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もぐラジオ 2026.03.27

Picoから新たなVRヘッドセット登場 何を期待できる?【Podcastもぐラジオ要約版】

XR/メタバース/VTuber専門メディア「MoguraVR」は毎週、Podcast「もぐラジオ」を配信中。「テック・コンテンツ業界の最前線を掘る」というコンセプトのもと、すんくぼ(MoguraVR編集長)とゆりいか(MoguraVR副編集長)が業界の注目トピックを語ります。

今回は、中国のVRヘッドセットメーカーPicoが発表した新デバイス「プロジェクトスワン」と新OS「PICO OS 6」について語ります。空間コンピューティング向けを掲げた本機は、高解像度マイクロOLEDディスプレイや独自チップ「Picoシリコン」を搭載し、Vision Proを意識した仕様が特徴です。VRヘッドセット市場のプレミアム路線が再び動き出す中、2026〜27年の市場はどう変わるのか。GDC現地レポートも交えながら読み解きます。

(※本記事はポッドキャスト「もぐラジオ」の対談内容を要約・編集したものです)

https://www.youtube.com/watch?v=0Px9_VwLujk

GDCに来ているすんくぼから現地レポート

ゆりいか:今回もリモート収録ですが、どちらにいらっしゃるんですか?

すんくぼ:今はアメリカのサンフランシスコにいます。毎年アメリカで開催されるゲーム開発者会議「GDC(ゲームデベロッパーカンファレンス)」に来ています。

ゆりいか:世界最大級のゲーム開発者会議ですよね。

すんくぼ:そうですね。ただここ数年、規模感がだいぶ、縮小されてきています。セッションの数や展示の規模は年々縮小していて、定点で見ている人ほど、変化を感じると思います。とはいえ、セッションは何百本もありますし、個別取材も行いましたので、持ち帰れるものはいっぱいありました。

Picoが突然「新ヘッドセット」を発表

ゆりいか:そんな中、GDC関連で気になる情報が出てきましたよね。Picoの新しい動きです。

すんくぼ:3月に入ってすぐ発表されていましたね。「詳細はGDCの講演で話す」という形でお知らせされていました。そこで重大発表として、新VRヘッドセットと新OSが発表されました。新ヘッドセットは「空間コンピューティング向けヘッドセット」という表現で、コードネームが「プロジェクトスワン」です。

ゆりいか:新OSの方はどうなっていますか?

すんくぼ:OSは「PICO OS 6」へのバージョンアップです。

ゆりいか:今年はスマートグラスの話題が多かった中で、ヘッドセットはGalaxy XRが昨年11月に登場して以降、落ち着いていましたよね。Metaも今年はヘッドセットを出さないという話があって、どうなるんだろうと思っていたところに、Picoが突然来ましたね。

すんくぼ:そうですね。「お宅が出さないなら出しますよ」という感じで、Metaに挑戦状を突きつけているようにも見えます。

Picoとはどんなメーカー?

ゆりいか:改めてPicoについて教えてもらえますか?

すんくぼ:Picoは中国のVRヘッドセットメーカーで、2016年ごろからスタンドアロン型(PC不要で単体動作する)のヘッドセットを作り続けてきた会社です。「Pico Neo」シリーズなどを経て、最近は「Pico 4 Ultra」を出しています。性能的にはMeta Quest 3や3Sと近いラインで、全身の動きを検出するモーショントラッカーなど独自のオプション品も展開してきました。2021年にTikTokを運営するByteDanceに買収され、現在はByteDance傘下のブランドです。

ゆりいか:TikTokのByteDanceと、FacebookのMetaという、SNS同士が激しく競合している構図でもありますよね。ただPicoは、TikTokと連動はしているんですが小規模ですね。連携はあまり強くない印象です。

すんくぼ:MetaがVRとSNSをしっかり紐づけているのと比べると、全然違います。市場では、MetaがVRヘッドセット市場を牽引する中、Picoは2番手のポジションというのが正直なところです。

プロジェクトスワンの発表内容を整理する

ゆりいか:では、プロジェクトスワンの発表内容を見ていきましょう。

すんくぼ:まず「空間コンピューティング向けヘッドセット」という表現が印象的でした。「空間コンピューティング」という言葉はこれまでApple Vision Proだけが使ってきたワードですね。

ゆりいか:そうなんです。すでにVision Pro感が漂っています。

(Pico 4 Ultra | 画像提供:Pico Interactive)

