昨今盛り上がりを見せているXRやメタバース、NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)などの最新技術。バーチャル空間を主体とするこれらの技術には、プレイヤーやユーザーが自身を表現するための「アバター」が不可欠です。
ブレイクポイント株式会社と株式会社Moguraが2021年7月14日に共催したウェビナー「Future Tech Meetup #7 注目集める“アバター”の動向を知ろう」では、アバター活用の現状について解説やディスカッションが行われました。
「VRChat」や「cluster」などのソーシャルVRサービスや、昨今ではバーチャルYouTuber(VTuber)の人気など、「バーチャル空間におけるユーザー/プレイヤーの分身」であるアバターに注目が集まっています。今回のウェビナーではアバターについて、その語源から利用の歴史、業界動向、そして実際にアバター関連サービスに携わる企業や組織の知見などが紹介・解説されました。
第1部「アバタービジネス概観」
第一部は「アバタービジネス概観」と題し、Mogura VR編集長の久保田瞬がアバターに関する基本的な解説や、最近の業界動向について語りました。
サンスクリット語のアヴァターラ(「化身」「分身」の意)を語源とするアバターは、それ自体は新しい概念ではありません。アバターがオンラインに登場した例は1980年代、MMORPG(Massively Multiplayer Online Role-Playing Game、大規模多人数同時参加型オンラインRPG)の元祖とも称される「Lucasfilm‘s Habitat」(1985)にその端緒があるとされています。以降、MMORPGをはじめ、「セカンドライフ」「アメーバピグ」などに代表されるバーチャルコミュニケーション空間におけるプレイヤーの分身としてアバターが利用されてきました。
アバターは技術の進歩にともない、今ではユーザー自身の外見や動きまでをトレースできるようになりました。また近年では著名人を3Dアバター化したり、バーチャルYouTuber(VTuber)のような、バーチャル空間で活動する存在も登場しています。こうしたアバター進化の裏には、モーションキャプチャ技術(ハードウェア/ソフトウェア)、アバター作成ツール/サービス(2D/3D)、アバターを使ったライブ配信システムやバーチャル空間サービスなどの、関連技術・サービスの進化もあります。
今後はツールの進化と汎用化が進み、また、2020年以降の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響など、バーチャルで過ごす時間・人口の増加にともなう需要増により、アバターの民主化がさらに進むだろうと久保田は解説しました。
(アバター関連の投資・買収もここ数年大きな動きを見せている)
第2部「プレイヤーが考えるアバター関連ビジネス」
第2部は「プレイヤーが考えるアバター関連ビジネス」と題し、登壇者によるパネルディスカッションを実施。登壇者はREALITY株式会社 代表取締役社長のDJ RIO氏、一般社団法人VRMコンソーシアム代表理事/株式会社バーチャルキャスト 取締役COOの石井洋平氏、ピクシブ株式会社 VRoidプロジェクト マーケティング・PRマネージャーの伊藤彰宏氏の3名。モデレーターを久保田 瞬が務めました。
アバターの利用は増えている? どんな使い方がある?
