XR/メタバース/VTuber専門メディア「Mogura VR」は毎週、Podcast「もぐラジオ」を配信中。「テック・コンテンツ業界の最前線を掘る」というコンセプトのもと、すんくぼ(Mogura VR 編集長)とゆりいか(Mogura VR 副編集長)が業界の注目トピックを語ります。
この記事では、最新回(#196)の内容をかいつまんでお届けします。
https://www.youtube.com/watch?v=Ehzrmi0_TuM
2026年のバーチャル領域とスマートグラスの進化
ゆりいか:まずはどのトピックから始めましょうか。
すんくぼ:やはり今年はグラス型のデバイス、つまりスマートグラスに注目ですね。これまでVRヘッドセットなど多くの機器が登場しました。特に今年は、眼鏡に近い形状のスマートグラスが普及する年になると考えています。昨年の流れを見ても、多くのメーカーが眼鏡型の新製品を発表しています。
ゆりいか:スマートグラスが普及していけば、スマホを取り出す機会が減りそうですね。
すんくぼ:そうですね。現在は二つの系統が市場を牽引しています。一つはXREALが切り開いた、目の前に大画面を表示するタイプです。パソコンやゲーム機の画面を空間に出して楽しむことができます。もう一つは、Ray-Ban Metaのような便利な機能を持つタイプです。これはカメラやスピーカーを搭載しており、日常の動作をサポートしてくれます。
ゆりいか:去年も新型の発表が各企業から相次いでおり、スマートグラス戦国時代といった状況ですね。
すんくぼ:多くの製品が登場し、ナンバリングも進んでいます。今年はガジェット好き以外の層にどこまで届くかが重要になるでしょう。普及のためには、眼鏡ユーザーにとっても違和感のないハードルを超える必要があります。私は今、Even G2という製品を装着してこのラジオを録っていますが、レンズにテレプロンプター(原稿を表示する装置)として文字が表示されていて、指輪型のデバイスで操作もできるので、手元で文字を送ることも可能です。Even G2はビジネスパーソン向けの機能に特化しています。価格は日本円で約7万円から8万円ほどで、一般の方にはまだ高価かもしれません。
ウェアラブルデバイスにおけるAIの役割
ゆりいか:メガネにAIを搭載するタイプの「AIグラス」も増えていますね。
すんくぼ:はい。しかし、現在のAI機能にはまだ制限が多いのも事実です。音声認識の精度や、機能の範囲についてはまだ改善の余地があります。ウェアラブルデバイスに乗るAIは、マルチモーダルであることが求められます。
ゆりいか:マルチモーダルなAIが搭載されると、どのような体験が可能になりますか?
すんくぼ:現実世界の文脈を読み取れます。目の前にある物体を認識し、適切な情報を自動で教えてくれる仕組みです。例えば道順を表示している時に、周辺の追加情報を自動で提供してくれるような機能です。これが実現すれば、真に便利な体験へと進化するでしょう。
すんくぼ:この分野の本命は、GoogleのGeminiだと考えています。Geminiはマルチモーダルな機能において非常に高い優位性を持っています。これを活かすための新しい基本ソフトとして、Android XRが登場します。2026年は、このシステムを搭載したスマートグラスが本気を出す年になるはずです。
ゆりいか:Googleのカレンダーやマップ、メールなど各種サービスと連携できれば、利便性はさらに高まりそうですね。
すんくぼ:メールやスケジュールが一括で同期されるようになれば、非常に便利です。現在はアプリを介した連携にとどまっていますが、システムレベルでの統合が期待されます。一方で、これらの最新デバイスが日本でスムーズに発売されるかは懸念点です。海外とのスピード感に差が出ないことを願っています。
VR・MRヘッドセット市場の現状と課題
すんくぼ:一方で、頭部に装着するヘッドセット型のデバイスはどうでしょうか。
ゆりいか:こちらの市場については、少し厳しい見方もありますね。
すんくぼ:Meta社はハードウェア開発の大幅な縮小を示唆しています。これに伴い、新製品のスケジュールが先延ばしになると予想されています。Valve社からは新しいゲーミングヘッドセットが出る予定ですが、これはコアなゲーマー向けの製品になるでしょう。他のメーカーも、新型ヘッドセットの開発には慎重な姿勢を見せています。
