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VRChat 2023.05.19

共に学ぶ仲間に出会う VRChat上で開催される勉強会・同業者交流会イベント特集

特集「VRで学ぶ」の第1弾記事として、VRChat上で開催される学術交流イベント「理系集会」を特集しました。様々な理系分野の人はもちろん、文系分野や理系分野に関心のある人も歓迎される、「知の交流」と呼ぶべき学びの場が広がるイベントです。

しかし、「VRChat」には「理系集会」以外にも、様々な「なにかを学ぶ」ことに特化したイベントが日夜開催されています。本記事は「VRで学ぶ」の延長線として、筆者が足を運ぶことができた、新しい知識や知見、技術を知ることができるVRChatイベントをいくつかご紹介します。

成長が早すぎる機械学習を追いかける!熱量あふれる「ML集会」

今や華のトレンドである「AI」の根幹を為す「機械学習」は、日夜すさまじいスピードで発展を続けています。このあまりに成長が早い機械学習の知見を交流する場が「VRC マシンラーニング集会(ML集会)」です。

1時間のイベントの基本的な構成は、来場者同士の交流会とライトニングトークです。ライトニングトークは2回に1回の頻度で、イベントの後半に実施されています。

参加者は機械学習に本腰で取り組んでいる方が多い印象です。各所で専門的な会話に花が咲いており、門外漢でも聞くだけで学びになるくらいです。もちろん初心者の参加もOK。筆者は「Stable Diffusion」などの画像生成AIをちょろっと触ったことがあるレベルです。

筆者が参加した回ではライトニングトークも実施されました。この日のライトニングトークは、連続テーマ「y=ax+bから始める初心者向けML講座」の第4回。いままさにトレンドと言える画像解析の手法が解説されました。極めて応用的な内容でしたが、解説は非常に丁寧で、筆者でもそのアウトラインは理解できるほど。ちなみに、過去実施されたライトニングトークはYouTubeでアーカイブが公開されています。

(「y=ax+bから始める初心者向けML講座」第1回アーカイブ。MLの概要をつかむにはなかなかによい内容です)

日進月歩な領域に全力で取り組む人たちの集会なだけあり、熱量に満ちあふれた場になっています。機械学習に興味ある人が学ぶ入口を探しにいくのはもちろん、日頃から機械学習に取り組む人にとっては、ともにこの領域に挑む同志を探す場にもなるでしょう。

イベント開催概要

開催日時 毎週水曜 22:00~
参加方法 主催のげそんさん、または会場インスタンスオーナーへJoin
公式情報源 イベント公式Twitter
主催Twitter

データサイエンティストの前線基地。おだやかでもガチな「DS集会」

花形の職業として注目を集めている「データサイエンティスト」が集まる場もVRChatにはあります。それが「データサイエンティスト集会(DS集会)」です。

イベントは主に参加者同士の交流がメイン。もともとの出発点は、勉強会後のアフター交流会なのだそう。交流だけでなく、後半にライトニングトークが設けられることもあります。

筆者参加回ではライトニングトークが開催。「DS協会スキル定義委員会」の定義した「データサイエンティストに必要なスキル群」から、3つがセレクトされて紹介されました。「公開鍵暗号方式の理解」「膨大な属性を持つテーブルから目的に有用な属性の選択」「AI・機械学習の倫理課題の説明」……「めっちゃ幅広い知識だ」というのが素朴な感想です。

そもそも「データサイエンティスト」とはなんなのか。機械学習以上に筆者にはなじみがありません。その疑問を素朴に投げかけたところ、「平たく言えば総合格闘技」という答えが返ってきました。

より詳しく聞くと、「データサイエンティスト」とは、「ビジネス力(ビジネス課題の理解・整理)」「データサイエンス(情報科学や統計学などの情報科学系の理解)」「データエンジニアリング(データサイエンスを意味のある形に実装する力)」の3つの領域が重なっている職業なのだそう。ビジネスも、情報科学や統計も、エンジニアリングも全部やる。それってめちゃくちゃ大変では……?

