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テック 2019.09.16

超高精細で小型化を追求したVRヘッドセット、2021年製品化目指す

ドイツのスタートアップValityは、高解像度(retinal resolution)で、かつコンパクトなVRヘッドセットの開発を行っています。高解像度と小型化に特化し、2021年までにエンタープライズ用途での製品化を計画します。

コスト・視野角とのトレードオフ

Valityが目指すのは、高解像度かつ既存製品と比較して劇的に小型のVRヘッドセットです。

VRヘッドセットが焦点を合わせるためには、ディスプレイとレンズとの間に一定の距離を取る必要があります。通常のディスプレイを用いて、この要件を満たすシンプルな構造を取ると、低コストかつ広視野角を実現できます。しかし一方で、デバイスの大型化と解像度の低下を免れません。

Valityのアプローチは、マイクロディスプレイを使用しより複雑な構造を取ります。焦点距離を短くし、同時にマイクロディスプレイにより超高解像度を実現するというもの。ただしこの場合、逆に高コストかつ視野角は狭くなるというデメリットが生じます。
同社は、このようなコンパクトで高解像度のデバイスはエンタープライズ向けに市場があると睨んでいます。

「人の眼の解像度に近づいている」

メディアRoad to VRの取材によれば、製品完成は早くて2021年第1四半期を予定。プロトタイプのデバイス重量は約200グラムですが、完成品は150グラム以下を目指すとのこと。

現在は頭の回転だけを認識する3DOFのトラッキングですが、最終的には前後左右と上下の動きに対応した6DOFを外部センサーを使用しないインサイドアウト方式のトラッキングで実現する計画です。また、Valityはコントローラーも開発中です。

解像度については、プロトタイプは2K×2Kのマイクロディスプレイを使用し、視野角が垂直・水平方向ともに80度。1度につき36ピクセルの描写が可能な36PPD(pixels per degree)を謳っています。これが最終製品では、より高解像度の46PPD、視野角85度を計画しています。

Valityは人の眼に近い解像度(retinal resolution)をおおよそ60PPDと定義した上で、まだ人の眼同等の解像度とは言えないが、「人の眼の解像度に近づいている」と述べています。

視野は明らかに狭い

体験した米Road to VRの記者の感想によると、視界はとてもシャープで、画像も鮮明、とのこと。一方で記者は、視野角の狭さについても言及しています。視野角80度のプロトタイプはまるでスイミングゴーグルのような視界だったとの感想。今後85度に拡大した際も、他のVRヘッドセットと比較すると明らかな視野の狭さを感じるだろうということです。

ただしこの点については、Valityのデバイスは、没入感よりも画像の精密さを重視する用途に向いていると言うことが可能です。例えばトレーニングやシミュレーターで、細かい文字を読んだり遠くのものを見たりすることには適しているでしょう。

価格は約1,000ドル

Valityはまずエンタープライズ向けをターゲットとしており、最終製品の価格は約1,000ドル(約10万8,000円)を見込んでいるとのこと。ValveのIndexやHTCのVive Proといったハイエンドモデルのレンジに入ることは間違いなさそうです。

またPC接続型に加え、ポータブルの”belt-pack”を使用するモデルも検討中だといいます。Magic LeapのLightpackのような思想です。さらにデバイスだけでなくエンタープライズ向けアプリのプラットフォームを提供し、ビジネス用途での活用をより容易にしたいという目論見もあるようです。

最終製品は早くとも2021年第1四半期とのことから、今後も開発状況は注視が必要です。

高解像度VRを巡っては、グーグルやフェイスブック等の大企業も含め各社で開発が進んでいます。

(参考)Road to VR
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