シカゴ市警が、VRを活用したトレーニングの導入を決定しました。VRトレーニングは現場の警察官を対象としたもので、統合失調症や自閉症の症状を抱える人との接触方法を学ぶ内容となっています。
2つの視点で構成
今回シカゴ市警への導入が決定したVRトレーニングは、 Axonが開発しました。同社は1993年に創業(当時はTASER International)されたアリゾナ州の企業です。ボディーカメラや専用のアプリなど、軍・司法機関向けの製品を手掛けています。
VRトレーニングは、実写ののになっています。対象(統合失調症、自閉症の人)視点と警察官の視点の2編で構成。警察官視点では、要所で対象への対応を決める選択肢が表示され、履修者はゲイズコントロール(gaze control)形式(※)で、選択肢を選びます。
※ゲイズコントロール:VRヘッドセットのヘッドトラッキング機能を使い、「頭を動かして注視点を動かす」仕組み。アイトラッキングとは別物
すでに実演済
2019年5月22日、本トレーニングのお披露目がシカゴ市警本部で実施され、複数のメディアの前で警察官が実演を行いました。
https://vimeo.com/336930351VRトレーニングの導入についてシカゴ市警警視のEddie Johnson氏は、精神面に不調を抱えた人と警察官の接触は、警察側が適切な対応を行わない限り、容易に望ましくない結果となると説明。トレーニングの重要性を強調し、以下のようにコメントしました。
我々が(精神的な問題を抱える人々に)迅速に、あるいは適切に対応しない場合、ただの精神的な不調が犯罪行為へと転化し、その結果、対象や警官が負傷するといった事態も起こり得ます。我々はそのような結果を望んでいません。よって我々は(現場の)警察官たちに、(こういったケースに対応可能となる)訓練とリソースをより提供する必要があり、それが対象と警察官、双方にとってのリスク軽減につながるのです。
進むVRの警察への普及
2019年5月現在、国内外の複数の法執行機関が、VRの活用を進めつつあります。アメリカでは2019年3月、ニューヨーク市警が警察官用に、銃撃戦や人質事件といった実例に基づくシチュエーションを再現した、実戦的な訓練が可能なVRトレーニングを導入しました。
日本では現在、本格的なVRトレーニングの警察組織への導入は行われていませんが、福岡県警が、飲酒運転の危険性を警告する「VRで飲酒運転の疑似体験ができるシステム」を全国で初導入。大分県警が「VR交通安全動画」を制作、公開するなど、VRを活用した独自の取り組みが各地で進められています。
(参考)Chicago Tribune