ゆりいか:開発が遅れている背景には、どのような理由があるのでしょうか。
すんくぼ:部材費の高騰が大きな要因の一つです。半導体やメモリーがAI需要で奪い合いになり、原価が上がっています。AppleのVision Proや、PICOの製品も影響を受けています。Meta Quest 4の登場も、当初の予想より遅れる可能性があります。
ゆりいか:消費者が納得できる価格で新製品を出すのが難しくなっているのですね。
すんくぼ:その通りです。倍の値段になってしまうのであれば、消費者は買い控えを選ぶでしょう。しかし、産業分野での活用は着実に進んでいます。例えば、Vision Proを使ってロボットの動きを学習させる取り組みなどがあります。人間が一度動くだけで、無数のパターンを学習させることが可能になっています。
産業向けスマートグラスと現場の効率化
すんくぼ:産業向けにおいても、今後はAIグラスが主流になると予想しています。現在は一般消費者向けが先行していますが、現場仕事での活用も期待されています。AIと繋がったスマートグラスを使えば、作業の効率化やミスの削減が可能です。
例えばSiemensなどの企業が、工場でのAI活用を推進しています。機械が故障した際に、スマートグラスを通じてトラブルの解決方法を表示する仕組みです。以前は音声でマニュアルを呼び出す程度でしたが、今はより高度なことが可能です。
目の前で起きた現象を写真に撮り、工場のデータに基づいた回答を導き出します。ChatGPTのような形式で、解決策が即座に提示されます。そのまま必要な部署へ連絡を取り、問題を解決することも可能になるでしょう。
ゆりいか:Amazonも配達員向けにスマートグラスの導入を始めていますね。
すんくぼ:はい。倉庫でのピッキング作業や配送時の確認作業に利用されています。スマホを取り出す手間を省き、作業中のミスを防ぐ狙いがあります。中国のSkyworthという会社は、約1万円という低価格なAIグラスを展示していました。
ゆりいか:1万円であれば、現場の作業員全員に配布することも現実的ですね。
すんくぼ:映像を表示せず音声に特化することで、コストを抑えたモデルです。今後はこうした産業特化型の安価なデバイスも、普及の鍵を握るでしょう。今年も多くのグラス型デバイスを試していくことになりそうです。
メタバースプラットフォーム「Roblox」の正念場
すんくぼ:次に、メタバースプラットフォームの動向を見てみましょう。
ゆりいか:Robloxが大きな転換期を迎えていますね。
すんくぼ:利用者は1億5000万人に達し、日本でも大人の認知度が上がってきました。これまでは子供たちの間で流行していましたが、ついに保護者の間でも話題になっています。中毒性の高さや安全性を心配する声が、日本でも無視できないレベルになっています。
ゆりいか:北米では以前から政治的な課題として取り上げられていましたね。
すんくぼ:はい。そのため、新たに顔認証による年齢確認が導入されました。未成年の場合はチャット機能が制限されるなど、非常に厳しい処置が取られています。アカウントの転売などのいたちごっこも起きていますが、規制は今後さらに強まるでしょう。
ゆりいか:Robloxは利用者が多い分、社会的な責任も大きくなっています。
すんくぼ:Robloxが優れているのは、利用者がコンテンツを作るUGCの仕組みです。コンテンツを作り続けるクリエイターがいて、それを楽しむユーザーがいます。この循環がある限り、プラットフォームは残り続けるでしょう。オーストラリアなどではSNSの規制が進んでいますが、Robloxがどのような扱いになるか注目です。
リアルとバーチャルが交差する体験型エンタメ
ゆりいか:プラットフォーム以外の動きとして、ロケーションVRについても触れておきましょう。
すんくぼ:体験施設へ行って楽しむ、ロケーションベースのエンタメが好調ですね。横浜のイマーシブジャーニーをはじめ、名古屋や福岡など各地で展開されています。大型商業施設の中にテナントとして入る形式が増えています。面白いのは、40代の女性など、これまでとは異なる層が楽しんでいる点です。
ゆりいか:家でVRを楽しむのとは、また違った流れが生まれています。
すんくぼ:コロナ禍を経て、人々はリアルな場での体験をより重視するようになりました。自分の体を使って没入感を味わうことが、価値として認められています。ヘッドセットを装着してピラミッドの世界を歩く体験は、どの世代にも支持されています。
