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伝説のプログラマーが語る 期待高まる一体型VRヘッドセットの魅力

VR体験施設の検索サイト「taiken.tv」

Oculus Riftをはじめとする、ハイエンドなVRヘッドセットが市場に登場してから2年が経ちました。2018年は一体型(スタンドアロン型)VRヘッドセット(※)に注目が集まっています。

(※)一体型VRヘッドセット……PCなどの外部デバイスやカメラなどの外部センサーを接続するケーブルなどを必要とせず、それ単独で動作するVRヘッドセットのこと

Oculus社は現在、2種類の一体型VRヘッドセットの開発を行っています。一つはモバイル用の「Oculus Go」(紹介記事)。もう一つはOculus Rift並みの高品質な体験を実現する、コードネーム「Santa Cruz」(紹介記事)です。

(左がOculus Go、右がSanta Cruz。Santa Cruzは開発中)

2017年に行われたOculus主催の開発者会議「Oculus Connect 4」の基調講演の中で、FPSの生みの親である伝説的なプログラマーでOculus社CTOを務めるジョン・カーマック氏は、一体型VRヘッドセットについて様々なことを語りました。本記事では2018年前半のOculus Go発売に向けて、基調講演の内容をまとめてお届けします。

https://www.youtube.com/watch?v=vlYL16-NaOw

Oculus Goの強み

VR体験へのスムーズな移行

カーマック氏はOculusに入社以降、主にGear VR(モバイルVR)の開発に力を入れてきました。近年ではそれに加えて、一体型VRヘッドセットOculus Goの開発に大きく注力しているとのこと。カーマック氏は「世界中の人々にVR体験を届けるために、モバイルおよび一体型VRヘッドセットは非常に重要である」と話しています。

https://www.youtube.com/watch?v=-bQUBzPZHHQ

Oculus Goの長所として、氏は「体験までのステップの少なさ」を挙げました。Gear VRでは、まずGalaxyスマートフォン(Gear VR以外の用途でも使う可能性があるもの)を用意し、それをGear VRに接続して、VR体験用のホームアプリを立ち上げて……と、VR体験にたどり着くまでにいくつか準備が必要でした。

Oculus Goは、ただ頭にかぶるだけで体験の準備が完了します。またVR専用のデバイスbなので、体験の途中でヘッドセットを外して待機させておくこともできます。カーマック氏はすでにOculus Goを(こっそり)持ち歩き、生活の中で使用しているとのこと。Netflixを15分程度見たらヘッドセットを外して別のことをし、少し経ったらまたかぶってNetflixを見る……とのこと。たとえソフトウェアがGear VRと同じであっても、体験までの手順がスムーズになることで、快適さは大きく向上していることが伺えます。

プラットフォーム

カーマック氏はOculusが自ら一体型VRヘッドセットを開発することについて、各メーカー間の連携に関する手間を省き、Oculusからのトップダウン式で開発に取り組める点をメリットとして挙げています。

Gear VRの使用に際してはAndroid、Samsung、Oculus、スマートフォンのキャリア、そしてVRアプリ開発者と、多くの企業が関わってきます。こうした企業間の連携が多い状況は開発者にとって煩雑なのはもちろん、VR体験をしたいと思った時にソフト・ハードのアップデートなどで待たされるなど、ユーザにとっても好ましくありません。

VR以外の用途にも使用するスマートフォンを用いたVRデバイスとは異なり、Oculus GoではVRに関係の無い余計なプロセス(ダウンロードやバックグラウンドプログラムなど)は存在せず、特にアップデートが体験の邪魔をすることが無いように配慮されている、と氏は語りました。

価格

Oculus Goの大きな特徴として、199ドルという価格も挙げられるでしょう。心理学に関するデータや過去の様々なコンソールの売り上げに関する統計などにおいて、199ドルは「購入してもいい」と消費者が考える一つの境界線となっており、デバイス普及において価格をこの数字以下に収めることは非常に重要だと氏は語っています。日本円での価格はまだ不明ですが、Oculus Goの価格設定に対するこだわりが伺えます。



Oculus Goの性能

ディスプレイ

Oculus RiftやHTC Vive、PlayStation VRなど、多くのVRヘッドセットではディスプレイにOLED(有機EL)が採用されています。一方でOculus GoのスクリーンにはWQHD(2560×1440)のLCD(液晶)ディスプレイが使用されています。

OLEDではLCDより描画の応答が早く、発色方式の違いからLCDでは難しい「完全な黒色」の表現が可能などといったメリットがあります。一方で、一般的にLCDに比べてOLEDは高価です。またOLEDは、特にVRヘッドセットにおいては色収差(レンズを通して見た時の色のにじみ・ズレ)を補正するための計算コストが大きいといった問題もありました。LCDディスプレイの採用は、Oculus Goの価格が199ドルに収まった理由の一つとなっていると考えられます。