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久保田:
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第1部ではメディアの立場から「最近アバターの活用が広がっている」と解説しましたが、実際にサービスを提供しているみなさんの立場から見てどうでしょうか。
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DJ RIO:
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アバターの利用は増えていますね。ただ、アバターと言っても、昔ながらのMMORPGやアメーバピグで使われていたようなタイプのアバターと、昨今のアバターとですごく大きな違いがあると思っています。
今までのアバターというのはあくまでも画面の中にいるキャラクターを自分で作って、それをコントローラーで操作するという、自分自身というよりは“キャラクター”を作るような感じでした。ただこの数年で、モーションキャプチャを利用して自分の動きと完全に連動して、しかも自分の声が出るというタイプのアバター利用が増えているのは、質的にも大きな変化だと思います。
(REALITY社の代表取締役社長、DJ RIO氏。同社が開発・提供する「REALITY」はスマートフォン1台でアバター作成からライブ配信までできるアプリだ)
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DJ RIO:
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REALITYは今、全世界62か国ぐらいの国と地域で提供しています。「アニメ調のアバターの中に入ってライブ配信する」という用途があまりに新しすぎて、世界中でどう受け入れられるのか本当にわからないなと思いながらやっていますが、びっくりするぐらい使われています。今はもうユーザー数の7~8割ぐらいが海外ユーザーになってきました。
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伊藤:
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アバターのデザインがアニメ調という話がDJ RIOさんから出ましたけれども、まさにそうで、世界中でいわゆる「日本的なキャラクター」に対する需要が伸びています。
(ピクシブ株式会社、VRoidプロジェクト マーケティング・PRマネージャーの伊藤彰宏氏。「イトッポイド」のアバター名で個人活動も行っている)
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伊藤:
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ピクシブはイラストコミュニケーションサービスですが、「日本のイラストレーターが描いた」「これは日本で最先端のイラストだ」「日本風のイラストだ」という、ユーザー同士のコミュニケーションがTwitter等でも観測できます。
そのキャラクターデザインが、VTuberのブームなどもあり「イラストがそのまま3Dになった」という、そこから火が着いたというのはあるかなと思います。いわゆる「日本のファインアート風の3Dキャラクターアバター」の利用もしくは需要が増えているというのが、現状から見る面白いポイントではないかなと。
弊社のVRoidがどんな使い方がされているかというと、アバターでの配信、いわゆるライバー活動での利用があります。もうちょっとミニマムな使いかたですと、単純にSNSなどのアイコンにするだけ、というのもかなり多いと思います。必ずしもパフォーマンスをするためだけにアバターが存在するわけではなく、コミュニケーションの媒介としてアバターを使う、というのが世界中でだんだん増えてきたのではないかと考えています。
(ピクシブはVRoidの利用状況を解説するインフォグラフィック「数字でみる!VRoidと世界のアバターシーン」を2021年6月29日に公開している)。
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石井:
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バーチャルキャストは実際にアバターを作ったユーザーが使うプラットフォーム的なサービスなので、その観点では確かに利用は増えているなと。Oculus Quest 2発売後に初代QuestとQuest 2にも対応したんですが、そこでユーザー層がちょっと変わったりもしています。そういう点では「端末の普及に比例して増えているな」という感じです。
(株式会社バーチャルキャスト 取締役COOの石井洋平氏。一般社団法人VRMコンソーシアムの代表理事も務める)
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石井:
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一方でVRMコンソーシアムの立場からすると、一般層にはまだアバターはそれほど浸透していないのかなと感じます。
VRMコンソーシアムには今のところ、「リモート活動を求められる状況だから、VRとかARで何かやってみたいんですがどうしたらいいですか?」という段階の問い合わせがけっこう来るんですよね。あるいは業務系の人たちから「避難訓練とかのシュミレーションをしたいんだけど、VR空間でアバターの足がちゃんと地面に接地するかとか、VR空間内で正しく物理的挙動するようにアバターを設計したい」といった相談があったりとか。
(VRMコンソーシアムは2019年4月に設立された、3Dアバター向けファイルフォーマット
「VRM」の策定・普及を目的とした一般社団法人)
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石井:
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アバターに自己実現性を求める層というのは実はけっこう先端寄りで、「増えている」の定義をあえて一般層まで広げると、スマホでやられてるREALITYさんとかは「すごい増えてる」という実感があると思いますけども、VR特化型のバーチャルキャストまでいくと「一般層が一気に入ってきている」という、そこまではまだ来てないのではないかなと。
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久保田:
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それぞれのサービスのユーザー属性はどんな感じでしょうか?
