トヨタ自動車株式会社は、マイクロソフトのMRデバイス「HoloLens 2」の活用に積極的に取り組んでいます。同社のMR導入事例を、HoloLens、そしてゲームエンジンUnityの活用という観点から紹介します。
バーチャル空間上で自動車の3Dモデルを扱うためには、まずCADデータをインポートする必要があります。トヨタでは、このプロセスにUnityのPixyzを利用。大容量のCADデータを、リアルタイム3Dグラフィックスに適したコンテンツに変換しています。
流体解析を用いたデザインレビュー工程の改善
流体解析(CFD)はデザインレビューに必要ながら、非常に手間のかかるプロセスでした。しかしHoloLens 2を使うことで、リアルタイムに自動車の上に流れのイメージを重畳できます。参加者がそれぞれHoloLens 2を使用し、互いに見えているものを共有したり、共同でレビュー工程を進めることも可能です。
車両の仕組みに対するより良い理解
組立工程の終了後、車体内部の見えない部分の構造、特に車が動いている際のメカニズムを説明することは困難です。MRであれば、安全かつ容易に、駆動する車体の内部も示すことができます。
×機械学習でエラーを早期発見
通常の車両検査で見過ごされがちなミスを、HoloLens 2を通して車両を見ることで検出。早期に発見する仕組みが作られています。この機能の開発には機械学習が用いられていますが、従来はミスのパターンを学習させるために、2万枚の写真を使い、約200時間かけて該当箇所をポイントする必要がありました。
Unityを導入することで、自動で画像撮影と必要なタグ付けを実現。ミスの箇所にラベリングされた画像を、わずか30分間で揃えられるようになりました。
フィールドサービスの効率化
自動車整備のポイントの1つに、配線が正しくなされているか、という点があります。しかし車体完成後、内部の配線構造を正しく把握することは非常に手間がかかります。
トヨタはこの配線構造もMRで可視化し、フィールドサービスの整備士が部品を取り外す手間なく、配線システムを理解できるようにしています。
「Dynamics 365」の活用も
他にも、マイクロソフトが提供する産業向けアプリ「Dynamics 365」を活用した事例を2つ紹介します。
フィールドサービスの遠隔支援
Dynamics 365の「リモートアシスタント」を用い、複数人が現場の視点を共有、コミュニケーションできる環境を作っています。移動時間やコストをかけず、フィールドエンジニアの作業確認や教育、トレーニングが行えます。
チュートリアルコンテンツの作成が容易に
サービスエンジニアの効率的な現場作業に欠かせない、工程ごとのチュートリアル。しかしマニュアル作成の負担は大きく、アプリ版の作成はCGのエンジニアが張り付きで10日間もかかるものでした。
これに対してDynamics 365のマニュアル作成アプリ「Guides」を使うことで、所要時間はわずか1日に削減されました。基本的なトレーニングを受けていれば、CGの専門でなくても簡単にチュートリアルコンテンツを作成できます。
他社のHoloLens業務活用事例は、こちらの記事で取り上げています。
(参考)Unity