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VRヘッドセット 2022.08.08

【MoguLiveコラム】浅田カズラと12種のVRヘッドセット

7月31日に生まれた僕は、かつてハリー・ポッターになりたかった。しかし、いくら待ってもホグワーツからの入学案内は届かなかった。かわりに手に入ったのが、VRヘッドセットだった。いまや僕にとって、VRはニワトコの杖よりも大切なものになっている。


(画像:midjourney

2018年にVRにハマってから今に至るまで、VRヘッドセットは取材でもさわりつつ、個人でもいくつか購入してきた。その遍歴を軽く話したところ、MoguLive編集部から「記事にしたら?」と言われたので、そのようにしてみる。

「あまりにも買いすぎ」「想像の3倍狂っている」という声も編集部から寄せられた気がするが、おそらく気のせいということにして、今回は僕がどのようなVR機器を、いつ、どのような理由で買い、どう使ったのかを順に記していこうと思う。

1. PlayStation VR

最初に、僕に「VR」という概念そのものを教えた「PlayStation VR」について記しておくべきだろう。VRに対し「なにものかよくわからないが、頭にかぶるとすげーことができる」くらいの解像度しか持っていなかった自分でも、「PS4につなぐだけで体験できる」という特徴には注目した。「そんな気軽になったの?」という驚きゆえである。

手に入れようにもしばらく在庫切れが続いていたある日、ヨドバシカメラで買い物をしていたら、偶然にも店頭販売が始まる瞬間に出くわしたので、ほぼ反射的に買った。体験してみると「たしかにすごい」と思わされた。映像がモニターではなく全域に表示され、しかも奥行きのような概念もある。特に「The Elder Scrolls V: Skyrim VR」には本当に驚いた。「スカイリムに自分がいる」という体験はとても楽しく、夢中になってコントローラーを振り回していたら家族に心配された。

とはいえ、「PlayStation Camera」を使ったアウトサイドイントラッキングは正直微妙だった。少し気になる場所を見ようとすると「プレイエリアの外です」と表示されてしまい、それで興ざめとなるときがあった。結局、「PlayStation VR」ではVRにあまりハマらなかった。

2. HTC VIVE CE(初代VIVE)


購入理由:VRをやりたくなったから

初代VIVEこと「HTC VIVE CE」に出会ったのは、2018年のゴールデンウィーク直前だった。世間ではにわかに「VR元年」という言葉がささやかれはじめ、同時にVTuberも流行り出していた中、「『カスタムオーダーメイド3D2』というアダルトゲームのVRモードを体験したい」という理由だけで、秋葉原のどこかの店頭にあった「HTC VIVE CE」を衝動買いした。

買ってから自宅のPCでは動かないことに気づき、友人に教えを請いて自作PCを組み上げ、それはもうえらい出費になったことをおぼえている。だが、体験はあまりにも鮮烈だった。

決して軽いと言えないヘッドマウントディスプレイをかぶった瞬間、「現実」から広大な雪山やVALVE本社、そして火星にまで一瞬で飛べる。「PlayStation VR」のような「プレイエリアの外」という概念は存在しない。周囲に見える世界全てを、現実のように見て、触れることができる。距離も、時間も、空想をも超えてアクセスできる「バーチャルの世界」に、僕はあっという間に魅了された。

僕にとってのVRの初期衝動を生み出した「HTC VIVE CE」は、頑丈さと重量バランスが両立した良質なVRヘッドセットだった。別売の「オーディオストラップ」も取り付けることで、没入度はさらに高まった。とはいえ、解像度はやはり粗かった。それでも当時はさほど気にならなかったので、VR初体験の衝撃はスクリーンドアで遮断されないものなのかと、今になって考える。