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DJ RIO:
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REALITYではユーザーアンケートを取っていますが、20代がメインですね。日本の人口比率からするとやっぱり若いです。そもそもライブ配信というサービス自体、ユーザー層は若くてかつ女性比率が高いんですが、REALITYもそれと同じかなと思います。
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海外のユーザーについては最近はじめて調査しまして、大まかな傾向は日本と同じですが、海外ユーザーのほうがもっと平均年齢が低いですね。これは予想できることではありますが、日本のアニメやVTuberのファンが多いです。最近ではホロライブが海外でも伸びているので、「ホロライブ経由でREALITYを知った」というユーザーも多いです。
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伊藤:
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一概に「こういう人だ」というのは難しいですね。VRoidの場合はパフォーマンスや自己表現というより、純粋な創作活動がVRoidプロジェクトのドメインなので、いちおう答えとしては老若男女問わず、ということになると思いますが、実際には若いユーザーがかなり多いと思います。
DJ RIOさんもおっしゃっていたように、VTuberのムーブメントがあるので、それを見て「かわいいな」とか「3Dって楽しそう」と思ったクリエイターが3D創作にチャレンジしてみるという流れは多いかなと思います。また、3D創作では「VR機材を必要としない」というのも大きいです。3D創作では「作るだけでも楽しい」「作ったものを他人に見せるだけでも楽しい」という。
注目している技術や話題は?
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久保田:
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みなさんが今注目しているアバターに関連技術や話題はありますか?
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DJ RIO:
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目新しくかつ目立つところだと、NFTに代表されるような、仮想空間内での経済的な取り引き、なんらかの売買にによってお金を稼げるような可能性があるというのがひとつ大きなトピックかなと。あとは先ほどのVRoidの話がまさにその通りだなと思ってるんですが、「ユーザーが自分で作り出せる」ということがもはやマストかなと思っています。旧来型のMMORPGとかアバターコミュニティサービスよりもはるかにユーザーが介入する余地がある、何かを作り出したり、その世界を拡張できる要素があるというのが非常に大事かなと思っていて、REALITYでも取り入れていかなければと思っているところです。
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石井:
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私の場合、やはりVRMコンソーシアムの視点から「アバターが今後普及していくにあたって、今はどういうフェーズなのか」という見方をしてしまうんですが、欧米ではメタバースのアバターって簡略化するじゃないですか。頭と胴体と手だけ、足は必要ないよね、みたいな。
日本の議論だと「アバター自体をどう気持ちよく見せるか」というところを重視しますが、逆に海外だとメタバース中心の「アバターは機能的な役割でいいんだ」みたいなものを感じるところがあって、実際、Rec Roomのようなライトなメタバースの方がよりマスを取っている気がします。
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伊藤:
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そうですね、キーワードとなるのは「価値と意味」だと個人的には思っています。「価値」というのは、お金になるとかフォロワーが増えるとかインフルエンサーになれるみたいな、よくある価値観なんですけども、それには限界がありますよね。例えば、有名人のうち何人がテレビに出られるのかとか、インフルエンサーのうち何人が広告案件を発注してもらえるのかというの考えると、そもそも少ないよねという。
逆に「意味」というのは「自分はこうすることに意味があると思うからやる」ということですね。先ほどの「海外ではアバターが簡略化されがち」という話であれば、「自分は高解像度なキャラクターで生きているかのように喋ることに意味がある」と思ってそうする人もいれば、逆に「むしろビジネスの現場で直接コミュニケーションしたほうが意味がある」という人もいる。どこに意味を見出すのかという点では、海外と日本という比較よりは、いろいろな人たち、いろいろな小さな社会の中で意味というものが多様化していて、ネット社会もそれを反映している、ということかなと。
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久保田:
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私は以前Rec Roomのコミュニティマネージャーに話を聞きに行ったことがあるのと、最近だと「Ready Player Me」という、写真からアバターを作成してVRChat等いろんなバーチャル空間に流し込めるようにするサービスを作っている会社の人たちにも話を聞きました。
もともと私も「日本のアバターはキャラクター風味でアニメ調、それに対して海外はバーチャルヒューマンのような超リアルなアバターに行きがち」という印象がありました。これは2018年か2019年の話ですが、Rec Roomが当時言っていたのは「アバターをリッチ化する等の、アバター周りに手を着けるのは相当後だよ」。まずは彼らのサービスの根幹である「VR空間内でゲームをやりながらシームレスにコミュニケーションを楽しむ」が先にあって、アバターをリッチにしていくというのはいろんな意味でハードルが上がってしまうので後回しにすると明言していました。
Rec Roomはつい先日、初めてアバター向けのアップデートを発表しました。アバターに着ぐるみを着せられるというアップデートなんですけども、今までの超シンプルなアバターにちょっと個性が出せるようになります。あと、Rec Roomのコンセプトは「プレイヤーがクリエイターになれる」というところなので、アバターのデザインにもようやく乗り出してきたんだなと。そういう意味ではけっしてシンプルなもので満足しているわけではなくて、機能性優先というか、他に叶えたいものを優先しているという印象がありますね。
アバターの今後はどうなる? どんなポテンシャルがあると考えているか?
