近年注目を浴びつつある「スマートグラス」。一見すると大きめのサングラスですが、その本体には様々な機能が備わっており、仕事で利用できるものや、日常を快適にサポートしてくれるものもあります。しかし、グラスによって使える機能が大きく異なるため、どれを選べばいいか迷ってしまいがちです。
今回はスマートグラスにはどんな機能があるかを解説し、代表的なデバイスを紹介していきます。
目次
そもそも、スマートグラスとは?
スマートグラスの主な用途は?
ディスプレイ(動画視聴やウェブ検索)
運動記録や計測
写真/動画撮影
音声機能
AIによる音声アナウンス
AR機能
購入する前に注意すべきことは?
代表的なデバイスは?
XREAL ONE
VITURE Pro
RayNeo Air 2
MiRZA
ENGO 2(※国内正規販売なし)
Ray-ban Meta(※日本未発売)
そもそも、スマートグラスとは?
スマートグラスは、広義の意味で、マイクやカメラ、スピーカー、AIなど、何かしらの電子機器を搭載したグラスのことを指します。装着したまま、音楽を聴いたり、誰かと通話したり、データを記録したりできるのが特徴です。
特に話題なのが、グラスの部分がディスプレイとなっており、様々な映像やデータを見られるタイプのものです。その多くがPCやスマートフォンと接続すれば、すぐに使えるようになっており、いつでもどこでも映像視聴やブラウジングができるのが魅力となっています。
バーチャルなオブジェクトをAR技術で表示させることのできるデバイスの場合は「ARグラス」として区別する場合もあります。
注意すべきは、すべてのスマートグラスが、ディスプレイ機能を搭載しているわけではないことです。また、ARグラスの定義は、メーカーによって異なります。購入するときは、事前にどんな機能が搭載されているかをしっかりチェックしましょう。
スマートグラスの主な用途は?
ディスプレイ(動画視聴やウェブ検索)
グラス上にシースルーでウィンドウが表示され、YouTubeなどの動画視聴やウェブブラウジングができます。スマホを持たずに、ハンズフリーの状態で視聴できるのが強み。デバイスそのものも軽量なため、長時間映像を見ていても、頭や肩が疲れにくいのもポイントです。中には、ゲーム機やPCと接続して、画面を映し出せるタイプのデバイスもあります(※デバイスによっては専用アダプターが必要なケースがあります)。
表示方法はグラスによって大きく異なり、目の前の画面がそのまま映し出されるだけのもの、頭の動きが画面と連動しているもの(3Dof機能搭載)、頭に加えて前後の動きにも対応してくれるもの(6Dof機能搭載)などがあります。
運動記録や計測
走行距離や速度ペース、心拍数などのデータをレンズの内側にリアルタイムに表示でき、ランニングやサイクリング、水泳などの用途で活用されることもあります。メジャーリーガーの大谷翔平さんがこの機能を搭載したスマートグラス(後述)を使用していたことで話題となりました。
写真/動画撮影
Meta社が提供する「Rayban Meta」のようにグラスのフレーム部分に撮影ボタンが搭載されているものもあります。音声コントロールなどでも撮影でき、撮影したものをSNSにシェアしたりもできます。覚えておきたい情報を画像でメモしたりする際に便利です。
音声機能
スマートグラスには、誰かと通話したり音楽を聴いたりする機能が備わっていることもあります。音声認識でかけたい相手の名前を呼びかけると通話が可能に。Rayban Metaの場合、Apple MusicやAmazon Musicなどの楽曲を再生可能です。
AIによる音声アナウンス
次世代のスマートグラスの利用方法として期待されているのが、AIによる音声アナウンス機能です。生成AIを利用し、ユーザーの問いかけに音声で答えてくれるというもので、翻訳や道案内などができます。ただし本格実装しているものがまだ少なく、各社とも実験段階となっています。
AR機能
スマートグラスの一種である、AR機能のあるデバイス「ARグラス」の場合、現実の風景とデジタルな情報を重ね合わせたまま同時に見られます。これにより、現実の景色に3Dのオブジェクトが自然と溶け込んでいるかのような体験等もできます。現状では、XREALやMiRZAなどで体験できるコンテンツ・サービスのなかに一部用意されている状態です。とはいえ、現状では十分に活用できるARコンテンツはとても少なく、今後の開発が期待されています。現状ではMeta社が2024年に試作機として発表した「Orion」が、AR領域を大きく拡張させるのではないかと見られています。
購入する前に注意すべきことは?
スマートグラスと一言で言っても、使える機能はメーカーによって大きく異なる他、同じメーカーでもまったく別の機能の場合があります。例えば、映像視聴向けとスポーツの計測向けでは用途が違うため、何も調べずに買うと失敗してしまうかもしれません。まずは公式サイトなどで機能説明をしっかり見ておくことをおすすめします。価格帯も機能によって差があります。
また、日本国内で販売されていない機種は、利用できない可能性があるので注意が必要です(技適を通っていない、アプリや言語が対応していない等)。例えばRayban Metaは日本語公式サイトこそありますが、例え輸入しても電波法により日本では利用できません。(2025年2月現時点)
他にも、スマホ接続が必須のものや、特定のデバイスがなければ動かない機能などがあるケースもあるので、必要な周辺機器は何かをあらかじめ知っておくことが求められます。
代表的なデバイスは?
