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HoloLens 2019.05.29

マイクロソフトのMRデバイス「HoloLens」 特徴や活用事例、導入方法まとめ

マイクロソフトが提供するMR(Mixed Reality・複合現実)を体験できるMRデバイス「HoloLens(ホロレンズ)」。国内外の産業において業効率化やそれに伴う経費削減といった、業務フローに変革をもたらすデバイスとして導入が進められています。

本記事では、HoloLensの特徴から実際の活用事例、レンタルや購入に関する情報などをまとめて紹介します。

目次

HoloLensとは
そもそも「MR(Mixed Reality・複合現実)」とは何か
HoloLensの活用事例10選:建設や医療、製造、自動車、教育、アミューズメント
次世代機「HoloLens 2」で性能アップ、新機能も多数
HoloLensのレンタルや購入

HoloLensとは

「HoloLens」とは、マイクロソフトが2016年3月30日に発売(※)した、目の前の現実世界とCGを融合して体験できるMRデバイスです。頭に装着することで、透過型のレンズを通して物理的な現実にバーチャルな3Dオブジェクトをあたかもそこに存在するかのように見せることができます。

(※……日本国内では2017年初頭出荷開始)

HoloLensはPCやスマートフォンなどを必要とせず、単体で動作します。体の位置をトラッキングする外部センサーやケーブル、コントローラーなどが不要となっており、自分の手のジェスチャーで操作することができます。

そもそも「MR(Mixed Reality・複合現実)」とは何か

MRは学術的には「複合現実」または「複合現実感」と訳されることが多い単語です。マイクロソフトは、MRをVR(Virtual Reality)やAR(Augmented Reality・拡張現実)といったものを広く包含する概念・言葉としています。

HoloLensの生みの親であるアレックス・キップマン氏は、2017年の講演にて「ARとVRとMRが個別に違うものとしてあるのではなく、それらはMRをいろいろな角度から見ているにすぎない」と語っています。

近年では、HoloLensのようにCGやデジタル情報を現実の環境に反映する「ARデバイス」も登場しています。

HoloLensの活用事例10選

HoloLensは、建設や医療、製造、自動車、教育、アミューズメントといった幅広い分野で活用されているほか、ビジネスツールとしての利用も進んでいます。実際の現場でどのように利用されているか、どのような開発が行われているかを国内外の事例とともに紹介します。

建設:建設完成イメージを実物大で表示

大東建託株式会社は、全国の建築事業部にHoloLensを配備し、3D建物を用いたプレゼンテーションを行う営業支援ツールとしての運用を展開しています。実際に建築予定の建物を見せることで、より分かりやすいプレゼンテーションを行い、土地のオーナーと提案プランのイメージの共有化を図るとしています。

建設:インフラの点検・メンテナンス

三井住友建設株式会社は、HoloLensを使用する導水路トンネル調査・点検システムを開発しました。

導水路トンネルの調査および点検は、目視による変化や不具合のチェック、その規模・寸法の測定、および記録といった作業を過去の調査結果や補修記録と比較する必要があります。照明設備がない暗渠や狭いトンネル内では、ひび割れや漏水箇所の特定、損傷個所とコンクリート表面の模様判別などに時間がかかり、こうした作業の効率化・合理化が課題となっていました。

本システムではHoloLensを活用することで、現場の環境に関係なく、現実空間に補修履歴や記録を3D画像表示させて、リアルタイムに現状と比較が可能となります。本システムにより、「補修履歴情報等の見える化で効率化・合理化を図り、作業時間の半減を実現」しているとのことです。

医療:手術前の患部の確認や手術トレーニングに

医療向けVR/MRサービスを提供するHoloEyes株式会社は、患者のCTスキャンデータやMRIデータを3次元上に再構築するアプリケーション「HoloEyesXRサービス」を展開しています。HoloLensやVRヘッドセットを使用し、VR/MR空間で医療データを確認することができます。

「HoloEyesXRサービス」では、手術前の患部の確認や手術のトレーニング、医療分野におけるコミュニケーションのツールとして医療現場や各種教育現場をサポートすることが可能です。

医療:医療を遠隔から支援するサポートツール

また医療分野では、フランスの医療会社ExelusでもHoloLensを利用したアプリを開発しています。このアプリでは、HoloLensを用いて患者と治療を監督する医者、およびその場にいるユーザーをオンラインで繋ぎ、遠隔医療をサポートすることが可能です。アプリにより、従来よりも症例の特定が25%も効率的になるとされています。

製造:未経験でも作業時間を70%削減するトレーニングツール

有限会社宮村鉄工は、MRデバイスを利用した建築鉄骨業の製造を支援するソリューションを開発。本ソリューションの実証実験では、熟練工でも50分かかる複雑な製造作業をおよそ15分で可能にするなど、作業時間を大幅に短縮できることが確認されています。