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DJ RIO:
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アバターはどこまでオープンかつトランスポータブルであるべきかっていうテーマがあります。VRMはまさにオープンフォーマットで、あらゆるメタバースに自分の身体を持って行けるべきだという思想で作られているし、VRoidはクリエイターツールだから、まさにクリエイターが作って、それをどう使うかはユーザーの自由じゃないですか。
一方でグリーにせよモバゲーにせよサイバーエージェントのアメーバピグにせよ、これまでアバタービジネスで大きな売り上げを作ってきた会社なりサービスでは、クローズドな世界の中でアバターの価値を生み出していったわけですよね。オープンかつトランスポータブルという思想は僕も大好きなんですけど、それをビジネスとして成立させられるのか、みなさんの意見が聞きたいですね。
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石井:
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それはおっしゃる通りですよね。ただ、アバタービジネスに関しては企業文化が色々あるかもしれないですね。
私はドワンゴやニコニコの出身ですが、ニコニコでは結局クリエイターやユーザー自身がフィーチャーされていくんですよね。そうすると経済圏としては、(アバターではなく)ファンコミュニティに対してサロン的な課金がされたり、最終的には投げ銭にたどり着く場合もあります。
一方でVRMのビジネス的なところで言うと、実はアバターの運用コスト面では活用ができています。例えば普段Aというプラットフォームで活動しているアバターをBという異なるプラットフォームでVRライブで登場させる場合、アバターフォーマットが別々だと追加の制作コストかかるんですよね。それがベースの部分が共通だと使い回しが効きます。ユーザー個々人のアバターやアイテムの価値とは別の部分で、フォーマットを共通化するメリットはあると思います。
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伊藤:
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この課題って非常に難しい話だなと思うんですけれども、考え方のひとつとして「アバター自体をマネタイズポイントにしない」というのはあるかなと。
アバターって基本的にはただのメディアなので、コストの削減など、経済的に有利な側面がまずあります。一方で、アバターはコミュニケーションのためのメディアでしかないと考えると、アバターでマネタイズするのではなくて、違うポイントでマネタイズするのが一番いい。アバター自体で何かしらの経済圏を作るよりも、アバターを介した、アバターとは別の要素でマネタイズするのがポイントではないかと思います。例えばライブでの投げ銭とか、リアル会場でやると大変ですがVRライブなら実現しやすいとか。
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石井:
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今までだと「サービスプラットフォームをいかにクローズドにして価値を作るか」って話だったと思うんですが、もう一歩先に行くと、ポータビリティを担保するサーバーこそが価値を持つようになるかもしれません。
そうすると、オープンIDの一歩先に進んだ「オープンパスポート」みたいな感じで、実はサービスプラットフォームではなくて、そのパスポート情報を握ってるプラットフォームが一番マネタイズできる可能性があるという……。
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伊藤:
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非常に邪悪なやつですね(笑)。
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石井:
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全プラットフォームの行動履歴とか所有アイテムの情報の管理が、そのプラットフォームを通さないと不便になるような。気がついたらVRの自分自身が人質になっているという(笑)。
ビジネスとして各社どう取り組んでいくか?