ちなみに最初にやり込んだのは「Beat Saber」と「SteamVR Home」である。「SteamVR Home」、実はめちゃくちゃ楽しいんですよ。

3. VIVE Pro


購入理由:高画質にしたくなったから

VIVE Pro」という高解像度のVRヘッドセットがあるらしい、と知ったのは2018年の(たしか)後半だった。どうやら法人向けデバイスらしいが、個人が法人向け機種を持ってはいけないという法律もないので、買うことにした。ただただ「高解像度」の一点に誘引された。

順当に進化していた。解像度は一気に引き上がり、ヘッドホンもデフォルトで搭載されたことで使い勝手も向上した。その上で初代VIVEのバランス感覚も健在であり、「なんとすばらしいんだ!」と感動したことを今でもおぼえている。狂ったように「Beat Saber」や「Hot Dogs, Horseshoes & Hand Grenades」で遊び、「Hop! Step! Sing!」のすごさを前に平伏した、この時期のVRライフを大いに支えてくれた。

このあと1年ほどは「VIVE Pro」を使い続けることになるが、現在でも愛用者がいるあたり、スペックと使い勝手がよくまとまった名機なのかもしれない。ただし、マイク性能は微妙なので、ソーシャルVR目的で買う場合には注意が必要だろう(僕は当時「VRChat」などを一切遊んでいなかったので問題なかった)。

EX1. VIVEトラッカー


購入理由:あねえるたんを見た

とあるVTuber技術セミナーに参加した時、インフィニットループのあねえるたんがフルトラッキングのデモンストレーションを披露しているのを見た。トラッキング点数は10点。当時にわかに需要が囁かれはじめたVIVEトラッカー7つを運用していたのだ。

圧巻だった。キズナアイのような動きを、市販のデバイスだけで実現できる? 環境的には自分も買い足せばできる? ならば試すしかないじゃん。セミナーの翌日から、VIVEトラッカーを探しに広大なインターネットの海へ漕ぎ出した。世は大VTuber時代。最大7つで構成される「ひとつなぎの大秘宝」を求めて、技術者、VTuber事務所、個人が買い漁っていた時期だったはずだ。

幸いにも自分は、2018年中に「VIVEトラッカー 2018」を7つ仕入れ、自宅で「バーチャルキャスト」にて10点トラッキングを体験することに成功した。それをきっかけにVTuberになる……ことは一切なかったのだが、当時録画した映像は後に「VTuberの技術紹介」というライトニングトークをするときに重宝した。

なお、このタイミングで「ほしいものを買うには収入が追いつかん」と判断し、転職活動を行った。

4. Oculus Quest


購入理由:初のスタンドアロンだから

「PCに接続不要でVRができる」。これは当時の自分には「魚が二足歩行で地上を歩く」とまったく同じように聞こえた。時代が一気に進む。そう確信したので、迷わず購入した。

平日の朝、これから出社するというときに届き、いてもたってもいられず起動した。当時は起動するや否や、すぐに「はじめてのQuest」が起動した。

一面に広がるVR空間。そこをケーブルに縛られず動くことができる。2基のOculus Touchコントローラーは「両手」に代わり、VR空間であらゆるものに「触れる」ことができる……はっきり言って、衝撃だった。「これ一つでVRができる」という体験は、「VIVE Pro」に慣れ親しんだ身にとって革命に等しかった。

一方、最初の体験そのものは鮮烈だったものの、初期段階はコンテンツが少なく、解像度とトラッキングもやや物足りないところがあり、自分のメイン機は「VIVE Pro」のままだった。しかしその後、「Oculus Link」の登場によって「出先でもVRを見せやすい一台」へとさらに進化し、これはこれで助けられた。

なお、初体験後の会社は遅刻した。

5. VIVE Cosmos


購入理由:クールだったから

「VIVE Pro」に満足していたものの、そろそろ新しい風がほしいと思っていた中、VIVEから新たな風がもたらされた。「VIVE Cosmos」。VIVE一族で初のインサイドアウト方式であり、かつ「VIVE Pro」以上の解像度。「これは……!」と思い、予約が始まるや否や即座に注文した。