すんくぼ:ハードウェアについては、開発者が軽く説明した程度の内容になりますが、まずディスプレイが40PPD超の解像度を実現するとしています。PPDとは1度あたりのピクセル数のことで、画素密度を示す指標です。Apple Vision Proが約35PPDと言われていますので、それを上回る数値です。ディスプレイの種類はマイクロOLEDで、価格重視の液晶ではなく、解像度が高く発色の良いものを採用しています。また「マイクロレンズアレイ技術」と「輝度補正」を組み合わせることで、映像がより美しくなるとしています。

ゆりいか:外観的には、ガラスが使われているフロント部分の見た目がVision Proを意識している感じがしますよね。

すんくぼ:そうですね。Vision Proがガラスを使ってきた部分に近い質感があって、高級感はありつつ、重さの問題が指摘されたVision Proを踏まえてどう設計するか気になります。チップについては、フラッグシップのSoC(スマートフォンやヘッドセットを動かす主要チップ)と、Pico独自設計の「Picoシリコン」の2枚構成になっています。GDCのPicoの講演でも「Picoシリコン」という言葉を強調していました。

ゆりいか:AppleがMacで採用している「Appleシリコン」を想起させる名称ですね。

すんくぼ:まさにそうで、2チップ構成という方式もVision Proと同じです。Vision Proは映像処理用のチップと、センサーやカメラ情報を処理する専用チップ「R1」を組み合わせています。Picoのプロジェクトスワンも同様の構造です。これにより処理を効率化し、レイテンシ(遅延)を12ミリ秒に抑えると発表しています。

新OS「PICO OS 6」と空間コンピューティング機能

すんくぼ:次にOS面を見ていくと、今回「PICO Spatial Engine」という機能が搭載されています。レンダリング処理(映像を生成する処理)をOS側でまとめて行う仕組みで、3DコンテンツとアプリなどのウィンドウをOSレベルで統合して動かせるようになります。テスト動画ではゲームを表示しながらスケジュール帳を開いたり、動画を見ながら別のゲームをしたりする様子が紹介されていました。


ゆりいか:「空間マルチタスク」と呼んでいましたね。PCのデスクトップが3次元化したようなイメージで、これまたVision Proに近い使い方です。

すんくぼ:これまでのPicoデバイスでは、ウィンドウを複数並べて使うといった使い方はできていませんでした。空間コンピューティングを実現するには、ヘッドセットのカメラ越しに現実世界を映し出す「ビデオパススルー(パススルーAR)」の品質も重要です。例えば、机の前でウィンドウを開いてコーヒーを取りに席を立って戻ってきても、ウィンドウが同じ位置に固定されて残っているような体験が必要で、遅延なく現実空間を高品質に映せることが前提になります。PICO OS 6ではこれらの機能がまとめて搭載されます。

ゆりいか:もう一つ面白かったのが「Cloud Crystal」というUI言語ですね。周囲の環境光に合わせてリアルタイムで文字の太さが変わったり、バーチャルの要素が現実に自然に溶け込むようなUI設計になっているとのこと。AppleのiOSが採用した「リキッドデザイン」にも通じる考え方を感じました。

すんくぼ:そうですね。さらに音声・アイトラッキング(視線検出)・ハンドトラッキング(手の動き検出)といった複数の操作方法をまとめた「マルチモーダルインタラクション」にも対応しています。前作のPico 4 Ultraがコントローラー操作を前提としたVRゲーム機的な位置づけだったのと比べると、だいぶ方向性が変わります。

ゆりいか:VRゲームも引き続き遊べると公式は言っていますが、今後新たに出てくるアプリの傾向は変わりそうですね。

すんくぼ:ええ。まだデバイスの全体像は不明ですし、バッテリーの形状などもわかっていません。Vision Proはバッテリーが有線の外付けでしたが、プロジェクトスワンがどんな形になるかはまだ未知数です。コンテンツについては、OpenXRという共通規格やUnreal Engineへの対応、通常の2Dアプリも動かせることなどを開発者に向けて呼びかけている段階で、まずは旗を上げてコンテンツが揃っていく流れを目指しているのかなという印象です。

VRヘッドセット市場の「2つの系譜」

ゆりいか:そもそもこのプロジェクトスワン、VR業界の文脈でどう位置づけられますか?