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DJ RIO:
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石井さんのID基盤の話も、フェイスブックとかGoogleがID基盤として機能していますが、それはフェイスブックなりGoogleのサービスの中で頻繁に利用されていて、かつ儲かっているからこそIDをオープン化できるわけで。流行っているSNSがない状態でオープンIDだけ提供しても、誰も使ってくれないじゃないですか。なので、どこかでクローズドに価値を作りに行く部分がないといけないんだろうなと思ってるんですよね。
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石井:
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マネタイズの感覚がデジタルよりもリアルに近くなるのかな、と最近では感じています。例えば、カラオケって1時間600円でも普通じゃないですか。でも、デジタルで1時間600円の歌い放題サービスって成立しないと思うんです。「高い!1か月で600円だろう」とかそんな感じだと思うんですけど、でもVRだったら、みんなで遠隔から集まってカラオケ1時間、1人600円でも成立すると思うんですよね。
そうすると今までのデジタルのマネタイズ手法とまた違う、“リアル”な課金方法のほうが実は似合ってるんじゃないかという気もします。「現実世界だと生活費は1ヶ月20万円です。だけどバーチャルの生活費は1ヶ月3000円です」みたいに、生活費として捉えるような課金方法ができてくると、アバターに関してはユーザーニーズは「ポータビリティが担保されているものがいい」ということになり、オープンな方向を求めていくんじゃないかという気がしますね。
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伊藤:
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ピクシブはクリエイターのために毎日の創作活動を楽しくするというビジョンを掲げていますので、「クリエイターのために」というのがかなり太い軸としてあります。そこを主軸とするような事業展開は、3D創作だけに限らずいくつかあります。
ピクシブがあってピクシブファクトリーがあってブースがあってと、色々展開していますが、それと同じような形で、3D創作においてもみんなが楽しく創作活動できるか、どうやってその手伝いをするかっていうのを考えています。
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DJ RIO:
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話を聞いていて自覚したのは、REALITYがやっているのはコンテンツビジネスの色合いもけっこう強いんだなと。プラットフォームももちろん提供していますが、そこで提供するコンテンツ、それはアバターだったりゲームだったりするんですけど、それを作れる環境だけ用意して「はいどうぞ」というよりは、やっぱり自分たちで作って提供しているという面がある。だからREALITYはプラットフォーマー兼コンテンツ提供元なんですね。
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久保田:
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聴講者からは「アーリーアダプターから一般層にユーザーが広がっていったときにどんなビジネスになるのか」という質問も出ています。
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DJ RIO:
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例えばLINEだと、クリエイタースタンプを作れる人ももちろんいるけどそれは一握りで、ほとんどの人は普通にスタンプを買って使っていると思うので、それはひとつの方法ですよね。ビジネスモデルとしてはスタンダードなものだと思います。
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石井:
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バーチャルキャスト社ではアイテムもVRMと同じように中間の規格といいますか、UnityとかUnrealを開かなくてもユーザーがアイテムを扱えるようなフォーマットを用意して、それで流通させたりしています。ライトユーザーには他のクリエイターが作ったアイテムをそのまま取り込みたいという要望があると思うんですよね。
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Udon(※)とかもそういう走りなのかもしれませんが、ある程度中間層のアイテムフォーマットやアバターフォーマットがあって、それを購入するだけで誰でも使えるって言うのは、どのプラットフォームもビジネス市場として考えてるんじゃないかなと思います。
(※VRChat専用のプログラミング言語)
セッションはその後、聴講者による質問コーナーへ。聴講者からの質問に登壇者がいくつか回答し、ウェビナーは終了となりました。
Future Tech Meetupは今後も開催予定
今回のウェビナー「Future Tech Meetup」は、日本のXR開発と社会実装を加速させることを目的に、起業・新規事業創造を支援するインキュベーター企業であるブレイクポイント株式会社と、XR専門メディア「Mogura VR News」「MoguLive」の運営やXRコンサル事業を手がける株式会社Moguraが共催する有料ウェビナーです。
AR/VR業界関係者はもちろんのこと、AR/VRを自社ビジネスに取り入れたい人、AR/VR業界への就職・転職を考えている人はぜひ一度ご参加ください。イベントの最新情報はMogura VR NewsやMoguraの公式Twitterなどで告知していきます。