すると、なにかが呼び水となったのか、MoguLiveにて発売前レビュー記事を執筆することになった。これがMogura VR news/MoguLiveにてVR機器レビューを書き始めるきっかけとなったので、個人的には思い出深い一台でもある。

「VIVE Cosmos」そのものの評価は、解像度や「VIVEレンズ」などのコンセプトはよかったものの、コントローラーの重さや、アウトサイドインと比較した際のトラッキングの甘さなど、使い込むとそれなりに扱いにくい点も見られた。モジュール換装によるデバイス特性の変化といった方向性も、あまり普及しなかった印象だ。

結局、「VIVE Cosmos」はVRに興味があるという知人に譲ってしまった。「Oculus Quest」以上に使う機会がなくなったのが理由のひとつだが、もうひとつの理由は「VALVE INDEX」の上陸である。

6. VALVE INDEX(初代)


購入理由:マジでイケてるから

「VIVE Cosmos」発売前取材の帰り道、Moguraの編集長・久保田氏がにわかに「浅田さんってINDEXさわったことあります?」「ウチで体験します?」とおもむろにお誘いいただいた。秒でYESと即答した記憶がある。そしてMogura事務所に初めて趣き、「VALVE INDEX」を初体験した。

率直な感想は「最高」だった。解像度は(当時としては)非常に高く、オフイヤースピーカーは最高の没入感を生み出す。なによりINDEXコントローラーが新次元だった。五指の動きをトレース可能で、握力まで検知できる、あまりにも未来的なデバイスだった。そして、両手に装着するように持つことができるおかげで、「手を開く」ことができるのがなによりの衝撃だった。VR体験中に常にコントローラーを握り続ける必要がないのだ!

こうして、一瞬で「VALVE INDEX」の虜になってしまった僕は、2019年11月に国内プレオーダーが始まった瞬間、マッハで注文ボタンを押した。以後、最も愛用するVRデバイスとして長らく使い続けることになる。コントローラーにいたっては、当時買ったもののいまでも使い続けている。

7. HP Reverb


購入理由:レビューで体験したらほしくなったから

2019年も終わりに差し掛かろうとする中、編集部から聞き慣れないデバイスのレビューを依頼された。Windows MRデバイス「HP Reverb」。聞けば解像度は「片目2K」で、お値段は5万円ちょい。そんなうまい話があるわけないだろうと思いながら体験したが、あら不思議。下手したら「VALVE INDEX」を超える解像度が眼前に広がっていた!

この価格でこの解像度が実現するのであれば、やや精度の甘いインサイドアウトトラッキングであってもオススメできそうな一台だと思い、レビュー後に自費で購入した。

自宅で動かしていても解像度の高さは魅力で、かつWindows MRの特性上、Windowsシステムと直結してるため、動画などのファイル鑑賞が一番やりやすいと感じた。ただし、「要求スペックが非常に高い」という特性だけは無視できないと、私物を運用していて実感した。マジでGTX1080くらいでないと動かない。

EX2. スマホVRゴーグルたち


購入理由:記事のため

実は我が家には、スマホVR向けのゴーグルもいくつか存在する。これは記事のためにいくつか購入しただけで、常用はしていない。

実際にふれてみて気づいたのは、「意外とちゃんと作っているものが多い」ことだった。ヘッドホン一体型だったり、折りたたみできたりと、メーカーごとに凝った機構があったのには感心したところだ。とはいえ、そこそこのお値段を出してこれらを買うよりかは、最も安価なハコスコを買うのがスマホVRのコスト感としてはちょうどよいだろう。

8. Oculus Quest 2


購入理由:レビューで体験したらほしくなったから

2020年のある日、編集部に呼ばれてMogura事務所へ赴いたところ、「Oculus Quest 2(現:Meta Quest 2)」が置いてあった。発売前のこいつをかぶって、ユーザー目線でレビューしてもらいたいという。「たいへんなことになった」と思いながら、色白になった新しいQuestをかぶってみた。

ただただ驚愕した。かつて「Oculus Quest」を体験し、その弱点も知っていたからこそわかる。とんでもなく進化していると。解像度は劇的に上昇していて、PCVRに匹敵しているし、トラッキングもだいぶ改善していた。IPD(瞳孔間距離)調節機能やストラップは簡素化したが、そんなことが気にならないくらい安価だった。4万円以内で購入できる? 2020年でVRはここまできたのか?