これにより、同社は「若手技術者の獲得や育成、ミス削減による稼動効率の改善、業界イメージの向上による従業員のモチベーションアップなどが期待できる」としています。

製造:大型機械の導入シミュレーションに活用

真生印刷株式会社とデジタル総合印刷株式会社は、大型機械・設備の導入を効率化するアプリおよびサービス「MR設備導入シミュレーション」を開発しています。

本サービスでは、印刷会社の工場内などに、大型印刷機の3Dイメージを実物大で自由に設置が可能です。すでに導入されている機械・設備や導入予定の機械・設備との干渉、実際の作業にあたって課題になりそうな箇所を、導入前にさまざまな位置から確認することができます。

自動車:ベンツのトレーニングセンターにも導入

ドイツの高級車ブランドであるメルセデス・ベンツは、自社のトレーニング・センターに100台以上のHoloLensを導入しています。

ベンツのグローバル・トレーニング・センターでは、サービスマンに最新の修理技術を教え、セールスマンに新車種の特徴を理解させる従業員教育を行っています。HoloLensを導入することで、このトレーニングをより速く、効果的に行えるだけでなく、必要なコストも削減可能としています。

トレーニングの参加者は、HoloLensを装着して車やその内部の3Dモデルを確認。トランスミッションの複雑な構造や、ブレーキアッセンブリーなども、詳細に見ることができます。

教育:視覚化して理解しやすくする理科教材アプリ

理科教材アプリ開発会社のフィール・フィジックスは、中学理科で習う「磁界」を視覚的に理解できるアプリ「HoloMagnet3」を開発しています。アプリでは、ユーザーの目の前に表示される棒磁石を手で動かすことで、周囲の方位磁石の動きが変化。一連の動作を視覚化することで、磁界のイメージを理解しやすいものにしています。

ビジネスツール:アバターで参加するミーティングツール

株式会社南国ソフトが開発中のサービス「WHITEROOM For HoloLens」は、遠隔地にいる相手と現実に同じ空間にいるかのようにミーティングを行うことができるサービスです。アバターを表示して対面で話すだけでなく、3Dモデルや動画・画像、地形データなどの素材を共有することも可能です。

本サービスにはスクリーンショットや音声録音の機能も搭載されており、ミーティング中に気になった内容をすぐに保存することもできます。保存データは、リアルタイムに専用ウェブサイトに反映されます。

アミューズメント:「シン・ゴジラ」の世界を体験できるアトラクション


© TOHO CO., LTD.

東宝株式会社と日本マイクロソフト株式会社は、映画「シン・ゴジラ」の世界を体験できるアトラクション「ゴジラ・ナイト」を2018年5月に開催しました(現在は営業終了)。

「ゴジラ・ナイト」は、会場である東京・日比谷に118.5mという巨体の「ゴジラ」が出現。参加者はゴジラを迎え撃つために「日比谷ゴジラ迎撃作戦」の特殊任務部隊に参加し、まるで作品の中にいるかのような臨場感を体験できるというものです。

次世代機「HoloLens 2」で性能アップ、新機能も多数

マイクロソフトは2019年2月、スペイン・バルセロナで開催された「Mobile World Congress 2019(MWC2019)」にてHoloLensの次世代機となる「HoloLens 2」を発表しています。

HoloLens 2は、前機種と比較して「2倍以上の視野角・解像度」「ハンドトラッキングが大幅改善」「視線追跡機能が追加」「装着の快適性を向上」など様々な点が改良されています。

空間情報を端末同士で共有することが可能に

HoloLens 2では、マイクロソフトのクラウドサービスAzureとの連携により、空間情報をHoloLens 2を装着しているユーザー同士で共有する「Spatial Anchors」というツールも発表されています。

ゲーム制作エンジンUnreal Engine 4(UE4)を提供するエピックゲームズは、「Spatial Anchors」を使用したツールを利用して、アポロ11号の月面着陸ミッションを再現するデモを公開しています。

国内からHoloLens 2を購入するのは不可?(2019年5月時点)

HoloLens 2のデバイス単体価格は、ビジネス向けで3,500ドル(約38万円)。「HoloLens 2 Development Edition(開発者版)」は、1ユーザー当たり月額99ドルから利用できます。2019年5月時点では、日本国内向けの価格は公開されていません。

また、HoloLens 2の購入予約は2月25日より開始されていましたが、2019年5月時点では、日本語公式サイトからプレオーダー案内ページへのリンクは削除されています。

HoloLensのレンタルや購入

月額6万円でレンタル可能

横河レンタ・リース株式会社は、日本マイクロソフトとMicrosoft HoloLens認定レンタルパートナー契約を締結。2018年10月より、法人顧客を対象としたHoloLensのレンタルを行っています。1台あたりのレンタル価格は、1週間で24,000円、1ヶ月で60,000円(運送費・消費税別)。詳細は横河レンタ・リースのウェブサイトから問い合わせとなります。

公式ストアでは現在「購入」は不可

HoloLensの価格は、開発者向け版が333,800円(税込)、商用利用版が555,800円(税込)です。2019年5月現在、マイクロソフト公式ストアでは、HoloLensの購入ができない状態となっています。これは、現行のHoloLensとHoloLens 2が入れ替わる可能性があるためと推測されます。


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