実際、データサイエンティストとして従事している人も、こうした複雑な領域と日々挌闘しているのだそう。「DS集会」は、そんな現役データサイエンティストの前線基地として、幅広い情報交換がなされている場として機能しているように感じました。

もちろん、現役データサイエンティストだけでなく、データサイエンティストを志している学生などにも、「先達から現場の話を聞く場」として大いに活用できそうです。もちろん、これからデータサイエンスを知りたい人にとっても、学ぶ姿勢があれば大きな刺激になる場と言えるでしょう。

イベント開催概要

開催日時 隔週木曜 21:00~22:00
参加方法 運営メンバー(ちとせちゃんさん/いそひまかんさん)のいずれかにJoin(事前に発表あり)
公式情報源 イベント公式Twitter

投資は身近で真面目。初心者も歓迎な「VRC株式投資座談会」

株や投資といった話でにぎわうイベントもVRChatにはあります。「VRC株式投資座談会」では、株式投資などに取り組む人や興味がある人が集まり、知見や最新の経済動向などの情報交換ができます。

「投資」と聞くと、やや怪しいセミナーも多いこのご時世ですが、このイベントで取り扱うのは本格的な経済に関するトピック。市場動向に関する情報を集め、分析し、学び続けることが重要な個人投資家たちが「ともに学び続ける」となることを目指すのが本イベントとのことです。

それを裏付けるかのように、筆者が参加した回ではライトニングトークにて「VIX Index(恐怖指数)」という概念について解説。市況の不確実性を占う重要な指標のひとつであり、先日のシリコンバレー銀行破綻の際にも動きが見られたのだそう。ライトニングトークでは「VIX Index」の取得方法も解説されており、全体的にかなり本格的な内容でした。

とはいえ、このイベントそのものは、投資について何もわからないという人でも参加OK。ライトニングトークの後に、交流内容に応じたグループ分けが行われるのですが、その中には初心者歓迎のグループも作られます。「投資に興味がある」「これから投資を始めたいがなにから手を付けるべきか」といったことを話せば、ベテランの個人投資家たちが的確なアドバイスをしてくれます。

参加者の1人と話をした際に、「株式投資は”ラテ一杯分”の少額からでも行える身近な資産運用」「世界全体の経済について関心を持つきっかけになるのが投資のよいところ」といったことを聞けたのが印象的です。「儲け話」が得られる場ではなく、自分の資産と経済に向き合う投資家たちが集まる場として、経済や投資に詳しくない人にも学びにいく価値がある場と言えそうです。

イベント開催概要

開催日時 隔週土曜 21:00~
参加方法 主催のTAK1123さんへJoin
公式情報源 公式ハッシュタグ「#VRC株式投資座談会」
主催Twitter

ビギナーからプロまで。「Houdini勉強会」で”サンリオB4”でも使われたツールを学ぶ

Houdini」という3DCGソフトウェアがあります。物理シミュレーションやプロシージャルモデリング(数式や処理を用いて3DCGモデルを生成すること)が可能です。主に映像業界で使用されているツールですが、最近はゲーム業界でも使われることが増えてきました。一方、VRChatユーザー的にはおそらく「Blender」の方がなじみ深いでしょう。

この「Houdini」についての勉強会「VRC Houdini勉強会」が、VRChatで開催されています。現役の「Houdini」ユーザー(通称「Houdinist」)から、これから「Houdini」をさわりたい人も集まる勉強会で、各回に設定されたテーマに沿った作例を登壇者が紹介・解説するというのが、主な内容です。ときにはVRChatで公開されているワールドを作例として鑑賞することもあるそうです。

基本的には、ある程度「Houdini」をさわっている人たちがメイン。登壇者による様々な作例は、現役ユーザーにとって大きな参考になりそうです。一方で、現役ユーザーの参加者との交流で聞ける話や作例もまた大きな教材です。


(入門にオススメという、さつき先生の「ゼロから始めるHoudin」シリーズ)

筆者も合間に「これからHoudiniをさわり始める場合、どんな教材を参照するのがよいでしょうか?」と参加者へ質問したところ、「これはマスト」と一本の動画シリーズを教えてもらい、これがさっそくさわりの理解の一助となりました。

