彩」。やはりYuNiライブならこの曲! とまで言える一曲。直前の演出も含めて本当にサプライズで嬉しい!

PVを彷彿とさせるようなステージ演出のもと、感情豊かにライブで歌い上げられた「透明声彩」は、何度もリピートしたメロディよりもずっと深くまで響き渡りました。「透明な声はきっと空っぽじゃない」――今なら間違いなくそう言えるでしょう。ゲストと重なる歌声も、彼女だけのステージで響く歌声も、バーチャルシンガー・YuNiの歌声なのだから。

活動を始めてから10ヶ月。ファンやスタッフへの感謝の言葉と、令和に向けた熱い意気込みとともに、「さよなら平成カウントダウンライブ」は本当に幕を閉じました。新しい時代へ駆け出していくような、2時間弱のすばらしいライブでした。

これまでのYuNi、これからのYuNi

にぎやかで、楽しく、そしてどこまでも美しいライブでした。なにより驚かされたのは、ソロステージだけでなく、十人十色なゲストとのデュエットをも見事にこなしていくYuNiの歌声の広さ。パワフルにも、繊細にも、ノリノリにも響く、そんな彼女の声に「透明」という「色」を与えた「透明声彩」という一曲が、今さらながらとても大きな記念碑のように映ります。透明とは無色ではなく、何色にも輝くことができる色。YuNiというアーティストが持つ可能性は、文字通り無限大なのかもしれません。

このバーチャルシンガーの晴れ舞台として、clusterは演出面でも、負荷制御の面でも八面六臂の活躍を見せていたと思います。相当な人数が同時に接続している中で、トラブルなく完遂した手腕は間違いなく素晴らしい。場数を踏み続け、失敗も乗り越えてきたプラットフォームだからこそ、このVRライブは成功したと言っても過言ではないでしょう。

出演者も、舞台も、「バーチャル」という概念を急成長させた平成を締めくくるのにふさわしい完成度であると同時に、令和という新しい時代へ向けてさらなる成長も望める、未来への広がりを予感させたVRライブでした。


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