多くの企業では今、「ソフトスキル」の重要性に気づき始めています。これは、周囲と効果的なコミュニケーションを取るために必要な能力です。このソフトスキルを、VRを活用して向上させるトレーニングプラットフォームが制作されました。従業員がバーチャル空間で様々な立場を体験し、相手への共感を深め、ソフトスキルを高めます。
VRによる学習の効果とは
VRを使うと、ユーザーは誰の姿でも借りることができます。またバーチャル空間では、考えうるありとあらゆるシチュエーションに参加することも可能です。これを「virtual embodiment(バーチャルな具体化)」と呼びます。virtual embodimentによって、暗黙的学習の効果を高められます。何かになりきるのが容易になり、定着しやすく、学習者の行動をより根本から変えられるということです。
またバルセロナ大学等の研究では、VRで他人の立場を体験することで、隠れた差別意識を低減したり、ドメスティックバイオレンスを減らす、といった効果があると結論付けています。
様々な立場で迅速な判断を
トレーニングプラットフォーム「BODYSWAPS」を開発したのは、制作スタジオのSomewhere Else。AIとVRを用いたコンテンツです。第一作として、人材コンサルティングのCorporate DNA Consultingとパフォーマンスマネジメント「David’ Project」を制作しました。
BODYSWAPSではバーチャルの人を相手に、従業員が様々な立場を体験できます。例えば部下にネガティブなフィードバックを行うマネージャー、取締役会にアイディアを提案するCEO、男性ばかりのグループミーティングに参加する若い女性、等々のシナリオです。
ユーザーはバーチャルな身体を持ち、自身の声やボディーランゲージを使って操作します。二択ではなく多くのニュアンスが用意され、ユーザーに迅速な判断を促す点が特長です。どのような行動を取るべきかというプレッシャーは、非常にリアルだといいます。
相手の立場で同じシナリオを繰り返し
またコンテンツの最後には、「BODYSWAPS(身体の交換)」というタイトルが示す通り、自身がやり取りした相手の視点で全く同じシナリオを体験できます。
「このアプローチ方法は、他者への共感と自己認識を醸成します」とSomewhere ElseのChristophe Mallet氏は説明しています。そしてこれらは、人の行動を変える最も強力な原動力の一部に挙げられるということです。自身がちょうどやり取りしたばかりの立場を体験する-これによって、通常では難しい相手への共感が生まれます。
Mallet氏はこの結果、BODYSWAPSを体験した人の行動が変わり、表現などを少し変えるだけで、同じメッセージでも伝わり方が違うことを理解すると信じています。これこそが、「ソフトスキル」です。
他者理解を深める他の例
同じようにVRを使い、コミュニケーション力などのソフトスキルを高めるツールとしては、Talespin社の対人スキル研修があります。
また他者の立場を体験し、理解や共感を深めるコンテンツも多数制作されています。
(参考)VRScout
Mogura VRはVRScoutのパートナーメディアです。