Oculus Goのディスプレイは、Gear VRと同じく2560×1440のピクセルを持っています。しかし、全てのピクセルにRGB3色のサブピクセルを持っているため、実質的にGear VRより高解像度の体験が実現できているとのこと。このサブピクセルの影響で、網目模様が見えてしまうスクリーンドア効果や色収差の問題も軽減することができたとカーマック氏は話しました。氏はOculus Goのディスプレイについて、「純粋な勝利(pure win)ではないが、実質的な勝利(net win)だ」と語っています。

一方でOculus Goでは、コントラストについては当初の予想よりも低く、描画遅延が少し(Gear VRより数ミリ秒多く)見られるなどの点も説明しました。

続けてカーマック氏はOculus Goの描画遅延について、Gear VRとの描画方法の違いを交えて説明しました。Gear VRでは、走査線が上から下へ降りていくように画面を順次描画していきます(ローリングシャッター方式)。一方でOculus Goは画面全体を一度に描画します(グローバルシャッター方式)。1つ1つのピクセルが自ら発光するOLEDと、バックライトの制御で映像呈示を行う液晶の違いがここに表れていると考えられます。

カーマック氏は、Oculus Goにおいても描画遅延を出来るだけ小さくするための様々な取り組みを行っており、あまり大きな問題にはならないとしています。

レンズ

Oculus Goに用いられているレンズは、Oculusが開発した第二世代のフレネルレンズが用いられています。

これまでのヘッドセットでは、たとえばOculus Rift CV1のレンズではグレア(眩しさ)が生じる(黒背景に眩い白を写すと光が拡散する)、Gear VRでは視野周辺がぼやけて見えるなどの問題がありました。Oculus Goのレンズではこれら問題が軽減されていることに加え、ソフトウェア側でも色収差などの問題を補正するように力を入れて取り組んでおり、Gear VRなどと比較しても見え方は大きく改善されているとカーマック氏は語ります。

オーディオ

続けてカーマック氏は、多くの人がGear VRをイヤホンをつけずに(Galaxyスマートフォンのモノラルスピーカーで)体験していることを指摘しました。

Oculus Goには3D音響を実現する内臓スピーカーが搭載されており、ストラップ部分が音を伝送することで、ヘッドホンをつけなくとも3D音響を楽しめるとのこと。音質は最善とは言えないものの、Oculus Riftのように耳の位置にヘッドフォンを合わせる必要すらなく、利便性が追及されていることが伺えます(必要に応じてイヤホンを使用するためのジャックもあるとのこと)。

ポジショントラッキング

Oculus GoはGear VRと同じくヘッドトラッキングのみで、ポジショントラッキング(位置のトラッキング)の機能は搭載されていません。Oculus Riftのように頭の位置が変わっても、バーチャル空間にその動きが反映されることはありません。

これについてカーマック氏は、ポジショントラッキングが無くても出来ることは多く、ユーザが満足する体験を提供することは可能だと述べます。例えば360度動画の視聴、Netflixの視聴などのように、静止したまま楽しめるコンテンツではポジショントラッキングの無いことは大きな問題とならないことが多い、と続けました。

開発者に向けて

Oculus GoはAndroid OSで動作するデバイスで、Gear VRとも互換性があります。カーマック氏は「Oculus Go専用のアプリを作るより、あくまでGear VRプラットフォーム向けに作ることを勧める」と述べました。一体型VRヘッドセットが普及するのにはまだ時間がかかり、少なくとも向こう5年、モバイル(スマートフォン)VRは根強く多数派として残るだろうと氏は語ります。

GDCやF8で追加情報は来るのか、期待高まるOculus Go

カーマック氏は基調講演の残りの時間で、VR Shell(バーチャル空間におけるコンピューティング環境)や360度ビデオの再生に関する技術的な話などを語りました。VR Shellの具体例としては、Oculusは「Oculus Dash」と呼ばれるユーザインターフェースを提供しています。

https://www.youtube.com/watch?v=SvP_RI_S-bw

Oculus Dash

https://www.youtube.com/watch?v=sMjlM5vFSA0

実際の使用感(Road to VRより)

Oculusが送り出す安価で高品質な一体型VRヘッドセットOculus Goは、2018年前半に一般発売とされています。2018年3月19日から23日まで開催されるGDCや、5月1日・2日に行われるF8で追加情報のアナウンスがあるのか、注目したいところです。

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この記事を書いた人

ゆうのLv3

東京大学大学院学際情報学府修士課程,UT-virtual所属.趣味は音楽(作詞作曲編曲)や物語の創作.ストーリーテリングや人間の振る舞いを変化させるための強力なツールとしてVRに強く惹かれています.境界が曖昧なものと予測不可能なもの,そしてvirtualという概念が好きです。

Twitter:@yunoLv3

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