Valve社が独自に開発し、5本の指の動きを検知できるコントローラーが大きな話題となったVRヘッドセット、VALVE INDEX。昨年の11/28に日本に上陸してから3ヶ月が経ち、各国で品切れが続いていますが、積極的な購買層には行き届いている印象です(筆者も予約開始当日にノータイムでフルセットを注文しました)。
そんなVALVE INDEXは実際の普段遣いとしてはどうか、どのような人におすすめできるか、気になる方も多いはず。今回、MoguraオフィスにてVALVE INDEXを装着し、その使い心地を紹介します。
ヘッドセット概要
VALVE INDEXのヘッドセット本体は写真の通りです。まずは後頭部からチェックしてみましょう。
後頭部はダイヤルロックで固定するヘッドストラップが採用されており、装着時に頭のサイズに合わせて大きさを調整しやすい部類です。ゴーグルとヘッドストラップをつなぐユニットは、引っ張るとバネのように戻る仕掛けです。これにより、頭を入れればほぼ自動的にフィットします。補助パットも装着できるため、頭が小さい人向けにも調節可能です。
フェイスクッションはマグネット式で着け外しができるため、メンテナンス性が良好です。
大きな特徴のひとつ、オフイヤースピーカー。耳に密着するヘッドホンではなく、耳から離れたスピーカーが採用されています。明確なメリットは、直接接触しないおかげで耳が蒸れず、痛くなりにくいこと。聞こえ具合はヘッドホンと大差なく、遠くから聞こえてくるように感じられ、没入感を得られることもあります。
なかなか見かけないシロモノですが、VRを体験する際は非常に有用です。ただし、ヘッドホンより音漏れしやすいため、周囲に人がいる際は少し注意するべきかもしれません。
正面のクリアパーツはマグネット式で簡単に脱着可能。外した内側には、LeapMotionなどのUSBデバイスを設置できる接続口が設けられています。本機のドッキリメカニズムのひとつですが、今のところ有効活用できるコンテンツは出てきていないので、活きるかどうかは今後の発表次第でしょう。
このようにヘッドセット単体で見てもかなり多機能で、利便性も高めに仕上がっています。その分、全体的に重量があり、重心が常に前のめり気味。Oculus Questほど極端ではありませんが、長時間の使用はやや辛いかもしれません。
また欧米圏のユーザーを想定しているためか、鼻の接触部分がやや大きめです。人によってはここにスキマが生まれてしまい、映像以外のものが見えてしまう可能性があります。
現行最高クラスの解像度とフロントカメラ
そんなボリューム満点のヘッドセットに搭載されているのは、デュアル1440×1600RGB LCDディスプレイ。実に両目で2880×1600という解像度を誇ります。加えてリフレッシュレートは、80Hz / 90Hz / 120Hz / 144Hzに対応しており、総合的なカタログスペックは現行のVRヘッドセットの中ではトップクラスです。
実際の見え方も非常に美しく、近距離のオブジェクトは実物と大差ない解像度で映ります。発色バランスも適切で、長時間装着していても目は比較的疲れにくいように感じます。もちろんリフレッシュレートの高さから動きの激しいコンテンツにも機器側がついてこられるため、映像体験は間違いなく快適。ハイエンド機種にふさわしいVR体験を約束してくれるでしょう。
また地味ながら無視できないのが、フロントカメラの性能です。SteamVR内から設定できる「ルームビューカメラモード」をONにすると、このフロントカメラを用いたパススルー映像を取得できるのですが、映像のクオリティが既存のVRヘッドセットの中では段違いに高いのです。
映像はフルカラーで、ある程度の大きさの文字なら読めるレベルの解像度。映像の出し方も、100%外界の映像を映すものに加え、VR内の映像を半透明に重ね合わせて映すものまで存在します。
例えば、VRお絵かきアプリ「Tilt Brush」と組み合わせると、自分の描いた作品を現実世界上に配置する、なんてこともできてしまいます。現状ではこの機能を活かせるコンテンツは少数ですが、VALVE INDEXはMR(複合現実)までカバーし得る逸材であることは念頭に置いて損はないでしょう。
INDEXコントローラーは「指の動き」だけが取り柄じゃない
VALVE INDEX最大の目玉といえば、INDEXコントローラーです。指の動きや握力を検知するコントローラーは一躍話題になり、なんとコントローラー単品セットですら全世界で完売するほどです。
実際「ものをつかんではなす」という、VRにおける基本操作のひとつを限りなく直感的に行えるのは最大の強み。一部のVRゲームは操作の快適度が跳ね上がり、体験の深度が一段階引き上げられます。
一方で、「VR上の手の描写」という点では、「曲げ伸ばし」は表現されるものの「広げて閉じる」という動きは再現されないことには留意するべきでしょう。
しかし「指の動き」だけが強みではありません。コントローラーとして見た場合、手に装着するという特徴が光ります。
INDEXコントローラーは内側のストラップで手に「固定」するという独特な構造を採用しています。そのため、手を開いてもコントローラーが落下することがありません。「握り続ける」という操作から解放されることで、没入度が高まると同時に、手汗や疲労でコントローラーが滑り落ちるという事故の抑止につながっています。「勢いあまってコントローラーが手から発射された!」というアクシデントとはおさらばです!
