GMOペパボのペパボ研究所と横浜国立大学 太田研究室の共同研究成果が、国際学術誌「Advanced Intelligent Systems」に採択されました。2026年6月9日に公開された論文では、声を出さずに言葉を認識する手装着型の柔らかいEMGデバイス(※EMG:筋肉が動く際に発生する微弱な電気信号を記録する技術)の詳細が報告されています。
従来、デバイスを活用した音声入力には、発話内容が周囲に漏れるプライバシー上の懸念や、騒音環境での認識精度低下という課題があります。こうした問題に対応するための「サイレント音声認識(SSR)」の研究は以前から進んでいますが、顔や口元へのセンサーの常時装着が必要で、見た目の違和感や装着負担が課題でした。
今回開発されたデバイスは、手に装着し、必要なときだけ指先の電極を口元に近づけて筋電位信号を取得する型となっています。人は発声しなくとも言葉を発しようとする際に口周辺の筋肉がわずかに動きます。その微弱な電気信号を拾い、深層学習で単語を識別する仕組みとなっています。指の動きに追従するよう液体金属配線を採用し、口元に触れる電極には透明な柔軟素材を使用。全体を柔らかいエラストマーで包み、手指の自然な動きを妨げない構造を実現しています。

本研究の概要と試作デバイス(手装着型の柔らかいEMGインターフェース)
深層学習モデルによる解析では、30語を平均97.2±1.3%の精度で識別することに成功しました。さらに、声を出さないコマンドだけでドローンをリアルタイム操作できることも実証されています。騒音環境やプライバシーへの配慮が求められる場面でも、音声に代わる入力手段として機能する可能性を示しました。
ペパボ研究所は今後、医療・福祉分野やウェアラブルAI分野の研究者・企業へ成果を広く発信し、実用化に向けた展開を目指すと説明しています。
手首装着型EMGデバイスの活用は、上記の研究以外でも企業レベルで広がっています。Metaは2025年9月に発表したAIグラス「Meta Ray-Ban Display」と組み合わせて使うリストバンド型コントローラー「Meta Neural Band」を展開しており、ハンドジェスチャーでグラスのアプリを操作できるほか、指先で任意の表面に文字を書いてメッセージを送る「EMG Handwriting」の早期アクセスプログラムも始まっています。ユタ大学との共同研究では、手首の筋電位を使ったスマートホーム操作や障害者支援への応用も進めています。
