日本人ユーザーの成長率が3.9倍に増え、企業や地方自治体の参入が相次ぐVRプラットフォーム「VRChat」。本レポートでは、無料が当たり前とされる同プラットフォームにおいて、いかにして課金を生み出すのか、MyDearest株式会社のBUSSAN氏による成功事例を交えた企画ノウハウをお届けする。
※MoguraVRは、MyDearest株式会社の運営企業です。
【スピーカー紹介】
VRを中心に様々なモノづくりに挑戦するクリエイター。ソーシャルVR「VRChat」で映像制作やデザインなどをメインに活動し「何でもクリエイター」を自称する。現在はVRゲームを開発するMyDearest株式会社にて、デザイナー、コンテンツディレクター、VRコミュニケーター(広報担当)として活動中である。
VRChatのビジネス利用のメリットと課題

冒頭、BUSSAN氏は会場の参加者にVRChatの認知と経験の有無を質問してみたところ、会場の6〜7割がVRChatのことを知っており、その中のほとんどが経験者だったという。ここから、VRChatを企業がビジネス利用するうえでのメリットについて語られた。
BUSSAN:「まず、数あるVRサービスの中で最も“体験価値が高い”ソーシャルプラットフォームなんじゃないかなと僕は思っています。そして、規模の大きさというところでいくと、VRChatは最大で15万人。日次平均でも10万人以上は毎日遊んでいるような状況です。そして日本が実はシェアが一番高い。米国を上回っているという状況で、かなり熱くなっています。また、日本の企業は前例がないと新規領域に手を出しづらいという傾向がありますが、VRChatはすでに大手企業からのビジネス参入も進んでいます。サンリオや大丸松坂屋、日産自動車、自治体では横須賀市の事例が有名ですね」
しかし、VRChatをビジネスで利用するうえでは様々な課題がある。BUSSAN氏は、BtoB領域の取り組みでよく見られる課題として「企画が存在しない」ことを挙げた。
BUSSAN:「そもそもVRChatにワールドを制作したならば、訪問されないといけません。現実にあるコンテンツをメタバースに持ち込もうというだけでは、そのコンテンツの認知度に依存してしまうというところが課題ですね。また、運良く人が来たとしても、再訪されないというのも課題です。訪問もされないし、再訪もされないと、当然SNSでシェアもされない」

だからこそ、VRChatユーザーに興味を持たせるようなアイデアが、ビジネス活用の際に重要になるという。
BUSSAN:「まず、興味を持っていただき、訪問した人にできるだけ長く滞在いただけるようなものが必要です。そして、滞在した人にもう1度遊びたいなと思ってもらえるような仕組み作りをしましょう。そういった価値を提供して、最終的にユーザーが『お金を払いたい』と思ってもらうのがゴールです。」
朝日新聞社との共同開発「天体観測部」

今回、BUSSAN氏が自社事例として紹介したのが、朝日新聞社と共同開発したワールド「天体観測部」である。

https://vrchat.com/home/world/wrld_e8d77f32-e042-4982-ab00-207af45f1076/info
BUSSAN:「簡単に言うと『友達と星空を撮ってキャラクターガチャを回すゲーム』です。ランダムに現れる星空を写真に撮って、その写真に宇宙のパワーが溜まるので、その宇宙のパワーが溜まった写真を使ってこのキャラクターを召喚しようというゲームになってます。」
VRChat公式のゲーム内課金機能が搭載されているほか、キャラクター「アムア」はBOOTHで販売されており、アバターアクセサリーとしていつでも召喚できる相棒として付与できる。アムアは45種類存在し、コレクション要素になっており、長期的な滞在を目指す狙いだ。
制作のきっかけについてBUSSAN氏は次のように語る。
BUSSAN:「朝日新聞さんは、朝日新聞宇宙部というYouTubeチャンネルを持っていらっしゃいます。このチャンネルは13万人登録者数がいて、24時間世界中の星空をずっとライブ中継してるんですよ。これを活用してVRコンテンツを制作したいという要望がありまして」
一方で課題もあったという。
BUSSAN:「『そもそもVRで天体観測したいな』という欲求がある人はどれくらいいるかというと、実際はあまりいない。天体観測は基本的に静かに見るもので、星が動いてるといったインタラクティブな要素がほぼありません」

