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医療・福祉 2019.01.07

精神病院で職員が入院患者の視点を体験 VRトレーニングがカナダで導入

カナダのオンタリオ州で営業しているSt. Joseph’s Healthcare Hamilton精神病院がVRを活用した職員のトレーニングを開始しました。VRトレーニングは、受講者が病院の入院患者となり、病棟での生活を体験するという内容です。VRトレーニングの受講による、職員と、実際の入院患者の関係性の改善が期待されています。

今回のVRトレーニングで使用されるシミュレーションは、St. Joseph’s Healthcare Hamilton精神病院に勤める、Gary Chaimowitz博士の主導によって企画されました。Chaimowitz博士は、マックマクスター大学の教授職も兼任しています。 VRトレーニングソフトウェアの制作は、オタワに拠点を構えるVR/ARコンテンツ開発企業SimWareが担当。

SimWareのスタッフは、VRトレーニングの開発のため実際の隔離室を撮影しました。撮影された写真を、資料として使用したとのことです。

リアルすぎる体験

VRトレーニングは、2種類のシミュレーションで構成されます。1つ目のシミュレーションでは、受講者は、窓とトイレが存在しない隔離室に入院患者として収容されます。体験者は、隔離室の外を巡回する職員に対して、トイレに行きたい旨を伝えなければいけません。

VRトレーニングの受講者の呼びかけに対して、シミュレーション内の職員は10通りの対応をするようにプログラムされています。「わかった、そのうち連れていくよ」、「ちょっと待ってくれ。今は忙しいんだ」などです。職員が受講者の呼びかけを完全に無視し笑い出すという対応も、稀に発生するように設定されています。

2つ目のシミュレーションは、薄暗い監房が舞台です。シミュレーション内容の詳細は公表されていません。

先行してVRトレーニングを受けたSt. Joseph’s Healthcare精神病院の職員のうち数名は、シミュレーションの最中、強い不快感を感じVRトレーニングを中断しました。隔離室の圧迫感に加えて、人間的な扱いを受けなかった(と感じた)ことが、職員たちがVRトレーニングを続けられなかった理由であるとのことです。

企画者の狙い

Chaimowitz博士は今回のVRトレーニングについて「私たちは(隔離室の)扉の向こう側にいるということが、どういった体験か(職員に)知ってほしいと考えました」とコメントしました。

Chaimowitz博士は、また「私たちは受講者がVRトレーニングを開始してから、不快感を感じるまでの時間を計測しています」「私たちは(隔離室)内部を体験させることで、職員たちの感性を刺激しようと試みています。この経験が、職員たちの入院患者に対する見方を変えることを期待しています」と、説明を付け加えました。

VRトレーニングの採用例は増加傾向

VRトレーニングの採用例は、世界各地で増加しています。2017年にはアメリカの大手小売店ウォルマートが、従業員向けのOculus Rift(2018年からOculus Goも導入)を使用した接客トレーニングをスタートしました。2018年12月には、アメリカの大手携帯電話事業者Verizon Wirelessが、強盗対策のための従業員向けVRトレーニングを採用しました。

(参考)VRScout

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