梅雨入りで蒸し暑くなりつつあるこの時期に、まさかのスノーボードのVRゲーム「CARVE スノーボーディング」がOculus Quest(Quest 2)向けにリリースされました。
本作は1998年、NINTENDO64で発売された名作スノボーゲー「テン・エイティ スノーボーディング」の開発でメインプログラマーを務めた、ジャイルズ・ゴダード氏が参加。氏が代表を務める、VITEI BACKROOMの新ブランド「ChuhaiLabs」が制作を担当しています。
爽快感&スピード感MAXの”滑り感”
「CARVE スノーボーディング」を起動すると、滑り方を学ぶためのチュートリアルがスタート。
スノボーは通常の場合、上半身でバランスを取りつつ、下半身を使って駆りますが、このゲームでは、両方のハンドコントローラーを舵のように使って、左右にボードを振ります。
腕の高さによってスノーボードの角度が変わり、両腕を振り上げればジャンプ。内トリガーを押してボードを掴めば回転などのトリックもできます。
スノーボードでの滑り心地は快適そのもの。筆者は学生時代に一度スノボーを体験した程度ですが、少し練習すると、思った通りにボードを操れるようになりました。雪山を駆け抜ける気持ちよさは本物さながら。
“本物”の爽快さを形作る上で重要な役割を果たしているのが、スピード感。バーチャルなのに、風を感じるレベルです。特に上の画像のような狭いコースでは、体感的に実際の速さの2割増しぐらいで滑っています!
(コースには障害物が盛りだくさん。ぶつかるときは本気でビクッとします)
ハイスピードで滑り続けるには、コースや障害物の位置を覚え、最適なルートを辿ることが不可欠。ミニマップのような”甘い”システムはないので、全てを頭に入れていかなくてはなりません。トライ&エラーが生む達成感は、本作の楽しさのひとつ。トリックも織り交ぜていけば、気分はプロのスノーボーダーです。
問題点を強いて挙げれば、プレイが結構ヘビーなこと。常にサーフィンのような体勢でキープしつつ、ジャンプなどで腕を動かす必要があるので、普段運動していない人は、プレイ後に筋肉痛に悩まされるかもしれません。
(スピードを出すとゴーグルに雪が付着します。片手で拭うと取れます)
スノボに慣れていないと分かりにくいかも?
スノーボードの操作自体が直感的に習得できる一方、各種システム面には不親切な部分がかなり見受けられます。
冒頭のチュートリアルでは、一通りの操作やスノーボードの基礎を教えてくれるのですが、内容を改めて確認できず、手探りで色々試していくことに。あとから、オプションの「プレイ設定」内からいつでも確認可能と分かり、気づくまでモヤモヤとしていました(お恥ずかしい話ですが、少し気づきにくいです)。
また練習用の専用コースは存在するものの、文字通り「練習用に滑れる場所」というだけ。高速滑走やトリックといった、特定のプログラムに集中して訓練できる作りにはなっていません(Tips表示なども無し)。
トリックに関しては、何がやれて、何ができないのか、分かりにくいのが難点。各テクニックの説明がないので、「「FS720」をやれ!」と当然のように表示されても、筆者のようなスノボーの専門知識皆無の人間では、動き方が分からず困惑。結局、スマホで調べてからプレイ続行することが何度かありました。
“技リスト”のような、動き方や行えるトリックをまとめた一覧表などがあれば良かったかもしれません。
歯ごたえあるメダル収集
本作のゲームモードは、完走までのタイムを計るタイムアタックモードと、トリックを決めてスコアを稼ぐフリースタイルモードがあります。コースは全部で6種類ですが、最初から遊べるのは1種類のみ。
コースをアンロックするには、各モードで一定の条件を満たしてメダルを集めなければなりません。このメダル集めには少し“ひねった”もので、コース解放するには、ロックされている場所の「ひとつ前」のコースで、メダルを既定の数だけ収集する必要があります。
メダル集めの難易度は、ある程度幅はあるものの基本的に高め。特にタイムアタックは鬼門で、普通に滑っているだけでは一番下のメダルをゲットするのも大変。適切なボード(種類によって性能が異なる)を選び、最短ルートを駆け抜けなくてはなりません。
個人的にはやや難しすぎると感じましたが、挑戦を求める人にとっては、歯ごたえあるチャレンジとなるでしょう。
ちなみに、コース上には謎の発行体のようなものも点在。これらを拾うことで、新しいボードやグローブ、新サウンドトラックなどをアンロックできます。
総評:初心者向けではないが、爽快感は一級品
この記事を書いている最中も、「CARVE スノーボーディング」の評価は、なかなか定めきれませんでした。一級の爽快感を実現している一方、システム面にアラが少なからずあるからです。
例えばロッジ内の移動速度は妙に低速(ワープ移動は存在しますが)だったり、コース上でスタックした場合リスポーンボタンなどがなかったりと、ここまでに説明した部分以外にも、いろいろ言いたい点がありました。
本作の最終的な評価は、アップデートをどれだけ精力的に行えるかで決まると思われます。挙げたような欠点を解消し、コースやゲームモードなどを定期的に追加していけば、2021年6月現在珍しい、スノーボードを題材にしたVRゲームとして大きな地位を占めることができるかもしれません。
技術的な挑戦にはなりますが、マルチプレイヤーなどが実装されれば、より理想的と言えるでしょう。
現在のところは、スノボー初心者には厳しい作品ですが、一級の爽快感があるのも事実。今後の「CARVE スノーボーディング」の歩みに期待したいとまとめたところで、筆を置きたいと思います。
「CARVE スノーボーディング」はOculus Storeで配信中。価格は税込1,990円となっています。
ソフトウェア概要
タイトル |
CARVE スノーボーディング |
開発元・パブリッシャー |
Chuhai Labs |
対応VRヘッドセット |
Oculus Quest |
価格(税込) |
1,990円(Oculus Store) |
執筆:井文