ちなみにこの「Houdini」、今年大きな話題となった「SANRIO Virtual Festival 2023」のB4階でのパフォーマンス制作にも活用されています(参考記事 TORIENA with BCbeyond_a_bit)。多くの人を驚かせるワールドを生み出す力としての「Houdini」に関心がある人にとって、心強い入口になる勉強会です。

イベント開催概要

開催日時 隔週日曜 20˸00~
参加方法 事前にVRChatグループに参加の上、開催当日にグループインスタンスへJoin。
公式情報源 VRChatグループ
主催Twitter

飲み物片手にギークなおしゃべり!金曜日は「エンジニア作業飲み集会」

「本格的な勉強会や交流会よりも、もっと気軽な同業交流の場がほしい」という人も中にはいるはず。そう……お酒やジュースを片手に、ワイワイ飲みながら! そんな願望があるエンジニアの方におすすめなのが「エンジニア作業飲み集会」です。

毎週金曜日に開催されているこの集会では、ジャンル問わず様々なエンジニアが集まり、飲み物などを片手にいろいろなおしゃべりができます。ハードウェア側でも、ソフトウェア側でも、フロントエンド/バックエンドでも、なんなら「エンジニアという仕事に興味がある」くらいでも。技術に興味があればOKです。

本記事でご紹介するイベントの中ではかなりゆるめな雰囲気なので、飲み物片手に気軽に参加しやすいのが特徴です。しかし、いろいろと技術的な知見が必要なVRChatに集まる技術畑の人たちだけに、何気ない会話もギーク寄りだったりします。むしろこのゆるさだからこそ、深い話に華が咲きそうな予感があります。

イベントは基本的に交流会がメインですが、後半にライトニングトークが実施されることもあるとのこと。また、会の終わりには各自の「進捗」を報告するパートが発生することも。ただし、この会では「お酒を飲む」ことも進捗にカウントされるため、心臓をキュッとさせながら身構えなくても大丈夫です!

ちなみに、「エンジニア作業飲み集会」は「cluster」でも開催されています。「VRChat」か「cluster」か、自分にあったプラットフォームからギークな交流会に集まってみるとよいでしょう。ソーシャルVRを始めていない人でも入れるDiscordサーバーも運営されているので、気になる方は合わせてチェックしてみましょう。

イベント開催概要

開催日時 毎週金曜 22:00~23:00
参加方法 主催の慕狼ゆにさん、または会場インスタンスオーナーへJoin
公式情報源 イベント公式Twitter
主催Twitter
connpass
Discordサーバー

誰もが教え、教わることができる場所

今回ご紹介したイベントは、VRChatで開催されている同系統のイベントの中の、ほんのほんの一握りです。本記事だけで機械学習、データサイエンス、株式投資、Houdini、技術全般といった領域をカバーしていますが、これ以外にも様々なジャンルのイベントが開催されています。その数も現在進行形で増加しています。

しかし、今回訪れることができた5つのイベントで共通していることを見出だせます。それは「共に学ぶ仲間が見つかる」です。

なにかを学び、知識・技術として体得するとき、一人で取り組むよりも、共に学ぶ仲間がいたほうが心強いものです。そして、より詳しい人から教わればより早く理解でき、学びたての人に対して教えていると、自分の中で理解の解像度は引き上がっていきます。そうした環境が、今回取材したイベントでは自然と構築できているように感じました。

誰もが教え、教わることができる環境へ、世界中から学業や仕事を終えてからでもアクセスできる。しかも、現実の対面コミュニケーションと遜色ない、身体性を伴ったコミュニケーションができる(その上”身体”は自由に選べる!)。なにかを学び続けるひとにとって、こうしたVRChatイベントはまさに「学びの殿堂」と言えるでしょう。

あることを深く学び続けたい人も、新たになにかを学び始めたい人も。知的好奇心と探究心がうずいた人は、ぜひVRChatで学べるイベントへ飛び込んでみてください!

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