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VTuber 2019.05.18

“NINJA”と“AR”を次世代のエンタメに。エイベックス新プロジェクト体験レポート

VTuber響木アオのメジャーデビューを支援し、バーチャルアーティストユニット「まりなす(仮)」を送り出すなどVTuber業界にも大きく踏み込んでいるエイベックス株式会社は、2018年に「次世代エンタテインメント」として「NINJA PROJECT」と「AR LIVE SOLUTION」をローンチしました。

前者は海外人気の高い「NINJA(忍者)」を身体パフォーマンスと最新技術によって表現するパフォーマンス集団で、後者はハイレベルなバーチャル・アーティストのリアルタイムパフォーマンスを実現するXRプラットフォーム。いずれも、これまでのエイベックスが手がけてきた領域から大きく一歩を踏み出した新しい形のエンタテインメントです。

5月某日、上記2つの新プロジェクトのテクニカルリハーサルが、関東某所にて開催されました。今回はその様子をレポートします。

NINJA PROJECT

まずは「NINJA PROJECT」からお披露目。暗がりの中で案内されたのは、四方と足元の一部がアクリル板で構成された部屋。足元中央のアクリル板を挟むようにスタンディングで待機するよう案内があり、「ショーを見る」というイメージからこの時点で一気に離れていました。

今回のリハーサルは複数のパートで構成されていました。まず前半は、この案内された部屋の外部を、音楽とレーザーとともにNINJAたちが飛び回るというもの。真下にNINJA。天井にもNINJA。左右にもNINJA。四方八方をNINJAが舞い、そして飛んでいました。

トリッキングとパルクールを駆使して空間を自由に動き回る様は、まぎれもなく現代のNINJA。ドラマ「HiGH&LOW;」に登場するチーム「RUDE BOYS」をご存知の方がいれば、動きのイメージ的にはまさにそれです。文字通り四方八方を舞うため、観客の視線が一意に定まらないのは、体験してみてユニークと感じたところでした。

 

後半は場所を移動し、複数枚の液晶が配置された舞の鑑賞へ。手妻師の演目やマリオネットダンス、女性ユニットによるダンスなど、さまざまなパフォーマンスが雪崩のように展開していきました。

この舞台の特徴ともいえる液晶は、巨大なものが1枚、縦長のものが左右に3枚ずつ展開されていて、全体的な配置は扇型。正面の液晶はPanasonicの透過型フィルムスクリーンが配置されていたとのことです。

 

この液晶をフル活用した、生身のNINJAと映像の融合による「NINJAが現れて消える」というような演出は、おどろくほど鮮明に実現されていました。技術で作り出す影分身の術はとても見栄えがよいですね。

さらに、途中でスタッフに案内されて、観客側が舞台上に上がるという展開に。いったい何事かと思っていたら、それまで観客席だったところに大勢のNINJAが現れました! そして文字通り「眼前」の距離で力強く舞う姿は、圧巻の一言でした。

視点はおろか、観客席の位置すら一点に定めず、さらに映像演出によって視覚すら惑わせる。NINJAを軸にした、新しいショー・エンタテインメントを提示したリハーサルとなりました。

AR LIVE

続いて、「NINJA PROJECT」でも使用された舞台上の大型液晶を用いた、AR LIVEのリハーサルへ。今回は各アーティストのパフォーマンスをメドレー形式でお披露目するという形でした。以下、登場アーティスト順に紹介していきます。


 
まずは初音ミク。映像投影によるリアル空間でのパフォーマンスは数々のライブで披露していますが、複数枚の液晶を用いた背景演出が添えられると、視覚的にはさらに鮮やかに映りました。解像度もかなり高く、そこにミクがいるような感覚にたしかに陥ります。


 
次は響木アオ。こちらは実在の街の映像を交えた背景演出がかなり目を引きました。動きこそ控えめでしたが、ライブ慣れしたアオちゃんのパフォーマンスをより強力に支えていました。
 

続いて、今春にエイベックスからメジャーデビューしたマイクロソフトのAI「りんな」。「AIの脳の中に入る」というコンセプトで作られた、全ての液晶をつなげた映像によって、ステージそのものがPVとでもいうべき光景に。液晶の配置によって立体的に広がっているような印象も受け、息を呑みました。


 
さらに続いて、エイベックスプロデュースのバーチャルユニット「まりなす(仮)」。4人全員による、見応えバッチリなダンスパフォーマンスを披露しました。映像的にも、4人同時にここまで綺麗に動くとかなり圧巻です。ダンス中にそれぞれの位置がコロコロ変わっても破綻が起きないのもポイントだったと思います。


 
そして最後に、エイベックス・エンタテインメント株式会社と株式会社ユークスによるARイケメンダンスグループ「ARP」より、「REBEL CROSS」の2人が出演。女性続きの中、唯一の男性によるリハーサルとなり、こちらも動きの解像度はピカイチでした。

全体を通して見て印象的だったのは、液晶の立体的な配置と照明演出による、「物理的な拡張現実」とでもいうべき空間の構築でした。デバイス越しに見るのが従来の「AR(拡張現実)」だとするなら、今回のAR LIVEはステージそれ自体を仮想現実と地続きにしてしまい、デバイスを介さず観客へ見せるという手法。実際に目の当たりにすると、これは想像以上に効果的だと感じました。


 
また、ARPのみ、観客とのリアルタイムなインタラクションも見せてくれました。「今日みなさんどちらからいらっしゃいました?」という問いに対し、ある方が「ニューヨークです!」と答えると、「ニューヨークゥ!?そこって青森より寒い!?」という返答があり、会場が笑いに包まれる一幕もありました。観客の動きや声に対して反応し、相互コミュニケーションを実現する光景は、バーチャルなタレントたちの強みとして強く意識されているように感じました。

実現した上で「魅せる」ということ

「技術と人間の融合パフォーマンス」も、「デジタルなライブパフォーマンス」も、実現すること以上に「魅せる」ことがかなり難しい領域です。今回お披露目された「NINJA PROJECT」と「AR LIVE」は、総合的な演出が相当に練られていて、視覚から得られる体験がとても印象に残るものでした。

いずれも2019年中に本格的な開催が予定されているとのことで、本プロジェクトに対するエイベックスの力の入れ具合がうかがえます。エイベックスの担当者による、「『ここにはないもの』を見せるコンテンツを作りたい」という熱の入った言葉がとても印象的でした。

NINJAもバーチャルも、いま一番というくらい勢いのある日本発のカルチャー。これを技術とパフォーマンスによって、最高のエンタテイメントへと昇華させようとする取り組みを、眼前にて感じることができたコンベンションでした。本格的な開催が待ち遠しいです。


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