Intel(インテル)は、米ロサンゼルスにボリューメトリックキャプチャ(※)のスタジオを擁しており、ミュージシャンやアスリートのVR/AR向け映像などの撮影に利用しています。本記事では、米メディアVarietyによる取材の要約を紹介します。
(※ボリューメトリックキャプチャ……人物等の立体的な情報を取得しそのまま3DCG化する技術)
100台以上のカメラを使用
Intel Studiosの設立は2018年初頭。ドーム状のスタジオには1万平方フィート(約930平方メートル)のステージを備え、床からドームの天井まで取り付けられた100台以上の8Kカメラを撮影に使用します。
各カメラはスタジオ内の別の場所にあるサーバーと光ケーブルで接続され、1分当たり1テラバイトの速度でデータ転送を行います。処理するデータ量が膨大になるため、スタジオでの録音に影響しないよう別室を設けることになったとのこと。
またドームの天井には円状に多数の照明が並び、撮影対象が常に明るく照らされるようになっています。照明の間にはいくつかのキューブが吊るされ、撮影に際しカメラを調整。スタジオの外には多数のスクリーンの並ぶ管理室が設けられ、撮影した動画を様々な角度から確認します。
次世代のデバイスにも対応
Intel StudiosのディレクターDiego Prilusky氏は、インテルにとって同スタジオは長期的な投資だと説明します。スタジオの建設を開始した2016年当時、AR/VR産業で主力と見られていたのは、次世代のエンターテイメントとしてのVRでした。しかし2019年現在では、モバイルベースのARがより盛り上がりを見せています。Prilusky氏はこのトレンドを認めつつも、「スタジオにとって、大きな影響はない」としています。
スタジオでは撮影に際し、どのようなメディアでも視聴可能なコンテンツを目指しています。ARアプリ、VRヘッドセット、そして将来新たに登場するデバイス、といったあらゆるメディアに向けているということです。
「我々は、デバイスに配信できる以上のコンテンツを制作しています」とPrilusky氏は説明しています。撮影されたコンテンツは様々なメディアに対応するだけでなく、次世代のデバイスも見すえ、オリジナルの高い解像度データも保持されています。
他社を圧倒するスタジオ規模
このようなボリューメトリック(Volumetric)撮影環境を持つのはインテルだけではありません。例えばマイクロソフトも独自の実写立体動画撮影スタジオを有し、他者に技術ライセンシングを行っています。また、Veriozon Mediaなども自前のボリューメトリックキャプチャ用のスタジオを持っています。しかしいずれもインテルほどの規模のスタジオではなく、多くの場合一度に1人しか撮影できません。
インテルは、ミュージカル映画のリメイク “Grease”の撮影では20名、また別のVRミュージックビデオ“Runnin”の撮影ではおよそ12名の演者を撮影しました。このことからも、他社のスタジオとの規模の違いがよくわかります。
Prilusky氏はスタジオの使命について、営利目的の側面があることも認めつつ、「目標はXRコンテンツ撮影のホーム(となること)です」と語りました。
ボリューメトリック技術についてはこちらの記事でも取り上げています。
(参考)Variety