XREAL ONE
XREALシリーズは、中国XREAL社の手掛けるスマートグラスです。早い段階から日本国内市場で販売しており、動画視聴などに特化したXREAL Airシリーズを中心にスマートグラスを展開してきました。
最新モデル「XREAL ONE」は、自社開発の空間コンピューティングチップの搭載により、グラス本体で3Dof機能を実現しています。専用のアプリやデバイスを用意しなくても頭の傾きを認識し、超低遅延での表示を実現しました。スマホとの接続でブラウジングや動画視聴ができ、ゲーム機との接続でディスプレイとしても使えます。使い心地は非常によく、長時間装着して仕事に活用しても違和感なし。映像やブラウザ閲覧を中心に使うのであれば、おすすめできる機種です。
他にも、3DのARコンテンツを楽しめる6DoFのARグラス「XREAL Air 2 Ultra」もリリースされています。
公式サイトはこちら。
https://www.xreal.com/jp/one
VITURE Pro
VITUREシリーズは、米国・カリフォルニアで誕生したXRグラスのブランドです。スマホのブラウジングや動画視聴、ゲーム機のディスプレイとしても利用できます。
最新モデルとなる「VITURE Pro」は、前世代モデルVITURE Oneから進化し、画面サイズが約10%アップ、リフレッシュレートは2倍、輝度も約2倍となりました。また電子調光フィルムは、必要に応じてグラスの透明度を明るくしたり暗くしたりできます。さらに、視力補正機能があり、ダイヤルを回すことで視度を調整できます。これにより、スクリーンはコンタクトなしでも鮮明に見られます(※乱視補正や極度の近視には対応していません)。メガネユーザーであっても、おすすめできるデバイスです。
専用アプリを使って、スマホをパッドのように使って動画を視聴したり、マルチスクリーン機能で作業したりも可能です。
公式サイトはこちら。
https://store.viture.jp/products/viture-pro-xr-glasses
RayNeo Air 2
「RayNeo Air 2」は、TCL RayNeo社が開発したスマートグラスです。スマホやゲームデバイスと接続して、大画面での視聴体験をできるのが特徴です。ディスプレイにSONY製のMicro OLED(有機EL)を採用しているため、画面に映る映像の発色がよく、かなりはっきりとした映像を見られます。今回紹介するスマートグラスの中では、最もサングラスの外観に近く、見た目の違和感が薄いのもポイント。専用アプリやAR機能などは無いため、映像視聴特化のデバイスと考えて良いでしょう。
公式サイトはこちら。
https://www.cfd.co.jp/biz/product/detail/rayneo-air-2.html
MiRZA
「MiRZA(ミルザ)」は、NTTコノキューデバイスの手掛ける国産XRグラスです。サイズは他のスマートグラスと比較すると大きく、外観デザインも大きく異なります。しかし、上記で紹介したような、ブラウジングや動画視聴だけでなく、6DoFコンテンツにも対応。画面に3DオブジェクトをAR表示して、操作が可能です。ハンドトラッキング(両手のみでの操作)もサポート。アプリによるリアルタイム翻訳も可能です。
スマートフォンとは無線接続でき、ケーブルによる煩わしさが解消されています(※スマホとの接続にはAQUOS R9/R9 proが必要)。ただし、デバイスが高額であること(税込248,000円)や、開発アプリは今後登場する可能性が高いこと等から、一般ユーザーでも購入可能ながら、どちらかといえば開発者・企業向けのデバイスであることに注意です。
公式サイトはこちら。
https://www.devices.nttqonoq.com/mirza
ENGO 2(※国内正規販売なし)
「ENGO 2」は、フランスのEngo Eyewearが開発したスポーツ用スマートグラスですディスプレイでの映像やブラウザの視聴はできませんが、選手の走行距離や速度ペース、心拍数などのデータをレンズの内側にリアルタイムに表示できます。
主にランニングやサイクリングなどの有酸素運動で使用され、自身の体調の変化に気づいたり、運動量などを数値として確認したりできます。ジェスチャーコントロールにも対応し、表示を変更やオフにもできます。
公式サイトはこちら(英語)。
https://engoeyewear.com/products/engo-2
Ray-ban Meta(※日本未発売)
「Ray-ban Meta」は、Meta QuestなどVR/MRヘッドセットをリリースしているMetaが、サングラスブランドのRay-banとコラボレーションしたスマートグラスです。日本では未発売なものの、2024年の売り上げが100万台突破するなど大きな反響を呼んでいます。
ディスプレイでの映像視聴はできないものの、簡単なボタン操作や音声操作で写真・動画が撮れたり、SpotifyやiTunes Musicなどで音楽を聴いたり、「Meta AI」に話しかけて生成AIとの会話ができたりと多機能です。デザインもサングラスの延長線上にあり、着けていても自然な印象となります。
なお、Metaでは光学シースルー型ARグラス「orion」も開発中です。
Ray-ban Metaの公式サイトはこちら(日本語圏からの購入は不可)。
https://www.meta.com/jp/ai-glasses/
代表的なデバイスで出来ること
映像視聴・ブラウジング | 写真撮影 | AIナビ | フィットネス記録 | 他デバイス接続(ゲーム機等) | 主な用途 | |
XREAL ONE | ◯ | ✕ | ✕ | ✕ | ◯ | 映像視聴・ブラウジング |
VITURE Pro | ◯ | ✕ | ✕ | ✕ | ◯ | 映像視聴・ブラウジング |
Ray Neo Air 2 | ◯ | ✕ | ✕ | ✕ | ◯ | 映像視聴・ブラウジング |
MiRZA | ◯ | ◯ | △ (翻訳など) |
✕ | ✕ | 映像視聴・ブラウジング |
ENGO 2 | ✕ | ✕ | ✕ | ◯ | ✕ | フィットネス記録 |
Ray-ban Meta | ✕ | ◯ | ◯ | ✕ | ✕ | 撮影、音楽視聴、AIナビ |
※△はスマートフォンなどの外部接続時など、特定の条件で利用可能