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セミナー 2021.05.05

世界はXRによりニューノーマルから「ネクストノーマル」へ変化する

2020年12月8日から10日の3日間にわたって開催された、国内最大級のVR/AR/MRカンファレンス「XR Kaigi 2020」。期間中に行われた50以上のセッションの中から、あらためて振り返っておきたいセッションをMogura VR編集部がピックアップ。今回はHTCのセッション「Enabling What’s NeXt」のレポートです(※記事内に登場する各種データはXR Kaigi 2020開催当時のもの)。

登壇者はHTC上級副社長で、グローバル製品・戦略を担当しているレイモンド・パオ(Raymond Pao)氏。セッションでは現在を「ニューノーマル」、XRによって実現する未来を「ネクストノーマル」と定義し、VIVEのハードウェアおよびサービスについての紹介やユースケースを披露しました。

XRで「ニューノーマル」から「ネクストノーマル」へ

レイモンド氏は冒頭、人々が大きな変革に直面する中で、HTCの技術を生かして社会の問題を解決するという強い想いを持っていると切り出します。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響から、MicrosoftやTwitter、Facebookといった巨大IT企業が従業員たちに永続的なリモートワークを許可しているという話題に触れ、「世界はニューノーマル時代に突入したのです」と述べました。

日常生活への影響として、ショッピング、コンサート、美術館、展示会といったイベントがオンライン化しているものの、まだリアルなものと比べると没入感が足りないと語るレイモンド氏。そこでXRテクノロジーにより3Dの空間的な経験に移行させることで「ニューノーマル」から「ネクストノーマル」へ進化をもたらすという考えを示しました。

セッションでは具体的にライフスタイルを変えるイベントとして、VR空間内で行われたコンサートやファッションショー、映画祭、さらに不思議の国のアリスの世界観を表現したコンテンツが紹介されました。

次にレイモンド氏は、教育分野について言及します。

パソコンの小さなウィンドウに写っている子供たちに向かって教師が授業を進めるような、現在のオンライン授業は十分でないと指摘。対面式の授業によってより良い経験が養えるという研究結果が多く発表されていることを理由に挙げながら、XRを取り入れた学習によって今までよりさらに効果的に学習できるとアピールしました。

ここでレイモンド氏は、チャイナ・モバイルと協力して教育現場に5G環境とVRデバイス、360度カメラを供給した事例を紹介。小さな町の学校でも都市の学校と同じ教育を提供することが可能となり、教育をさらに公平にすることができたと言います。

また、従来Webベースで行われていたトレーニングをVRで実施したインテルの事例も紹介。今まで多くの社員がパスしてきたトレーニングでしたが、VRトレーニングでは受講者の75%が完了するのに苦労したとのこと。これは知識はあっても経験が不足していること、あるいは適切な順序やプロセスについての深い理解が足りていないことが露見した例で、結果としてVRトレーニングが非常に有効だと認められたのだそうです。

VRトレーニングの効率を向上させる「VIVE Central Control Platform」

一方でレイモンド氏は、こうした事例における問題点として、体験前にマネージャーが数十台のデバイスの電源を入れてコンテンツを選定しなければならないことや、体験後にはデバイスが充電されていることを確認したり、トラブルシューティングのために時間が取られてしまうことに言及。「実際にはVRトレーニングの効率は十分には高くありません」と説明しました。そして紹介されたのが、VIVE Central Control Platform(以下、VCCP)です。

VCCPは、最大300台のVRデバイスをAndroid端末からコントロールできる機能や、クラウドベースのコンテンツ管理モジュールなどを有しています。教師側はデバイスのステータスや学生のディスプレイ画面を確認できたり、ガイダンスに従うように指示することができます。また、複数のVRデバイスを一度に管理できるという利便性から、トレーニング用途だけでなく、自動車販売や不動産販売といったショーケースにも非常に有効であるということも分かってきました。

これらのプラットフォームにおいて、VRトレーニングがすべての障壁や管理工数を最小限に抑え、ネクストノーマルな学習体験をもたらすとレイモンド氏は確信しているそうです。

リモートワークの課題を解決するXRソリューション「VIVE Sync」

ニューノーマルにおけるリモートワークの問題点としてレイモンド氏は、ディスコミュニケーションが増えて人々が疲れてしまうことに言及。XR技術により同じ空間にいることで、人々は同時に繋がっていることを感られるようになると説明します。

HTCが2020年7月に行った調査では、81%の人がビデオベースの会議やコラボレーションを不十分だと回答。一方で生産性という観点から評価すると、XRを用いた作業は現実の作業よりも少し落ちるかほぼ同等の結果を示しており、動画や音声だけの伝達手段よりもずっと高い水準を保っています。

またリモートワーカーの2/3が、自分はチームに携われていないのではないかと考えており、40%が「対面会議はチームとのより良い関係を築くのに役立つ」と回答しました。このように、在宅勤務ではコミュニケーションやリーダーシップを発揮する際に問題が頻出しています。HTCはアメリカと台湾にそれぞれチームがあり、チームをまとめるリーダー達はそうした問題をすべて体験しているそうです。

その解決策として作られたのが、法人向けの会議スペースシステムである「VIVE Sync」です。

VIVE Syncを使用する際の3つの方針は、「チームのためになること」「分かりやすいデザインであること」「解決策となること」であるとレイモンド氏は言います。

VIVE内部のチームでは当初、通常のビデオ会議を使用していましたが、使用するにつれて集中力が持続しないという問題点が浮上。そこで毎朝30分〜1時間の間、VIVE Syncを使用することにしました。参加者がお互いのアバターを視認し、握手やハイタッチといったノンバーバルコミュニケーションを行い、さらにプライベートチャット機能を利用することで、メンバーは本当にチームの一員だと実感できたとのことです。

また、VIVE Syncには共有スペース機能もあります。参加者は同じプレゼンテーションを見ることができるほか、書き残したメモやホワイトボードは部屋に保存しておき、後から誰かが同じ空間に戻ってきても確認することが可能です。

レイモンド氏が次に紹介したのは、「共にデザインする」というコンセプトを実現したVIVE Syncの機能。VR空間内にある小さなパッドを通じて、スクリーンショットの撮影やテキスト・音声の送信、レーザーポインターやペン、ペイントツールを使用できます。さらにWordやPowerpoint、Excel、PDFといった多くのファイルに対応しており、例えば3Dモデルに対してフィードバックを残すといった作業がリアルタイムに、より直感的に行えるようになると解説しました。

VIVE SyncはVIVE Pro、VIVE Pro Eye、VIVE Cosmos、初代VIVEに加え、スタンドアロン型のVIVE Focusなど、複数のVRヘッドセットで利用可能。また、外出や出張が多いユーザーも考慮し、PCからでもアクセスできるようになっています。

レイモンド氏は最後に、「XRは世界をニューノーマルからネクストノーマルに加速させることができると信じている。XRは人々が働き方、生き方、学び方、そして遊び方を変えるのに役立つだろう」と述べ、本セッションを締めくくりました。

XR Kaigi 2020のセッション動画をYouTubeで公開中

今回レポートしたセッションをはじめ、XR Kaigiの公式YouTubeチャンネルではセッション動画を多数公開しています。イベントに参加した人も未参加の人も、ぜひ一度チェックしてみてください。

(参考)XR Kaigi 公式YouTubeチャンネル


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