Home » 【Unite2017】PSVR『傷物語VR』、『FGO VR』の開発で使われた技術とは?


活用事例 2017.05.10

【Unite2017】PSVR『傷物語VR』、『FGO VR』の開発で使われた技術とは?

5月9日から2日間に渡って開催されたUnite2017ではVRに関するさまざまな講演が行われました。

今回は「最新PSVRコンテンツ制作事例紹介 with Unity」についてレポートしていきます。
登壇者は株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメントの秋山 賢成氏、ディライトワークス株式会社の荻野 洋氏と潘 志浩氏、株式会社カヤックの天野 清之氏の4名でした。

今回はそのうち、『傷物語VR』、『FGO VR』の制作に関する点について紹介します。

既存の動画素材を活用したVRコンテンツの表現技法について

まずは「VR空間を活かして、既存の動画素材を活用する表現方法」と題し面白法人カヤックの天野氏から『傷物語VR』で使用されたさまざまな技術について紹介がありました。『傷物語VR』は、先日発表されたばかりのPSVR向け新規タイトルです。5月20日には先行体験会が開催されます。

発表時に公開されたムービー

 

この作品は、「VRプロジェクションマッピング」作品とされています。「VRプロジェクションマッピング」とはVR空間上で現実と同様のプロジェクションマッピングを行うと共に、仮想現実ならでは演出を加えることでより立体的な空間演出を再現するというのがコンセプトになっているとのこと。


VRでの映像表現は360度映像を球体モデリングに貼り付けた物が一般的になりつつあるが、それ以外の表現で何かできないだろうかと思ったのが開発の原点であると天野氏。

VRプロジェクションマッピングを実現するにあたり、今回新たに「オールラウンド・マルチディスプレイ」・「ショートディスタンス・サウンド」・「バーチャルフラット・シェーダー」という3つの技術を開発。


「オールラウンド・マルチディスプレイ」はVR空間上に自然な方法で投影される映像表現です。これに空間変化やモーショングラフィックスといった演出を加えることで新たな表現を生み出しています。

[wc_row][wc_column size=”one-half” position=”first”]

[/wc_column][wc_column size=”one-half” position=”last”]

[/wc_column][/wc_row]

「ショートディスタンス・サウンド」は距離に応じて変わる立体音響に近い音表現と視覚的な演出を組み合わせたものです。雨のシーンでの環境音や画面外から物が飛んでくる場面の音声などで使用されています。また、この技術を応用してユーザーの視線誘導やナビゲートなどにも活用されているとのこと。

「バーチャルフラット・シェーダー」は立体空間と組み合わせたオリジナルシェーダーになっています。霧が出ている場面で映像をフォグスクリーン風に見せたり、自分の見ている画面がガラスの用に割れるといった部分で使用されています。

『FGO VR』フルCG世界の実在体験・世界への干渉

次に「フルCG世界の実在体験・世界への干渉」と題し、ディライトワークスの萩野氏と潘氏から『Fate/Grand Order VR feat.マシュ・キリエライト』(FGO VR)の制作事例に関してです。

『Fate/Grand Order VR feat.マシュ・キリエライト』は、人気スマートフォンゲーム『Fate/Grand Order』(FGO)に登場するヒロインであるマシュ・キリエライトに会うことができるという内容のVRコンテンツです。

FGO VRは全編Unityで制作されています。コンセプトである「マシュがいると思えること」、そしてAnimeJapanでの展示が決まっていたため「クオリティと開発期間、開発難易度の両立」という2つの要件を満たすゲームエンジンを複数試し、『FGO』でノウハウのあるUnityに至ったとのこと。

PlayStation VR向けの開発に関してもOculus RiftなどのPC向けのHMDに開発するのと同じ設定で使うことができます。ただデバイス関連のイベント処理では細かい調整が必要になるためサンプルプロジェクトをよく見ておく必要があると荻野氏。


全体構成としてUnityのバージョンは5.4を使用。カットシーンの部分では「PlayMaker」と「uSequencer」を、アニメーション・UI・シェーダーに関してはぞれぞれデフォルトの「Animator」・「uGUI」・「ShaderForge」を使用しています。また、uSequencerは更新が止まっているため今後使いたい場合はUnityに実装されるTimelimeの使用をオススメとのことです。

SIEがVRコンテンツのクオリティをチェックするVRコンサルテーションで引っ掛かった所としては、シェーダーによる奥行きの矛盾に気をつけることや60FPSを死守するといった点が挙げられていました。


続いて潘氏からグラフィックフローやデザイン関連の構成について説明がありました。モデリングソフトは「3ds Max」と「Maya」を使用し、タイムラインに関してはプログラムと同様に「uSequencer」を、アニメーションは「Mecanim」でエフェクトは「Particle System(Shuriken)」と「Shader Forge」を使用して制作したとのこと。

[wc_row][wc_column size=”one-half” position=”first”]

[/wc_column][wc_column size=”one-half” position=”last”]

[/wc_column][/wc_row]

モーションはFinal IKと手付モーションのハイブリッドで制作。揺れシュミレーションに関しては服と髪の揺れはDynamic Boneで、胸の揺れは3ds max内でシミュレーションしてベイクすることで実現しています。


まとめとしては「PS4やPSVR向けの開発でもUnityの機能をそのまま使える」ということ、そして「負荷に余裕を持って60fpsが出るように計測」することを強調していました。

また、今回の内容で紹介した物以外にもマシュがそこにいると思えるさまざまな工夫をしているとのことです。


VR/AR/VTuber専門メディア「Mogura」が今注目するキーワード