すんくぼ:これを読み解くにはVRヘッドセット市場の変遷を振り返る必要があります。実はVRヘッドセットには「プレミアム路線」と「カジュアル路線」という2つの系譜があるんです。まず市場が始まった2016年はプレミアム路線からでした。PSVR、HTC Viveなど当時のヘッドセットはすべてゲーミングPCへの有線接続が必要で、30万円超のPCに加えて10万円以上のヘッドセットを買う必要がありました。コアゲーマー向けの高没入VRゲームというコンセプトです。

ゆりいか:VRを体験するだけでも、とんでもないハードルの高さでしたよね。

すんくぼ:次に2018〜19年ごろ、PC不要で単体動作するMeta Quest(当時はOculus)が399ドルで登場し、一体型VRの時代が始まりました。2020〜21年にはQuest 2が2〜4万円台で日本でも販売され、特にアメリカでバカ売れしました。その結果、メインユーザー層が大人からティーンエイジャーに移行しました。ちょうどそこに『Gorilla Tag』が登場し、無料で激しく動けるゲームとして北米の若いユーザーに爆発的に広まりました。VRChatもQuest経由でユーザーが増え、若年層のソーシャルVRが広がっていったのもこの時期です。こうして「カジュアル路線」が市場の主流になったわけです。

ゆりいか:そしてプレミアム路線が再び注目されたのが2024年、Apple Vision Proの登場ですね。

すんくぼ:そうです。大画面での映像視聴や、Macとの連携による拡張ディスプレイ用途など、プレミアムデバイスとして一定の役割を担っています。カジュアル市場の中でも確かな一分野として存在していると言えます。

今回のプロジェクトスワンは、Pico 4 Ultraがカジュアル路線だったとすれば、明らかにプレミアム路線の製品です。MetaもPhoenixと呼ばれる次世代デバイスを2027年目標で開発しており、こちらも「Quest 4」とは呼ばれていない、つまりカジュアル路線とは別の製品と見られています。Phoenixは超小型軽量のヘッドセットに有線接続でコンピューティングパックを繋ぐ構成と噂されており、プロジェクトスワンと方向性が重なる部分があります。

次にやってくるのは「メインストリームアダルト層」?

すんくぼ:ちょうどGDCで、Oculus時代からMetaにいるクリス・プルエット氏が「State of VR」という講演を行っていました。今後のVR市場について、次にやってくるユーザー層として「メインストリームアダルト層」を挙げていました。


ゆりいか:講演資料に疲れ果てたおじさんが座っているイラストが使われていましたよね(笑)。

すんくぼ:そうなんですよ。具体的には35歳から45歳の男性で、結婚して子供もいて、ある程度の収入がある層として描かれていました。この層の特徴として挙げていたのが、VRで激しい動きはしないということです。Beat SaberやGorilla Tagのような体を使うゲームよりも、大画面での映像視聴がメインになるだろうと。映画やスポーツ観戦ですね。アメリカではテレビが4Kのまま大型化する傾向にある中、家族と視聴を合わせなくて済む1人用デバイスとしての需要があると言っていました。ゲームについても超ハードコアではなく、パズルゲームやターン制RPGなどを穏やかに遊ぶミッドコア層で、有料タイトルを積極的に買う傾向があると。

ゆりいか:分かりやすいですね。

すんくぼ:Quest 3のユーザーの半数以上が毎日ハンドトラッキングを使っているというデータを示していました。コントローラーなしでの操作が定着しつつあるということです。まさにプロジェクトスワンが強調しているハンドトラッキングの方向性とも一致しています。

2026〜27年はプレミアム路線の年になるか

ゆりいか:2026〜27年にかけて、プレミアム路線のヘッドセットが相次いで登場することになりそうですね。

すんくぼ:そうです。ただ正直なところ、そのマーケットがどこまで広がるかは未知数です。Apple Vision Proが大ヒットしているようには見えないですし、Galaxy XRも伸び悩んでいる印象があります。Quest 2が登場してGorilla Tagが出てきた時のように全く新しいユーザー層が爆発的に増えるかどうかは、まだ蓋を開けてみないとわからないですね。

ゆりいか:日本円で20〜30万円ぐらいの価格帯になるとしたら、高級プロジェクターやホームシアター機器の代替として検討する人はいるかもしれません。ただ、35〜45歳でも余裕のない人は多いですし、日本だと円安でさらに高くなる問題もあります。

すんくぼ:ゲーミングPCも値上がりしていますし、半導体やメモリのコスト上昇が製品価格に影響している部分もあるかもしれません。プレミアム路線のデバイスが相次いで登場することで、VRハードウェアとしては盛り上がると思います。ただ価格が発表された瞬間に「これは自分向けではない」となる人も多いでしょう。プロジェクトスワンがPico 4 Ultraと同じ10万円前後で出てくることはまずないと思います。

ゆりいか:カジュアル向けかプレミアム向けかという軸は、改めて読者の皆さんにも整理してお伝えできると面白そうですね。デバイスごとに体験できることが違いますし、有線・無線の違い含めレビューも大事になってきますね。

すんくぼ:そうですね。実際に触って確かめていくしかない部分も多いと思います。プロジェクトスワンの発売は2026年中とされていますので、引き続き情報をお届けしていければと思います。

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