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VRChat 2025.03.13

サンリオがリアルとバーチャルを接続 サンリオVfesのリアルイベントでVTuberキヌによるクリエイターズトークが公開【現地レポ】

2021年の初開催以来、年々規模を拡大している「Sanrio Virtual Festival(サンリオVfes)」。

アーティスト&クリエイターによる音楽ライブとパフォーマンスを見られるほか、期間中はサンリオおなじみのキャラクターたちが登場するパレードも開催。ゲームワールドやイベントも楽しめるVRテーマパークです。

これまではVRChat上で開催されてきたサンリオVfesですが、2月22日にリアルイベントを実施。株式会社ClaN Entertainmentと株式会社サンリオが共同運営するVTuberプロジェクト「にゃんたじあ!」と合同で、「Sanrio Virtual Festival 2025 :Real / にゃんたじあ!〜マホウのステージにゃまステ〜」を2月22日に開催しました。

本記事ではその前半パート、「Sanrio Virtual Festival 2025 :Real」の様子をレポートします。ちなみに、イベントは昼と夜の2部制となっており、どちらも出演者は同じですが、内容に一部違いがあったようです(※本記事で取り扱うのは夜の第2部)。

サンリオVフェスショーの裏話や貴重な資料が公開

前半の「Sanrio Virtual Festival 2025 :Real」パートでは、サンリオVfesでエグゼクティブプロデューサーを務める町田雄史さんが壇上に登場。

そして、同イベントでショーを手掛けているクリエイターの1人であり、バーチャルYouTuberとしても活動するキヌさんがスクリーン上に現れます。

キヌさんは、サンリオが新たに立ち上げたクリエイター支援プロジェクト「Nakayoku Creators」に選出された1人目のクリエイターでもあります。

Nakayoku Creatorsは、作品の独自性や世界観が確立されているクリエイターを対象とし、かつサンリオの企業理念「みんななかよく」とマッチする人をサポートするプロジェクト。町田さんは「魂をかけて殴りかかってくるようなメッセージ性を持つ作品性」がキヌさんの魅力だと紹介していました。

そんなキヌさんが監督を務めている作品の1つが、昨年夏のサンリオVfesで初公開された「Musical Treasure Hunt—Spectral Remix」。第2部ではこのパレードの上映が行われ、キヌさんによる解説と制作秘話、そして「にゃんたじあ!」の若魔雲ふわりさんの興奮気味なリアクションを楽しめました。

上映後に改めて感想を求められて、「やっぱり何度見ても『私は音楽が大好きだな』って思います」と語ったキヌさん。続けて「そう思えるのは、良いものを作れたからなんじゃないかな、って思います」とも話していました。

さらに裏話として、今回のパレード制作の際に作られた資料の一部を公開。あのパレードがどのように作られているのか、その一端を垣間見ることのできる資料が突如としてスクリーンに映し出されたことで、目を凝らして読もうとする人も少なくなかった様子。



キヌさんが少しだけ解説してくださった話によると、メロディや音の同期、展開や脚本など、非常に多くの要素が絡み合っているパレードの制作にあたっては、このような表が欠かせなかったそう。

「音」を奏でる生物たちにも関しても、どのような音が必要か、その音からどのような特徴の生物を作るか、作ってもらった生物に実際に音を付けたらどうなるか――といったことを、制作チームのメンバーとすり合わせながら形にしていったそうです。

続いて、サイコロを使ったトークコーナー。町田さんがサイコロを投げ、出た目に設定されているテーマについて、キヌさんにお話をうかがいます。

サイコロが導き出した1つ目のトークテーマは、「みんなの知らない話」。そこでキヌさんから明かされたのは、今回のパレードの「楽曲」の作り方についてのお話でした。

そもそも今回の「Musical Treasure Hunt—Spectral Remix」は、2023年に初上演されたパレード「Musical Treasure Hunt」の後日談。通常のパレードではポップで楽しい楽曲が採用されることが多いのですが、Spectral Remixは「少し先のお話」ということで、意識的にちょっと大人びたコード進行にしているそうです。

2つ目のテーマは、「〇〇な話」。

もともとはソフトシンセサイザーばかりを使う“過激派”だったキヌさんですが、今回のパレードでも一緒に制作をしている0b4k3さんがシンセサイザーをたくさん買っているのを見て、ついにアナログシンセを買ってしまった、とのこと。

「がらっと意識も変わったことで、ここから先、またいろいろなものを作ってみたいと思っています――という、“My new Gear…”な話でした」とまとめていました。

最後のテーマは、「今日の当たり目」。来場者から質問を募り、質問してくれた人にはプレゼントが贈られます。挙手をしたお客さんから投げかけられた質問は、ずばり「パレードに出てくる“精霊さん”の名前」。これは、パレードを見て気になっていた人も多いのではないでしょうか。

回答した町田さんによれば、意外にも「決まっていません」とのこと。打ち合わせの中でもいろいろな呼び名があり、「ノイズミュージックさん」と呼ぶ人もいれば、「精霊さん」と呼んでいる人もいるそうです。それと会場の笑い声で聞き取れなかったのですが、「ムキムキの〜」という単語もボソッと聞こえたような……?

