リサーチ会社のIDC Japan株式会社は、2017年における「AR/VRヘッドセットの国内/世界出荷台数、および今後の世界市場規模予測」を発表しました。
発表によると2017年のAR/VRヘッドセットの世界出荷台数は、2016年より9.1%減少した836万台となりました。
しかしながら2018年のAR/VR市場は再度成長に転じ、出荷台数は前年比48.5%増の1,242万台、そして2022年の出荷台数は6,894万台に達すると予測しています。同社によれば、2017年~2021年のAR/VRヘッドセット市場の年間平均成長率は52.5%とのこと。
日本国内においては、2017年のAR/VRヘッドセット市場の国内出荷台数は約34万台となり、スマホ向けVRヘッドセット(スクリーンレスタイプ)が伸長しています。
(世界AR/VR ヘッドセット市場 出荷台数予測、2017年~2022年)
出荷減の最大要因は「スマホVR」
(世界AR/VR ヘッドセット市場 出荷台数 タイプ別構成比予測、2018年および2022年)
IDCによれば、2017年市場が前年比マイナスとなった最大の要因はスマートフォン向けVRヘッドセットの出荷減であり、トップシェアメーカーがヘッドセットのスマホへのバンドルを取りやめる動きが続いた一方で、消費者側では「新たに購入することが極めて少なかった」とのこと。IDCは2022年までにスマートフォン向けVRヘッドセットの出荷量は減少し、一体型VRヘッドセット(スタンドアロンタイプ)が多くを占めるとしています。
一方でレノボのARゲーム『STAR WARS/ジェダイ・チャレンジ』等は、適切なコンテンツとの組み合わせで、特定のタイプのヘッドセットが伸長することを示しているとしています。
米国IDC Mobile Device Trackerシニアリサーチアナリストのジテシュ・ウブラニ氏は、「トップコンテンツプロバイダーがARおよびVR領域に入るなど、コンテンツと配信の成熟が続いた」と述べ、続けて「一方、ハードウェア面では、数多くのベンダーが新しい資本調達オプションや異なる収益モデルを試行しており、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせることで、AR/VRを消費者や企業にとってより利用しやすいものにしている」とコメントしています。
2018年のAR/VR市場は回復していく見通し
2018年については、Oculusの一体型VRヘッドセット「Oculus Go」や、HTC Viveの上位機種となる「Vive Pro」、レノボの一体型VRヘッドセット「Mirage Solo」などの新しいデバイスが新しい機能と価格帯で市場に出荷されるため、VRヘッドセット市場を中心に回復するとIDCは予測しています。
一方ARヘッドセットは比較的安価に製造可能なスマートフォン向けを除き、2022年までビジネス利用が中心になる可能性が高いとしています。
米国IDCデバイスおよびAR/VRリサーチプログラム・バイスプレジデントのトム・マイネリ氏は「VRヘッドセットの出荷が2017年、若干の後退を示したことは認めらなければならないが、グーグルやフェイスブックなどの企業は、この技術をより消費者に親しみやすくするために引き続き努力している」と述べています。
国内では前年比187.7%と大幅成長の見通し
(国内AR/VR ヘッドセット市場 出荷台数 タイプ別構成比予測、2018年および2022年)
発表によると、ビジネス用途を含む2017年四半期の国内AR/VRヘッドセット出荷台数は合計で約18万台。タイプ別では、VRのスマホ向け型が4.9万台、PC接続型が10.7万台。ARのスマホ向け型が1.9万台となりました。
2017年通年での国内AR/VRヘッドセット出荷台数は合計で約34万台となり、2016年比では187.7%増の大幅成長。これはエンターテインメントや不動産、観光等でのVR活用において、比較的安価に環境を構築可能なスマホ向けヘッドセットが大きく伸びたことを受けています。
(国内AR/VR ヘッドセット市場 出荷台数予測、2017年~2022年)
IDC JapanのPC・携帯端末&クライアントソリューションのシニアマーケットアナリストである菅原啓氏は「国内は世界の流れから遅れを取ってはいるものの、スマホ向けヘッドセットを活用したVRの利用がようやく日本でも広がりつつある」と述べています。
一方で「一般ユーザーや消費者に目を転じた場合、ヘッドセットによるAR/VR体験者はまだまだ少数派と言わざるを得ず、さらなる裾野の拡大を続けていくことが期待される」とコメントしています。
今回の発表はIDCが発行する「AR/VRヘッドセットの国内/世界出荷台数、および今後の世界市場規模予測」にその詳細が報告されています。