レビュー執筆後、もちろん我が家にも「Oculus Quest 2」が届いた。PCVRを持つため使い分ける形になったが、Quest 2でのみ遊べるタイトルも多かったので、使用頻度は初代Questよりも多くなった。いまでも時折「Puzzling Place」などで遊んでいる。

9. VIVE Pro Eye


購入理由:レビューで体験したらほしくなったから

2021年時点では、VTuberになりたい気持ちはもはやなくなっていたが、「VTuberのように3Dモデルを動かす技術」には依然として興味があった。特に表情を自由に反映させる技術は、フルトラッキングよりもハードルが高い印象があった。だからこそ、「VIVEフェイシャルトラッカー」の登場には本当に驚かされた。

取材で体験させてもらった時、フェイシャルトラッカーに加えて「VIVE Pro Eye」や「VIVEトラッカー3.0」も合わせて体験した。その際の率直な感想は記事に記したが、「全部2018年中にそろってたらVTuber業界はどうなってたんだ?」と震撼したものである。あと、インタビューした焔魔るりさんの使いこなしから「実用性がある」ことも理解できた。

案の定、「やってみたい」という理由だけで「VIVE Pro Eye」と「VIVEフェイシャルトラッカー」を購入した。実際にやってみた様子は自分のブログに記録してある。そして、一通り実験できて満足してからは、サブ機としてベンチを温めてもらっている。

……「NeosVR」でも活用できると気づいたのは、ソーシャルVRに本格的にハマり始めてからのことである。

10. VIVE Pro 2


購入理由:レビューで体験したらほしくなったから+α

取材で先行体験した「VIVE Pro 2」は、もちろん個人的に所有したいという願望があったから購入したが、実は必要に迫られて買ったものでもある。愛用していた「VALVE INDEX」が断線し、その生涯を終えたのである。

悲嘆に暮れていたが、ちょうど「VRChat」を遊び始めていたこともあり、代替機が必要だった。ひとまず「VIVE Pro Eye」を引っ張り出したが、この時自身の問題に気づいた。「目が肥えていた」のである。「VIVE Pro Eye」の解像度ではもう満足できなくなっており、「HP Reverb」くらいでやっと安堵できる。おそらくスクリーンドア現象を極端に嫌うようになっているのだと思う。いろいろなVR機器を体験しすぎた副作用といえるだろう。

「VALVE INDEX」を買い直そうにも、ちょうど国内からは在庫が消えていた。「HP Reverb」はトラッキングが不安視される。なにか手はないか。あった。この前体験した「VIVE Pro 2」が、発売を迎えているではないか!

そんな感じの勇み足で迎えた「VIVE Pro 2」だが、いざ普段使いを開始してみると、「やや明るい」「見え方にクセがある(視界端が歪む)」「なぜかボヤけ気味に感じる」など、扱いにくさも同時に見えてきた。「the Blu」のような映像系コンテンツでは有効だが、5K解像度を要求するほど高精細なVRコンテンツは現状そこまで多くない。言ってしまえば、僕にとっては「過剰」だったのだ。

あと、最大解像度を出そうとすると、中間ソフトがグラボに接続するモニターを2つまでに制限しようとするため、トリプルモニター環境の利便性を天秤にかけることになった。残念ながらこのとき勝利したのはトリプルモニター環境だった。現在、「VIVE Pro 2」も我が家のベンチを温めている。