貴重な資料と裏話も飛び出したSanrio Virtual Festivalパートは、これにて終了。

最後にふわりさんから、「私自身もサンリオVfesに立つことが夢です! いつかキヌさんにプロデュースとかしてもらえたら嬉しいなあ……なんて! 今まで以上にファンになったので、この機会を大切に、『みんななかよく』の精神でこれからも活動をがんばっていきたいと思います!」と抱負を語る一幕も。

クリエイター目線のお話をたくさん聞けて、自分でも何かを作りたくなった人、ふわりさんのように活動のモチベーションを高めるきっかけになった人も、きっと多かったのではないでしょうか。

(※第2部は「Musical Treasure Hunt—Spectral Remix」がテーマでしたが、第1部では「Nakayoku Connect」の上映と解説が行われていたようです)


オンラインで楽しんできたサンリオのバーチャル施策が、「リアル」へと一歩踏み出した日

今回、サンリオVfesとにゃんたじあ!の合同で行われた、リアルイベント。ファン層に若干の違いはあったのかもしれませんが、蓋を開けてみれば、どちらか一方しか知らない人でも楽しめるイベントだったように思います。

サンリオVfesのファンにとっては、裏話だけでなく資料まで見ることのできる貴重な機会となり、にゃんたじあ!ファンにとっては、言うまでもなく待望のリアルイベント。ファン同士で交流する「名刺交換会」などの企画も用意されていました。

また、サンリオVfesパートでは、一緒にパレード映像を見ることで、にゃんたじあ!メンバーのリアクションを見ることができましたし、にゃんたじあ!パートでも、とっつきやすいゲームやクイズがコーナーとして用意されていたため、メンバーのことをよく知らない人も楽しめたのではないでしょうか。


一見すると直接的には関係のないように見える両者ですが、「にゃんたじあ!」はそもそも、発足当時から「サンリオVfesに出演する」ことを目標のひとつとして掲げていたVTuberプロジェクトです。

過去のサンリオVfesではCMを流していましたが、今回は公式アンバサダーを務めており、エントランスワールドに特設ブースも登場。期間中はメンバーがサンリオVfesの会場に遊びに行く配信をしていたほか、「サンリオVfes広報局!!」やバーチャルグリーティングにも出演しています。

ふわりさんも「サンリオVfesに立つことが夢」だと話されていましたが、アーティストとしてステージに立つ夢が実現する日も遠くはないのかもしれません。

一方のサンリオVfesについて言えば、以前から「バーチャルとリアルをどう繋げていくか」というテーマが制作陣から語られていました。VRのパーティクルライブを見たことで現実のピューロランドのショーにファイバーライトが導入されたり、バーチャルとリアルで同時にショーをスタートさせ、演出を連動させたり。すっかり定番になりつつあるバーチャルパレードが、ピューロランドのショーの流れを汲んでいるのは言うまでもありません。

「サンリオが掲げる『みんななかよく』というメッセージを、リアルでもバーチャルでも届けていきたい」という思いがあります。
サンリオピューロランドの新たなレギュラーショーは、間違いなく記憶に残るバーチャル体験となる – MoguLive

「バーチャル」ってリアルの代替的なイメージがいまだにあるように感じているのですが、でも実はそうじゃない。リアルとはまた違った体験価値を生み出せるエンタメだと僕自身は感じていて、「その魅力をどうやって伝えたらいいんだろう」「リアルとバーチャルの境界線をなくしていくために何ができるだろう」と考えていました。
「好き」を見つけられるフェスにしたい――「SANRIO Virtual Festival 2023」制作陣インタビュー – MoguLive

そのような点を考慮すると、これまで一貫して「リアルとバーチャルを繋げる」べくさまざまな施策を展開してきたサンリオVfesが、リアルとバーチャルを越境する力を持つ「VTuber」である、にゃんたじあ!の力を借りることで、共にリアルイベントを開催することができた――と、そのように捉えることもできるのかもしれません。

どちらもオンラインの「バーチャル」から始まったプロジェクトである、「サンリオVfes」と「にゃんたじあ!」。今回はイベントホールでのトークイベントとして開催されましたが、もしかしたら今後、現実世界のピューロランドでイベントを行う日が来る――なんてこともあるのかもしれません。

共に「リアル」へと足を踏み出した2つのプロジェクトの、今後の展開にも注目です。

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