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統計・データ 2020.06.30

PwCがVRトレーニングの有用性を報告、学習速度や集中力は4倍以上

新型コロナウイルスの流行で、多くの人が集まる講義形式の研修やトレーニングは開催が難しくなっています。この状況において、VRによる研修・トレーニングが注目を集めており、様々な企業が取り組みを始めています。

国際会計事務所のPwCは、VRトレーニングが技術習得だけでなく、リーダーシップといったソフトスキルの習得にも有効であると報告しました。学習速度、トレーニングへの集中といった複数の面で、高い効果が示されています。

講義やEラーニングに対するメリットは?

PwCは被験者として、米国の12拠点から新任のマネージャーを選出し、リーダーシップを習得する同内容のトレーニングを施しました。学習方法は、講義形式、Eラーニング、そしてVRトレーニングの3種類です。
この結果、VR学習には大きく下記5点の効果が見られました。

・学習速度は講義形式の4倍
・講義後、自分の行動への自信は275%増加
・コンテンツへの心理的な結びつきは講義形式の3.75倍
・学習への集中はEラーニングの4倍
・学習者を増やすことでコスト面でも優位に

それぞれ、順を追って見ていきましょう。

学習速度は講義形式の4倍

米国で働く人々は、通常勤務時間の1%程度しか研修にさけていないというデータもあり、効率的な学習は重要なポイントです。

調査によると、VRトレーニングの所要時間は、講義形式のわずか4分の1で済みました。VRヘッドセットを初めて使うために必要なレクチャーを含めても、3倍の速さで学習を終えたということです。

さらにこの効果は純粋な学習時間のみで、講義を受けるための移動時間は考慮していません。移動に要する時間を含めれば、一層差は広がると考えられます。

講義後、自分の行動への自信は275%増加

ソフトスキルの習得で鍵となるのが、自らの行動に自身を持つことです。学習後に行動への自信がどれだけ増大したかを調べると、VRは275%と、講義形式やEラーニングに70ポイント以上の差をつけてトップになりました。

VRトレーニングでは、例えば従業員にネガティブなフィードバックを与えるといった、ストレスフルな状況も再現可能です。こうした訓練を積むことで、よりしっかりと自信を持つことができます。

コンテンツへの心理的な結びつきは講義形式の3.75倍

物事を深く理解し、記憶するためには、感情面で没入することが重要です。深い没入感というVRの特長のおかげで、コンテンツへの心理的な結びつき(emotional connection)は、講義形式の3.75倍、Eラーニングの2.3倍と非常に高くなっています。

学習への集中はEラーニングの4倍

現代ではスマートフォンを代表として、気を散らし学習の妨げになるものが多く存在します。講義ビデオを最後まで視聴できないといった集中力の低下も指摘されます。
しかしVRであれば、ヘッドセットを装着した瞬間他に見えるものはなく、ながら作業も不可能です。

この結果、学習への集中はEラーニングの4倍、講義形式の1.5倍という高いものになりました。より集中することで、トレーニングからより多くのことを学び、高い成果も上げられると考えられます。

学習者を増やすことでコスト面でも優位に

最後に、雇用者にとって気になるのが費用面です。確かに過去には、VR導入コストが非常に高い時代もありました。

しかし現在では、企業向けのVRシステム一式を1,000ドル(約10万7,000円)以下で揃えることもでき、さらにVRのセットは繰り返し利用可能です。コンテンツが多様化し、ソフトウェアのパッケージを使えばVR開発者でなくてもオリジナルのコンテンツ作成ができます。

具体的にどの程度規模を拡大すれば、VRトレーニングがコスト面で優位になるでしょうか。PwCによると、学習コストは利用者が375人で講義形式と同等に、1,950人でEラーニングと同等になるということです。学習者の規模が3,000人であれば、講義形式に比較して52%も優位になるといいます。

VRは「カリキュラムの一部として普及」と予測

これまでの講義形式やEラーニングによる研修が、すべて急にVR学習に置き換わることはないかもしれません。一方でPwCは、VRトレーニングが企業のカリキュラムを構成する一部として普及するだろう、と予測を述べています。

VRによるソフトスキルの習得については、こちらの記事で具体例を取り上げています。

(参考)PwC


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