EX3. HaritoraX&VIVEトラッカー 3.0

購入理由:レビューで体験したらほしくなったから

Haritora」を体験した身にとって、「HaritoraX」の進化は「劇的」と表現してもいいほどだった。装着しやすくなり、価格も安くなり、VIVEトラッカーほど導入ハードルは高くない。しかもベースステーション不要。フルトラッキングもここまで手軽になったのか……と感動し、ちょうど「VRChat」でのフルトラに関心が出始めていたこともあり、無事購入した。

そして「VRChat」にハマり過ぎた結果、かつて体験した「よりシャープなフルトラ」を求めて、「VIVEトラッカー 3.0」も3台仕入れてしまった。現在、常用しているのはVIVEトラッカーである。

常用の決め手はトラッキング精度よりも、装着の手早さだった。ホルダーを準備するコストはあるが、トラッカー3点までなら「HaritoraX」より装着箇所が少ない=装着時間が減るということだ。一方、「VIVEトラッカー 3.0」はベースステーションに縛られ、トラッキング範囲から外れれば、アバターの手足は動かなくなるか明後日の方向へ飛ぶ。

双方使ってみた感想としては、ソーシャルVR用途の場合、特定の場所に座って雑談したりするのがメインなら「HaritoraX」が、ダンスなどの激しいモーションやポージングなどを求めるなら「VIVEトラッカー」が、それぞれ適している印象だ。僕は最近前者の用途に偏りつつあるので、「HaritoraX」が肘や膝のトラッキングに対応したらまた乗り換えるかもしれない。

11. VALVE INDEX(2代目)

購入理由:一番なじむから

「VIVE Pro Eye」や「VIVE Pro 2」を仕入れたものの、普段使いにはどこか一歩足りなかった。結局、僕は2代目の「VALVE INDEX」ヘッドセット単品を購入した。

解像度、要求スペック、イヤーオフスピーカー、マイク性能……とにかくバランスが良い。重心バランスが前のめりという欠点はあるが、とりあえずPCにつなぎっぱなしにして、VRに入るときにすぐにかぶって使える。日常的に使う上で、様々な取り回しのよさが光る。ハイエンドVRヘッドセットとして、最も完成度が高い一台だとあらためて感じた。

こうして迎え入れられた2代目「VALVE INDEX」は、2021年後半の怒涛のメタバースブームの中で、僕のいろいろなVR取材を支えてくれることになる。しかし、年が明けてしばらく経ったある日、悲劇が起こる。

EX4. VALVE INDEX(ニコイチ)

いつも通り「VRChat」で遊んでいたときのこと。突然、2代目「VALVE INDEX」のストラップ右側が「バキィンッ!」と音を立てて、破裂した。内部のスプリングが露出し、もはや頭部を締めて固定することは不可能になった。VR睡眠のような負荷のかかる行為はしていないはずだったのに、2代目は予兆もなく自壊した。

突然の死を前に丸一日大声を上げて泣いたが、運悪く(?)日産自動車の「VRChat」内での新車お披露目会取材が迫っていた。いまから修理や再注文をして間に合うかは微妙だ。かといってVIVEシリーズはマイク音質に不安があった。焦りに焦った末、ふと部屋の隅に横たわっていた、断線し動かなくなった初代「VALVE INDEX」が目に留まった。

断線しているがその他は無事の先代。ストラップが破壊されたがケーブルは無事な2代目。焦りで加速したニューロンはひとつの回答を提示した。「合体だ」と。気がつけば、2代目から剥ぎ取ったケーブルを、初代に換装していた。「VALVE INDEX」の「ニコイチ」をやってしまったのである。

幸いにも、「ニコイチ」された「VALVE INDEX」は、「仮面ライダーW」のように元気に稼働した。とはいえ、最善の手段は「修理に出す」だったはずである。読者のみなさまはくれぐれもこういった愚かな行為は回避してほしい。

