Home » 原発の危機管理訓練をVRで実施 導入のカギは“超高解像度デバイス”


トレーニング・研修 2019.08.28

原発の危機管理訓練をVRで実施 導入のカギは“超高解像度デバイス”

フィンランドの大手電力会社Fortum(フォータム)は、原子力発電所での従業員教育にVRを導入しました。何百万人もの命を脅かしかねない事態に対し、どのように対応するかを安全かつ効率的に学びます。

すでに9割がトレーニング受講

このトレーニングでは、モニターの確認といった日々の業務から命の危険に関わる緊急事態まで、幅広いシナリオをVRで体験できるようにしています。

研修システムはフィンランドのロビーサ原子力発電所に設置され、すでに90%の従業員がVRトレーニングを受講。またFotumは他の拠点でもこのシステムの展開を予定しています。

デバイスはVarjo「VR-1」

VRトレーニングで使用するヘッドセットは、フィンランドのVRヘッドセットメーカーVarjo製「VR-1」です。人の目レベルの超高解像度をウリにしています。

VRプログラム開発を主導したJoakim Bergroth氏によれば、VR-1では一般に販売されているどのデバイスにもない、ハイクオリティな体験が可能とのこと。「VRシミュレーションの中で、実際にマニュアルを読んだり、制御室のディスプレイから一番小さい数字まで見分けることができました」とその精度を説明しています。


(一般的に流通しているVRデバイスVIVE Pro(左)とVR-1(右)の解像度の比較)

少しのミスでも重大な事故に繋がりかねない原発では、正確性が非常に重要です。したがってトレーニングについても、可能な限り精度を高める必要があります。

この点VR-1は「人の目レベルのVR」を謳っており、従来のVRヘッドセット(HTC VIVE ProやOculus Rift等)の約20倍の解像度を実現。視野のちょうど中心にあたる場所に超高解像度のマイクロディスプレイを配置し、マイクロディスプレイにより、視界の中心約30度程度が超高解像度で見える仕組みを採用しています。この圧倒的な高解像度が、Fortumのニーズにマッチしたと見られます。

高い費用対効果がメリット

VRトレーニングの大きなメリットは、費用対効果が高い点です。実際の現場で行う訓練に比較し、より多くの従業員へ一度に教育を施すことができます。「実際に体験するシミュレーターはなかなか確保できず、繰り返しテストしたり試験したりする時間もありません」とBergroth氏は語り、対するVRのメリットを強調しました。

またある調査では、従業員はVRトレーニングを通して、より多くの情報を短時間で習得可能と示しています。

VRで危機管理、有用性も明らかに

VRを使った危機管理、安全教育訓練は世界で広がっています。2019年8月アメリカのテキサス州エルパソで発生した銃乱射事件では、ウォルマートCEOがVRトレーニングの有用性についてコメントしており、その効果が今後も注目されそうです。

(参考)VRScout
Mogura VRはVRScoutのパートナーメディアです。


VR/AR/VTuber専門メディア「Mogura」が今注目するキーワード