重量もVIVEコントローラーとほぼ変わらず、握りやすさや装着方式のせいか、体感の重さはもっと軽く感じることもあります。単純なコントローラーとしての使い勝手の良さも、INDEXコントローラーの持ち味です。
VRゲームとの相性は?
「実際にこれでVRゲーム遊んだらどんなもんなの?」と、気になる方も多いはず。いくつかVRゲームをプレイしてみた感想を紹介します。
Aperture Hand Lab
まずINDEXを手に入れたらやるべきなのは「Aperture Hand Lab」。無料で提供されているこのゲームは、INDEXコントローラーの実質的なチュートリアルソフトです。握手、手をふる、じゃんけん、握手、さらに握力検知と、コントローラーの基本操作をフル活用できる内容になっています。ちなみに、人気パズルゲーム「Portal」を題材としているので、チュートリアル的ながらゲームとしても充分に楽しめます。
Boneworks
ぜひ体験すべきタイトルといえば「Boneworks」でしょう。昨年末に登場した新規タイトルですが、その人気ぶりは歴代VRゲームをもしのぐほどの人気作です。再現された両手で、武器を持ち、ロープをにぎり、壁を登り、重い鉄の箱を抱える、といった「手を使う」操作をすべて用いて、敵を倒してダンジョンを探索することができる、言うなれば「自分の体を使ったアクションゲーム」です。
このゲームではINDEXコントローラーの特性がフル活用されています。視界も高解像度が遺憾なく発揮され、近未来で退廃的な世界が余すことなく映ります。物理法則がくまなく再現されているのも特徴で、特に重いものを持ったときは本当に「重っ!」と錯覚するほど。巨大なハンマーでガラスを叩き割る瞬間は、最高の一言です。
自分の手で世界を探索する圧倒的な楽しさがあります。一度は遊んでもらいたい一作です。
Beat Saber
では定番の名作との相性はどうかということで、リズムゲーム「Beat Saber」も起動してみました。
VRデバイスと「Beat Saber」の相性を決めると言ってもいいのがトラッキングの精度。上位レベルの曲ほど、コントローラーを振る速度にデバイス側がついていけるかが焦点になります。
その点においては、2台の外部センサーを用いて部屋全体をトラッキング範囲にする「アウトサイドイン型」を採用し(※フルセットではSteamVR2.0)、手に固定にするコントローラーが安定した斬撃を保証してくれます。VTuberおめがシスターズのおめがレイさんも動画内で「一番遊びやすかった」と証言しており、本機との相性は非常に良好です。
バーチャルキャスト
INDEXコントローラーの運用目的のひとつが「VTuber活動への利用」です。五指の動きを再現できるため、アバターの表現力は格段に上昇します。
そこで3Dアバター配信ツールの鉄板「バーチャルキャスト」も検証してみました。結論としては運用に問題なし。INDEX発売と同日に対応しただけあり、五本指のトラッキング検知は良好なほか、各種キーコンフィグも適切に設定されています。Vキャスターの方にとっても、VALVE INDEXは十分におすすめできる一台です。
この他にもいくつか遊んでみたのですが、特にコントローラーを積極的に活用するゲームとは相性がよいと感じました。剣戟アクション「ソード・オブ・ガルガンチュア」やリズムゲーム「Pistol Whip」、個人的にはシューティングゲームの「Hot Dogs, Horseshoes & Hand Grenades」もオススメです。INDEXコントローラー対応タイトルは、意外に多い印象です。
コアなVRゲーマーほどハマる一台
VALVE INDEXを動かしてみて、とにかくコアなVRゲーマーほど「欲しい!」と思う機能が揃っていることを再認識しました。トップクラスの解像度にメンテナンス性の高さ、良好かつ手軽な装着感、INDEXコントローラーの秀逸さなど、VRゲームをこれでもかと遊び尽くしたい人にとっては、現状における最適解と言っても差し支えないでしょう。
ただし、外部センサーを設置する手間がかかる点や装着負荷の大きさなどは無視できないところ。お手軽さを求めるユーザーにとっては必ずしも最適ではないでしょう。「VTuberとして1時間以上の配信を毎日行う」「VRChatへ何時間もログインする」といった用途においては、装着負荷の大きさがさらに響いてくるはずです。そのあたりが気になるようであれば「INDEXコントローラーだけを買う」という選択肢も用意されています。
新規購入を検討されている方は、このあたりの特性を踏まえた上で購入の是非を決定するのがよいでしょう。ハイエンドなコンシューマー向けVRヘッドセットとしての完成度は間違いなくトップレベルなのは間違いありません。コントローラーも含め、価格以上のバリューを手中に収め得る一台です。
執筆:浅田カズラ
VALVE INDEX スペック
ディスプレイ |
1,440×1,600×2(2,880×1,600) |
フレームレート |
80Hz / 90Hz / 120Hz / 144Hz |
視野角 |
最大約130° |
IPD調整 |
58mm~70mm(物理調整) |
接続 |
USB 3.0、DisplayPort 1.2、12V電源 |
トラッキング |
SteamVR 1.0および2.0 |
オーディオ |
ヘッドホン一体型、マイク搭載 |
フロントカメラ |
ステレオRGBカメラ 960×960 |
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