今年3月に開発が明らかとなった、グーグルとLGが進める1443ppiのVRヘッドセット向けディスプレイ。「SID DISPLAY WEEK 2018」での発表に先立ち、2社の研究者がディスプレイに関する論文を発表しました。画像も掲載し「人の眼と比較しても、自然な見え方を実現する」と謳っています。
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人の眼との比較
論文によれば、ディスプレイは白色有機LEDとカラーフィルター構造で高い画素密度を実現。nタイプのLTPS(多結晶の低温ポリシリコン)を回路基板に使用し、スマートフォン向けディスプレイと比較して高速な応答の実現を狙っています。
論文では人の眼の見え方について、おおよそ視野角は水平方向160度、垂直方向150度、知覚は60PPD(pixels-per-degree:角度当たりピクセル)としています。これに従えば、片目あたりの解像度は9,600 × 9,000ピクセルとなります。このスペックを満たしていれば、人の眼にとって「自然に見える」と考えられます。
今回発表された新しいディスプレイと人の眼を比較すると、下記のようになります。
スペック |
人の眼 |
新ディスプレイ |
画素数 |
9,600 × 9,000 |
4,800 × 3,840 |
角度あたりピクセル (ppd) |
60 |
40 |
1インチあたりの画素数 (ppi) |
2,183 |
1,443 |
画素ピッチ (µm) |
11.6 |
17.6 |
視野角 (水平×垂直) |
160度 × 150度 |
120度 × 96度 |
フォービエイテッド・レンダリングが不可欠
また研究者らは「特にモバイル向けのVR/ARアプリに最適」とする、フォービエイテッド・レンダリング(中心窩レンダリング)と呼ばれる描画技術の必要性を強調しています。フォービエイテッド・レンダリングは、視野の中心部を高解像度でレンダリングし、周辺視野は解像度を落として描画することで、描画負荷と転送量を大幅に減らすことができる技術です。
「4.3インチの有機ELディスプレイを一体型VRヘッドセットに導入するには、フォービエイテッド・レンダリングは不可欠な要素です」と論文では述べられています。
以下の2枚の論文に掲載されていた写真のうち、上が通常の見え方、下がVRヘッドセットでの見え方です。修正は施されておらず、研究者らは「スクリーンドア効果も見られず、非常に良い結果である」としています。
グーグルとLGのディスプレイが「特にモバイル向けに最適」としてフォービエイテッド・レンダリングを導入している点から、このパネルがモバイルVR/ARに応用され、その性能を向上させると予想できそうです。
5月20日(月)~25日(金)に開催されている「SID DISPLAY WEEK 2018」に向けては、ジャパンディスプレイ(JDI)の1001ppiの液晶ディスプレイやINTの超高精細(2228ppi)有機ELパネルが発表されています。グーグルとLGのディスプレイについても、正式な発表が待たれます。
グーグル&LGディスプレイのスペック
論文で公開されているスペックは下記のとおり。
サイズ |
4.3インチ |
画素数 |
3840 × 2 (RGまたはBG) × 4800 |
画素ピッチ |
17.6 µm (1443 ppi) |
輝度 |
150 cd/m2 @ 20% duty |
コントラスト比 |
>15,000:1 |
色深度 |
10 bits |
視野角 |
120度 × 96度 |
リフレッシュレート |
120 Hz |
(参考)Road to VR
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