そこでまず、一言で説明できる企画タイトルを考えたとBUSSAN氏は述べる。
BUSSAN:「ゲームの内容が複雑になればなるほど、説明するのが難しくなりますよね。でもこれは『キャラのガチャゲーだよ』って説明で済むので、友達に伝えやすいというところがあるかなと思っております。また、星空を見るのが天体観測なので、写真を撮るという要素も追加しました。写真を撮ったものを使ってその写真をガチャチケットとしてペットを召喚できるという要素も追加しました。撮った星の種類によってアムアの種類が変わると、そういうものになっています」
4日間で5万4000人が来場! 課金するユーザーの姿も
BUSSAN氏は公開から最初の4日間の数値を示した。
BUSSAN:「4日間で5万4000人ですね。7600Fav、これらはお気に入りですね。お気に入りに登録した人が7600人。そこから課金した人が135人いると。さらにアイテムが73個売れています。もしこれをYouTubeで例えるとしたら、公開した動画が4日間で5万再生回って、チャンネル登録者数が7600人増えて、そのうちの135人がメンバーシップに登録して、しかもそこから73個のグッズが売れましたみたいな感じの見方になるのかなと思ってます」
VRChatにおける課金は大きく2つあるという。
BUSSAN:「1つがクリエイターエコノミーですね。これはVRChat公式の機能として存在しています。アプリ内決済ですね。2つ目はプラットフォームですね。BOOTHというpixivが主催しているところで3Dデータの販売ができます」
天体観測部では前者のみを採用している。ネーミングについてもBUSSAN氏はこだわりを語った。
BUSSAN:「サブスクに登録しようって言われてもですね、あ、お金払えって言われてるのかって気持ちになりますよね。なので、今回天体観測部というこれは部活なので、ぜひ”部員”になってくださいという言い方に変えてます」
長く楽しんでもらうための工夫ポイント

なぜ、これほどまでに多くのユーザーに訪問されたのかについて、BUSSAN氏はローンチ前の施策を語った。
BUSSAN:「ワールドのローンチ前にですね、インフルエンサーさんを対象とした体験会をやりました。そのクローズドでお集まりいただいたインフルエンサーさんたちにワールド公開と同時に情報解禁していただいて、XやInstagram、YouTubeなど、そういったところに、ローンチと同時に皆さん動画とかを投稿していただくということをやりました」
また、ユーザー同士の雑談との相性を意識した設計を行っていることについても説明された。
BUSSAN:「VRChatは雑談を楽しむ人が実は一番多いんですね。なので、雑談を楽しみながらたまに流れてくる星を写真に撮るという流れが、相性がかなり良いと考え、そのような設計をしています。」
さらに、課金をうながすためにも工夫を重ねたという。
BUSSAN:「まずは愛着課金というところで、可愛いものにお金払うよねというところが、ひとつとしてあります。この子たちは撫でると表情が変わったりとかリアクションしてくれるんです。ちょっと愛着が湧いた子たちに自分で名前をつけられる機能を、課金機能にしているんですね。また『見せびらかしたい』という欲はやっぱりどんな人にもあるかなと思います。5人の友達で遊びに行ってその中で1人でも課金者がいると、レアな天体出し放題チケットを使えるんですね。そうすると他の人も課金に興味を持つ流れになっています」
ビジネスでのポイントについて、他にも様々な工夫が紹介され、最後にBUSSAN氏は話を振り返りながら以下のように締めくくった。
BUSSAN:「現実のものをメタバースに持っていこうとするだけではなく、そこに企画を足しましょう。そしてマネタイズの仕組みを作るまではできますけども、ただ仕組みを作っただけでは課金されないので、思わず課金してしまいたく なるような設計をやりましょうというところで、その2点が今回のまとめなのかなと思っております」
次回は大阪で開催!「XR Kaigi Hub 大阪 2026」無料チケット受付中
「XR Kaigi」のローカル版イベント「XR Kaigi Hub」は、2026年9月9日(水)から10日(木)にかけて「XR Kaigi Hub 大阪 2026」を梅田 サウスホール(大阪市北区)にて開催いたします。
本イベントでは、XR、スマートグラス、フィジカルAI、メタバースに関する最新動向や活用事例の紹介をはじめ、出展企業によるソリューションやデバイスの展示、セミナーなどが実施される予定です。XRやAIに取り組む企業・開発者、新規事業担当者、DX担当者などを対象としており、9月9日(水)のイベント終了後には懇親会(参加費1,500円)も開催されます。
参加費は無料で、定員は400名(先着順)です。セッションのリアルタイム配信やアーカイブ配信は行われないオフライン限定のイベントとなっております。無料チケットの申し込みは現在Peatixにて受付中です。
| イベント名 | XR Kaigi Hub 大阪 2026 |
| 開催日 | 2026年9月9日(水)〜9月10日(木) |
| 時間 | 11:00〜17:00 |
| 会場 | 梅田 サウスホール |
| 所在地 | 大阪府大阪市北区梅田1丁目13−1 ツインタワーズ・サウス11F |
| 定員 | 400名(先着順) |
| 参加受付 | https://xrkaigihub-osaka2026.peatix.com/view |
| 参加費 | 無料 |
| 懇親会 | 2026年9月9日(水)17:30〜19:30 |
| 懇親会参加費 | 1,500円 |
| 主催 | XR Kaigi実行委員会(MyDearest株式会社内) |