ゆりいか:VR施設ではありませんでしたが、お台場のイマーシブ・フォート東京の閉園は残念なニュースでした。まだまだイマ―シブ体験施設というものの正解は出ていない印象です。
すんくぼ:期間限定の運営という側面もありましたが、ビジネスとしての難しさも浮き彫りになりました。しかし、コンテンツ自体の評価は高く、没入体験の可能性を改めて示しました。これからは万博などで得られた知見を活かした、新しいアトラクションも増えていくでしょう。
3Dガウシアンスプラッティングによる空間再現
すんくぼ:技術的な面では、Gaussianに注目が集まっています。
ゆりいか:3DGS(3D Gaussian Splatting)ですね。
すんくぼ:これは現実の風景を、写真や動画から高精度に立体化する技術です。登場から約2年が経ち、ようやく一般のアプリでも手軽に利用できるようになりました。Scaniverseなどのソフトを使えば、誰でも簡単に周囲をスキャンできます。
ゆりいか:VRChat内でも、この技術を使ったワールドが増えています。
すんくぼ:年末に公開された厳島神社のワールドは、そのクオリティの高さで話題になりました。一目でその凄さが伝わる段階に来ており、クリエイターの間でも活用が進んでいます。さらに、PortalCamのような専用のスキャン機器も登場しています。
また、Insta360からは、360度カメラを搭載したドローンも発表されましたね。antigravityという製品ですね。ドローンで全方位の映像を撮影し、ゴーグルでその視点を体験できます。これまでのカメラの画角に縛られない、新しい空撮体験が可能になります。こうした技術が組み合わさることで、空間を再現する手法はさらに進化するでしょう。
VTuber10周年とAI VTuberの新たなドラマ
ゆりいか:VTuberについても、今年は大きな節目となります。
すんくぼ:キズナアイ(Kizuna Ai)さんが活動を開始してから、ついに10周年です。
ゆりいか:黎明期は文化として定着せず、すぐに終わるのではないかと言われていた業界でした。しかし今では企業が上場し、都内の至る所で広告を見かけるほど定着しました。その一方で、人気ゆえの炎上リスクが高くなっているのも事実です。
すんくぼ:新しい動きとしてはAI VTuberのネウロサマ(Neuro-sama)が話題ですね。
ゆりいか:海外の開発者であるVedal氏が制作したAIです。VRChat内で配信を行い、視聴者と高度な対話を行っています。視聴者とのやり取りの中で、まるで感情があるかのような振る舞いを見せ、開発者の予想を上回る動きをしたことから、大きな反響を呼びました。
すんくぼ:Twitchでの課金額も非常に高くなっているそうですね。
ゆりいか:単に技術が凄いだけでなく、そこにドラマがあるからこそ支持されています。AIに心が芽生えたのではないかと思わせるような演出が、人々を惹きつけています。これが今後、ビジネスとしてどのように発展していくかはまだ未知数ですが、非常に面白い動きです。
株式会社Moguraの経営統合について
すんくぼ:最後に、私たちMoguraに関する大切なお知らせがあります。株式会社Moguraは、2026年1月末をもってMyDearest株式会社と経営統合いたします。Moguraはマイディアレストに吸収合併され、会社としての組織はなくなります。
ゆりいか:会社名は変わりますが、私たちの活動が終わるわけではありません。
すんくぼ:はい。Mogura VRのメディア運営や、XR Kaigiなどのイベント、コンサルティング業務はすべて継続されます。もぐラジオも終わることはありません。今回の統合は、私たちがこれまで取り組んできた活動をさらに前に進めるためのものです。
ゆりいか:体制が強化されることで、よりパワーアップしたコンテンツをお届けできるはずです。
すんくぼ:編集部としてのメンバーも変わらず、私が引き続き指揮を執ります。1月末で株式会社Moguraという形は幕を閉じますが、Moguraというブランドや取り組みは続いていきます。今後とも、私たちの活動を応援していただければ幸いです。
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