大切なのは「自分の普段の使い道」を知ること

以上が僕が実際に購入し、運用してみたVRヘッドセットたちだ。そしてありがたいことに、これ以外にもおしごとで様々なXRデバイスを体験する機会に恵まれている。ざっと書き出してみよう。

  • Oculus Rift S
  • VIVE Cosmos Elite
  • VIVE Focus 3
  • Pimax 8K
  • Pimax 8K Plus
  • HP Reverb G2
  • Lenovo Mirage Solo
  • JVCケンウッド HMD-VS1W
  • MeganeX(※開発段階)
  • arpara VRヘッドセット(Gamer 5K、All in One 5K)
  • Pico Neo 3 Link
  • Nreal Air
  • ThinkReality A3

資金と場所の問題から難しいものの、これらもできれば手元に置いておきたいとは思っている。全てのVRヘッドセットにはそれぞれの魅力があり、どれも愛おしい。「特定用途ぐらいにしか使えない」というのも、ある意味ではチャームポイントなのだ。

一方で、「デバイスそれぞれの性能と魅力」と「普段使いに適しているかどうか」は全くの別物だと考える。主にレビュー時に触れた魅力的な性能に惹かれて購入したものの、日常的な運用には意外と適していないと気づいたことがあった(「VIVE Pro Eye」のように検証用で割り切って買ったものもあった)。僕が「最適なVR機器は性能ではなくユースケース次第」という考えを抱いているのは、こうした経験も影響している。

普段遊ぶVRアプリはなにか? 使用頻度はどのくらいか? 大事にしているのは装着感か? それとも画質か? 体はよく動かす? それとも座ったまま? アイトラッキングは必要か? 外部アタッチメントで拡張する気はある?

こういった要素を総合的に検討していくことで、はじめて「自分に合うVRヘッドセット」が見つかるのである。これからVRデバイスを新たに買う際には、ぜひご自身のVRの使い道をよく見つめてみることをオススメしたい。

某日

さて、こうして自分のVRデバイス遍歴を振り返ってきたが、実は次に手を出したいものが2種ある。どちらともかなりお値段が張る上、クセが強い。手を出すなら片方だが、どちらに手を出すべきか迷っていた。

そんなことを、月一回のライター懇親会で話していたら、フワッと編集部の人からアドバイスをもらった。

「浅田さんのユースケースだったら、QoLに寄与するのはこっちでしょ」

言われてみればそうだ。自分の普段使いを考えれば、選択肢はひとつだった――

12. Varjo Aero


購入理由:レビューで体験したらほしくなったから

8月3日、新たな一台「Varjo Aero」が届いた。去年末にレビューのため体験した、超高解像度VRヘッドセットシリーズのエントリーモデルだ。

7月にセールで10%OFFになっていたとはいえ、それでもお値段28万円ほど。買い物としてはぶっちゃけ正気の沙汰でない。それでも購入に踏み切ったのは、破格の解像度が、いまの自分のメインの遊び方「だいたいVRChatやってる」に適合すると、レビュー時点で実際に「VRChat」を体験していたことで確証を持っていたからだ。

実際、「Varjo Aero」を通してみる「VRChat」は爽快さすら感じる。ワールドもアバターも、ほぼ肉眼に近い解像度で見るとただただ気持ちがいい。ついでに「Hot Dogs, Horseshoes & Hand Grenades」も体験したが、銃がまるで本物のように見えたので、もはや笑う他なかった。

一方、ヘッドホンは搭載されておらず、マイク性能も微妙とされるので、ソーシャルVRで遊ぶ上ではイヤホンとマイクは別途用意するべきである。「VIVE Pro 2」と同様、グラボに接続できるモニターは2つまでだ。いろいろと扱いが慎重にならざるを得ないが、それに見合う「世界の鮮明さ」に、抗いがたい魅力をたしかに感じる。これからじっくりお付き合いし、我が家の一台に最適かどうか見極めていくつもりだ。

なお、悩んでいたもう一方である「Project Cambria」については、編集部に任せるつもりだ。


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