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VTuber 2019.11.24

【バーチャルYouTuber音楽特集】キズナアイの名楽曲をあらためて振り返る

『Hello, Morning』を皮切りにアーティストとしての活動も始めたキズナアイ。中田ヤスタカ氏やYunomi氏などといった大物アーティストからの楽曲提供だけでなく、TeddyLoid氏やW&W氏から要望を受けてのコラボ、さらには劇場アニメ「LAIDBACKERS-レイドバッカーズ-」の主題歌をkz氏とコラボして担当するなど、その勢いは留まることを知らない。

この記事ではそんな彼女の曲をひとつずつピックアップし、リリースまでの背景や制作陣、曲の特徴などを紹介する。そして、キズナアイがどんな想いを込めて音楽を行ってきたのかわかる範囲でふれていく。

目次

1. Kizuna AI to AI
2. Hello, Morning(Prod.Nor)
3. future base (Prod.Yunomi)
4. melty world(Prod.TeddyLoid)
5. hello,alone (Prod.MATZ)
6. The Light
7. AIAIAI (feat. 中田ヤスタカ)
8. Precious Piece
9. Say チーズおかき
10. Sky High (prod. Yunomi)

1.Kizuna AI to AI

この曲はキズナアイ本人がプロデュースした楽曲ではない。ただ彼女の歩みを語る中で外すことはできない。作詞作曲であるsasakure.UK氏はA.I.Channelのエンディングテーマ公募企画に応募しており、その後本楽曲を公開。2018年6月30日に行われた「A.I. Party! 〜Birthday with U〜」で歌うほど、キズナアイはこの曲を気に入っている。

キズナアイが先輩と慕う初音ミクの曲をいくつも作ってきた有名ボカロPが、キズナアイの声をサンプリングして楽曲を制作したことにファンも感動した。歌詞はリアルとバーチャルに対する問いかけのような内容や「あい とぅ あい」の音を使った言葉遊びなどが盛り込まれ、聴きごたえのあるものに仕上がっている。

2.Hello, Morning(Prod.Nor)

キズナアイ初のオリジナル楽曲。2018年6月30日に行われた「A.I. Party! 〜Birthday with U〜」で先行公開され、7月15日にリリースされた。ライブでは「これから始まっていく日々と、出会っていくすべてのものに対して言いたいと思った『おはよう!私はキズナアイです!これからよろしくお願いします!』の気持ちを込めてこの歌詞を書きました。」と語った。みんなと繋がりたいという“アイ”のこもった歌となっている。

1st Live『hello,world』では1曲目に原曲を披露した後、クライマックスにPa’s Lam System氏がRemixした「Hello, Morning」が歌われた。RemixではBPMが少し速まりハンドクラップ音の追加やサンプリングボイスを更にいじった遊び心を感じる。両曲ともライブやDJイベントで流れると、キズナアイの「Hello」にやまびこするようにオーディンスが「Hello」と応えることが多い。(厳密にはバーチャルねこ氏によるRemixも存在するが、オフィシャル先行予約限定CD収録のみのため現在聴くことは難しい。中国語をインストールしたキズナアイが歌う「Hello, Morning」も「A.I. Party!2019 ~hello, how r u?」というライブで披露されたが、まだ配信はされていない。)

3.future base (Prod.Yunomi)

2018年10月26日から始まった9週連続楽曲リリース企画の第1弾を飾る楽曲。作曲者のYunomi氏はライブに向けてオリジナル楽曲を準備する時点で、キズナアイから真っ先に声がかかった人物だったそうだ。彼女本人がYunomi氏の代表曲「インドア系ならトラックメイカー」のファンだったのである。その経緯については、キズナアイとYunomi氏の対談で詳しく語られている。(第2弾「new world」の制作秘話も触れられている)

作詞はキズナアイ本人によるもの。先の「Hello,Morning」が内面的なものを歌ったのに対し、この曲は未来に向けて「一緒に行こう 歩き始めよう」という外向きへのメッセージになっている。Yunomi氏は「近代文明がなくなった後の神殿」をイメージしたともいっており、それを受けてかキズナアイのダンスも巫女のような振る舞いを見せている。ちなみに、Yunomi氏とのコラボ第3段「ロボットハート (feat. Kizuna AI)」についてはこちらのインタビュー記事がおすすめだ。

4.melty world(Prod.TeddyLoid)

9週連続楽曲リリース企画の第6弾であり、キズナアイにとって初のEDM楽曲である。(カテゴライズには所説あるが今までの楽曲は「kawaii futurebass」とされている)「SUMMER SONIC2019 – RAINBOW STAGE」に出演した際はこの曲から披露しはじめ、「Put your hands up now(意訳:手を挙げろ)」という言葉が多様されるなどオーディエンスの盛り上がりを特に意識した曲となっている。(この対談記事にも明確に意識したとある)

2019年10月31日のハロウィンには、Halloween EditionとしてVR視聴対応のMVが公開された。TeddyLoid氏は「A.I.Station」というキズナアイの生放送に参加し、そこで火の鳥コンピレーションアルバム「NEWGENE, inspired from Phoenix」に収録される「Fireburst」についての裏話や楽曲の公開(番組の最後)、キズナアイの楽曲のみを使ったDJプレイなどを披露している。キズナアイが火の鳥企画に参加された経緯は、TeddyLoid氏が女性ボーカルを探していた時にキズナアイをオファーしたそうだ。

5.hello,alone (Prod.MATZ)

こちらの作詞もキズナアイ本人が行ったものだ。タイトルからも察せるように一番最初のオリジナル曲「Hello, Morning」のアンサーソングとなっており、「歩きはじめた私」に対して「走り続ける」、「終わらないストーリー」に対して「歌い続けてゆく」のように歌詞が呼応しているようだ。

