9月11日・12日、国内最大級のXRカンファレンス「XR Kaigi」の姉妹イベント「XR Kaigi Hub in 大阪」が開催された。本稿では、その中で行われた、宮浦恭弘氏によるセッション「XR開発の今 多様化するデバイスと技術の選択肢」 の模様をレポートする。
話者紹介:宮浦恭弘氏
大阪駆動開発コミュニティにてXR系の技術リードを担当。Microsoft MVP for M365 (2018-2026) であり、以前はMRカテゴリでも受賞歴を持つ。XRは趣味で、HoloLensの日本販売開始以来、XR系技術に取り組んでいる。
進化するXRと多様化する開発
近年、Apple Vision ProやMeta Quest 3など、新たなXRデバイスが次々と登場し、その進化は著しい。宮浦氏は、この進化に伴い開発の選択肢も多様化し「すごくカオスなんだけど、様々な広がりを見せる」 状況にあると語る。
このような状況は、開発における問いを変化させている。かつてHoloLensなどが登場した頃は、「それをXRでやる必要があるのか」 という問いが中心だった。体験そのものの価値を問い、本当にXRであるべきかを突き詰めることが重要とされていたのである。
しかし、デバイスの進化が著しい現在、この問いに加えて「どのXRデバイスでやる必要があるのか?」 という新たな問いが生まれていると宮浦氏は指摘する。各社がユーザー体験を上げるために模索するなか、UXに関する考え方や機能がデバイスごとに異なってきているのだ。
XRコンテンツ開発、3つの方向性
多様化するデバイスと技術の中で、宮浦氏はXRコンテンツの開発アプローチを3つのパターンに分類できると述べる。
第一に「デバイスの性能をフルに生かしたコンテンツ開発」 である。これは、Apple Vision Proのような特定のデバイスが持つUXや機能を重視し、その性能を最大限に引き出す開発スタイルだ。宮浦氏は「汎用的な手法でマルチデバイス的な対応をするより、ある程度のデバイスをフル活用する方針でコンテンツを作っていくスタイルが多くなってきている印象があります」 と述べ、近年の主流になりつつあるアプローチだと分析する。
第二に「デバイスの横展開を想定したコンテンツ開発」 だ。デバイス固有のフル機能は使わないもののコストパフォーマンスを重視し、複数のデバイスでの展開を視野に入れた開発手法である。特定のデバイスに依存することが難しい業務要件などがある場合に有効な選択肢となる。
第三が「幅広いデバイスで体験できるコンテンツ開発」 。これは広告などで見られるARのように、より多くの人に手軽に体験してもらうことを目的とする。この場合、インストール不要で体験できるWebXR技術(8thwall, Babylon.jsなど)や、ローコード、ノーコードのツールが活用される。
宮浦氏は「どれが優れているといったことではなく、実現したいことを吟味した上で要件整理して、最適なデバイスで開発するところが非常に重要になる」 と語った。
XR開発を支える技術要素
これらの開発アプローチを支える技術要素として、宮浦氏はいくつか例を挙げる。中心となるのが、業界の標準規格である「OpenXR」だ。これは、異なるベンダーのデバイスでも共通して利用できる機能(ヘッドセットの向きやハンドトラッキングなど)を定めた規格であり、開発の移植性や効率性を高める役割を担う。
しかし、OpenXRだけでは各デバイス固有の高度な機能、例えばMeta Questの空間認識機能などはカバーできない。そうした独自機能を実現するために、各ベンダーが提供するのが「デバイスSDK」である。多くのデバイス開発は、このOpenXRとデバイスSDKを組み合わせて行われる。
さらに、宮浦氏はUI/UXの標準的な指針を提供する選択肢として「Mixed Reality Toolkit(MRTK)」を紹介した。これは元々Microsoftが提供していたもので、現在はMicrosoft、Qualcomm、Magic Leapの3社によるOSSプロジェクトとなっている。HoloLensのUI設計がベースになっており、OpenXRに対応したUIコンポーネントを提供することで、デバイス間で一定のUI/UXを保ちたい場合に有効な選択肢となり得る。
主要4デバイスの開発スタイル
セッションでは、代表的な4つのデバイス(プラットフォーム)を例に、それぞれの開発スタイルの違いが解説された。
Apple Vision Pro
OpenXRには準拠しておらず、Apple独自の仕組みで動作する。開発手法は、自由なUI表現が可能なUnity を用いる方法と、XcodeでSwiftUIなどを利用する方法の2つがある。特にXcodeでの開発は、コードを1行書くだけでVision Proに最適化されたデザインのUIが追加されるなど、AppleがUXをいかに重視しているかがうかがえる。宮浦氏は「Vision Proに特化したコンテンツを作るというスタイルが主流になってる」 と分析する。
Meta Quest 3
OpenXRに準拠しているデバイス。パススルーや空間認識など、OpenXRでカバーできない機能はMeta XR SDKを利用して開発する。MetaのOSであるHorizon OSのデザインに基づいたUIコンポーネントがSDK内で提供されており、Questシリーズらしいコンテンツ開発が可能となっている。
Android XR
こちらもOpenXRに準拠。Unityでの開発に加え、Vision ProのSwiftUIに近い開発体験を提供する「Jetpack XR SDK」を用いた手法がある。OpenXRで不足する機能はAndroid XRの拡張機能として提供される。デバイスはまだリリースされていないが、SDKとシミュレーターで開発を試すことができる。
Snapdragon Spaces
Qualcommが提供するXR開発プラットフォーム。NTT QONOQの「MİRZA」やソニーの「SRH-S1」など、複数のデバイスがこのプラットフォームを採用している。各デバイスはOpenXRに準拠しつつ、Snapdragon Spacesプラットフォームによって機能が拡張される形だ。これにより、対応デバイス間での横展開が容易になっている。
最適な技術選択が成功の鍵
宮浦氏は、こうした現状を踏まえ、「実現したいことを吟味した要件整理 & 最適なデバイスと開発手段の選定が重要」 だと結論付けた。
例えば、「Vision Proで最高のUXを実現したい」 のであれば、デバイスの性能をフルに使う特化型のアプローチが適している。一方で、「複数のタイプのデバイスへの展開も想定」 し、コストを重視するならOpenXRをベースとした開発が良いだろう。さらに、「イベント参加者に気軽にAR体験できる環境を提供したい」 のであれば、WebXRによるインストール不要の体験が選択肢となる。
最後に宮浦氏は、業界の変化の速さを示す例として、Snapdragon SpacesがAndroid XRとの互換性プラグインのリリースを予定していることに触れた。これにより、既存のSnapdragon Spaces向けアプリをAndroid XRへ移行しやすくなる。宮浦氏は「(開発の最適解を探るために)本当に情報は色々抑えていかないといけませんね」 と述べ、継続的な情報収集の必要性を訴え、講演を締めくくった。
国内最大級のカンファレンス 「XR Kaigi 2025」が東京で開催!
年間の締めくくりとして、国内最大級のカンファレンス「XR Kaigi 2025」が東京ポートシティ竹芝で開催されます。バーチャル領域の担い手がノウハウや技術をシェアし、繋がり、高め合うことを目的とした本イベントに、ぜひご期待ください。
イベント名: XR Kaigi 2025
開催日程: 2025年12月1日(月)~3日(水)
会場: 東京ポートシティ竹芝(ポートホール・東京都立産業貿易センター浜松町館)
公式サイト: https://www.xrkaigi.com/
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