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AR/MR 2018.11.28

見るだけで敵と味方を判別 英海軍、戦闘システムにARを導入へ

英海軍が、ARを使ったUI(ユーザーインターフェース)の導入を進めていることが明らかになりました。ロンドンで行われたプレス発表で、航空宇宙系の防衛やセキュリティを専門とする企業BAE Sysytemsが、英軍艦へARシステムを提供することを発表しました。

このシステムは、レーダーやソナーによる重要な情報を管理するブリッジでの監視官の業務を効率化できることに加え、主要かつ戦術的な情報を全乗組員間へ迅速かつ効率的な伝達が可能になるとのことです。さらに、AI(人工知能)によってAR体験が向上するシステムとなるようです。

HoloLensを採用

BAEの海軍戦闘システム技術部門長を努めるフランク・コットン氏は、ブリッジでの監視役は常に負担の大きな業務になっていることを指摘しています。ARを使えば、視界に移る情報をつなぎ合わせデジタルレイアウトを作成することでナビゲーションが容易になり、オペレーションの効率化が可能とのことです。Cotton氏は、今後ブリッジの監視官はヘッドセットを付けるのではなく、軽量なAR眼鏡をかけるようになるとコメントしています。

今回英海軍が導入を計画するAR技術は、BAEの「Striler 2 pilot’s helmet」と呼ばれるシステムの改良版になるようです。「Striler 2 pilot’s helmet」は、装着したヘルメット前方にあるディスプレイに、現実世界の環境とデジタル情報が映し出されます。これによりパイロットは、近くにいる戦闘機を敵か味方かの判断が可能で、さらに数秒から数分で正確なストライクゾーンを計算することができます。

英海軍では、ヘルメットではなく、より軽量な簡単に着脱できるARデバイスとして、マイクロソフトの「HoloLens」も使用する予定です。

先進的なシステム

ARシステムを使用すれば、ARで映し出される様々な情報をもとに重要な決断を行うことができ、船員への確認作業も効率化できるようになると期待されます。

たとえば、HoloLensを装着したブリッジ監視官は、遠方にある障害物を見つけることができる上に、AIでの分析データを取得することも可能です。監視官が見えているものと適切に照合していない場合は、情報の変更が可能で、軍艦に危険を与える疑いがある障害物を発見したら、他の人に知らせることなく直接フラグを立てることができます。

BAEの公表したコンセプト写真をみると、デジタル情報が空間一体に映し出されており、まるでハリウッドのSF映画のようなUIになるのではないかと推測されています。

一方で、BAEのARシステム導入にはハードルもいくつか存在しています。そのひとつとして、海面の光沢がHoloLensを通してディスプレイ表示することが難しいとされていますが、BAEの開発は日々進んでおり、問題が解決する日もそう遠くはないといわれています。

コットンn氏によると、英海軍の軍事活動を強化するために、ARやAIテクノロジーのほかにもVRやタッチコントロール、ジェスチャーコントロール、音声認識などの技術の中からいくつかは導入が検討されていくことを言及しています。

2019年導入予定

今回英海軍が導入予定のBAEのARシステムは、英国の先進戦闘システム技術における防衛請負業者の投資費用の一部として、2,000万ユーロ(2,700万米ドル、約30億円)の予算のもと行われています。BAEによると、2019年初めには試験的導入が行われ、2019年後半には全ての英軍艦への導入を予定しているとのことです。

Image Credit: BAESystems
(参考)VRScout

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