作曲のMATZ氏はインタビューにて「いつもよりキーが高いにも関わらず綺麗に歌い上げてくれて歌手としてのポテンシャルが高いと思った」と語っているように、他の楽曲よりも比較的高音の楽曲でもある。公式ではないが「グルーブコースター」などの音楽ゲームにも楽曲提供しているKO3氏のRemixがyoutubeにアップされている。

6.The Light

オランダ出身の世界的有名なDJデュオ「W&W」とのコラボ曲で2019年3月1日にリリースされた楽曲。こちらの対談動画でも語られているが、彼らはインスト曲がメインで、ボーカルを起用するのは珍しいとのこと。それだけキズナアイのボーカルに心ひかれるものがあったともいえるだろう。

キズナアイは海外ファンも多いため「W&W」とのコラボは大きな注目を集め、現在ではDance Dance Revolution、DanceRushWACCAなど多くの音楽ゲームにも収録された。(Dance Dance RevolutionとDanceRushでは上記の動画のMVとか違うバージョンのMVが視聴できる)

7.AIAIAI (feat. 中田ヤスタカ)

バーチャルYouTuberを題材としたアニメ『バーチャルさんはみている』の1-6話のオープニングテーマに起用された楽曲。2018年12月25日にティザームービーが公開され、同年12月29日に東京で行われた単独ライブ「hello, world」で初めてフルバージョンが公開される。アニメの放送終了後ほどなくて本MVが公開された。

さらに7月17日にはダンス練習用の動画も公開された。「ちゅめて」「キュめて」「ぴとりってたい」など不思議な言葉遣いが多く、キズナアイ本人もネタにしていた。ちなみに本人もどういう意味の言葉なのかは知らず、サマーソニックでのインタビューで作詞した中田ヤスタカ氏に質問するもはぐらかされている。ライブやDJイベントでの定番曲となっており、中盤の間奏では「せーの!」からオーディエンスがジャンプするのが恒例だ。

8.Precious Piece

長編アニメ映画『LAIDBACKERS-レイドバッカーズ-』の主題歌で、作詞作曲ともにkz氏が手掛けている。制作会社である「Flying Dog」の公式チャンネルではキズナアイが紹介しているティザームービーが観られる。(劇場での公開は終了したが、作品はU-NEXTなどの配信サービスから視聴できる)

映画を見ていなくても楽曲を楽しめるが、作品を意識した歌詞となっていることは押さえておきたい。またカップリング曲には清竜人氏が作詞作曲した「Cords Of Love」が収録されており、こちらはアップテンポなかわいらしい曲となっている。ちなみにバーチャルシンガーであるYuNiさんも関わっており、「Destination」というkz氏とのコラボ曲が劇中に少しだけ登場している。

9.Say チーズおかき

株式会社ブルボンとのコラボ企画第2弾で発表されたCMソングだ。歌のジャンルは初のラップということで注目を浴びた楽曲でもある。作詞はパリコレデビューを果たしたプラズマ氏、作曲は内田真礼さんやポカリスエットのCMソングなど幅広く提供している柿本論理氏(ハンドルネームは「mochilon」名義)。

今回のコラボのために新衣装も準備するなどかなり気合いが入っており、インタビューを見ると本当に真剣に取り組んだ様子が分かる。現在はもうDLできないが、期間限定で音源を公開しアンサーソングも募集しており、同じupd8のデラとハドウさんがアンサーを返していたのが印象的だった。サブスク配信も行い、カラオケでも歌えるようになるなど、ネタ曲のようでちゃんとした楽曲として扱われている。

10.Sky High (prod. Yunomi)

この楽曲がリリースされたのは2019年6月30日。キズナアイが3歳のお誕生日を迎えた日に発表されたものだ。同日行われた「A.I. Party!2019 ~hello, how r u?」で披露されている。発表以前に6月27日6月28日7月15日と、ティザームービーが3つも配信され、ファンの関心を引いた点も印象深かった。

楽曲リリース前に公開されたティザームービーは上記のMVとは完全に別物の映像になっているため、まだ見ていない人がいればチェックしてほしい。公式MVはキズナアイの腕や顔などに歌詞が浮かびあがる映像と激しいダンスが特徴的だ。歌詞に「何回だって言おう ハロー、君と描く未来」という「ハロー」「未来」といった初期の歌から使われている言葉が入っていることに、彼女の強いこだわりが感じられる。

まとめ

私たちが「親分」と親しく呼びかける間も、キズナアイは「75億人とつながりたい」という目標に向かって進み続けている。動画では、体力測定で体を張ったり、決して得意とはいえないタイプのゲームにチャレンジしたりといった姿を見せ、TVでは著名人と対面し、とっさの無茶振りに対応していることもある。

音楽に関しても、一般的なアイドルソングではなく「kawaii futurebass」や「EDM」、「ラップ」などさまざまなジャンルに挑戦し「みんなが一緒にノれる」よう努力している。ともすれば、斬新すぎる活動は、ときにファンを戸惑わせてしまうかもしれない。しかし、そのことも彼女は承知の上だろう。

活動のすべてが新しい誰かに対しての「Hello」になると信じて、キズナアイは活動している。彼女の音楽を聴き直すたび「もう迷いはしない」という決意が込められているように感じられる。

もちろん彼女の全容を把握するのは難しいかもしれない。ただ動画や曲を通して少しずつ彼女を応援する人たちが増え、世界中が「AIAIAI」で沸き立つようになれば、未来は大きく変わるかもしれない。その日を待ちながら、今後の活躍を見届けていきたい。

執筆:ひかげつきみ


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