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活用事例 2018.01.12

「最も悲鳴が聴こえたのはホラーではない」盛り上がる“施設型エンタメVR”をキーパーソンが語る

2017年12月27日、Mogura VR主催イベント「『VR業界の2017年を総括!』~VR/AR/MR業界振り返りナイト&コンテンツ体験会~」が株式会社アカツキにて開催されました。同イベントでは、主にビジネスと施設型エンターテインメントを主題とした2つのセッションが行われました。本記事では、エンタメ向けのセッション『エンターテイメント分野の2017年を振り返る』をレポートします。

もう1つのセッション『ビジネス領域としてのVRの2017年を振り返る』のレポート記事はこちら。

VR ZONE SHINJUKUは手作り感がいっぱいだった!?


セッションの登壇者は、バンダイナムコエンターテインメントから小山順一郎氏(通称「コヤ所長」)と田宮幸春氏(通称「タミヤ室長」)、ハシラス代表取締役で一般社団法人ロケーションベースVR(※)協会代表理事の安藤晃弘氏の3名。モデレーターはMogura VR編集長の久保田瞬が担当しました。

※施設型エンターテイメントVRのこと。

左からバンダイナムコエンターテインメントの田宮幸春氏(タミヤ室長)と小山順一郎氏(コヤ所長)

2017年のVRエンターティンメントについて語る時、7月にオープンしたVR ZONE SHINJUKUは、避けて通れない話題の1つでしょう。東京新宿歌舞伎町のミラノ座跡地に建設されたVR ZONE SHINJUKUは敷地面積約3,500平方メートルと、世界でも最大級の屋内型VRエンターテインメント施設です。

さらに「VR ZONE」では、日本全国各地で展開する「VR ZONE Portal」を、2018年1月時点で20箇所稼働しています。「VR ZONE」の旗艦店であるVR ZONE SHINJUKUは、VRアクティビティ以外にもカフェやグッズの販売、クライミングを楽しめるVR以外のアクティビティも用意されています。

コヤ所長とタミヤ室長によればVR ZONE SHINJUKUの大枠の企画が決まったのは、2017年の2月頃とのこと。それからオープンまでの約6ヶ月間で、カフェのフードメニューから内装施設、プロモーションムービーの制作といった、VRアクティビティの制作以外にも様々な企画を進めたとのことです。

コヤ所長はVR ZONE SHINJUKUのオープンまでは非常に大変だったが、7月オープンに間に合うことができたのは誇らしい成果だと話しました。また、驚くことにVR ZONE SHINJUKUのキャッチコピーや動画などには、外部制作ではなく内部で手作りの作品もあるとのこと。コヤ所長自ら体験動画を撮影したものもあるようです。

VRに対して先入観を持っている人の想像を超えるコンテンツ

ハシラス代表取締役/ロケーションベースVR協会代表理事の安藤晃弘氏

VRコンテンツを開発するハシラスも、2017年は非常に豊富な開発実績を残しました。ハシラスの安藤氏は、2017年だけで同社が13作品から14作品ものVRコンテンツを開発したと話しました。同社が開発した作品の特徴としては、VRを使った新しい体験を提案する作品が多く、バラエティに富んだ作品群になったとのこと。一例を挙げると、SNSでも話題になった『CLOCK WALK』は、限られたスペースでもVRで歩きまわることを可能にした作品です。

「Virtuix Omni」のように、人間自身の体は移動せずに、足だけを動かして歩き回る筐体については「足の裏で入力するデバイスで、歩き回る感覚は小さいと思っている」と安藤氏。『CLOCK WALK』は歩き回る感覚が味わえることを重視した作品と説明しました。

コンテンツ開発会社であるハシラスは、施設運営会社などからのオーダーについても、「手札が多い」ため、打ち合わせの席で過去の制作物を見せることで担当者の要望を具体的に提示できるとのこと。そのため、問い合わせからの受注率について、安藤氏は「打率は高い」と話しました。

また、ハシラス社はVRコンテンツの制作にあたって、VRで再現する価値があるかどうかを重視しているとのこと。安藤氏によれば、現実にある遊びをVRで再現する際にも、現実をそのままVRに落とし込むだけでは不十分で、現実では出来ない動作を入れることが大切だと語りました。

実際のVR体験者の反応が予想と違っていたと語ったのは、バンダイナムコのコヤ所長とタミヤ室長。当初VR ZONE SHINJUKUの中では、ホラー系と絶叫系のコンテンツが集まるエリアが一番騒々しいエリアになると予想していたとのことですが、実際には『マリオカート アーケードグランプリVR』の体験者が一番「声を出して“取り乱していた”」と明かしました。

タミヤ室長は、『マリオカート アーケードグランプリVR』に驚く体験者が多かった理由として、「(体験前に)体験者はマリオの世界に入れると想像」していたら、『マリオカート アーケードグランプリVR』の体験が、その想像を超えていたからではないかと説明。同施設の来場者の大半「(タミヤ室長の)感覚値では80%から90%」がVR未体験者ということも背景にあるようです。

コヤ所長は、VRという言葉が一般化されてしまったことで、逆にスマートフォンで体験できるものなどのVR体験の一部だけが一人歩きしてしまい「VRってこういうものでしょ」と、VR未体験の人に思われてしまっている現状も課題と指摘。そのように思っている人でも、「VR ZONE」のアクティビティを体験すると非常に驚かれてしまうようです。コヤ所長は、そういった先入観のある人にいかにVRを体験してもらえるようにできるか、「VR ZONE」の体験できる場所を増やすことも含めて取り組んでいきたいと語りました。

業界の健全な発展を推進させるために

一般社団法人ロケーションベースVR協会の代表理事を務める安藤氏は、VRアトラクション施設に係わる事業者の横の連携をさらに強くして、VR業界を力強く推進していきたいと語りました。ロケーションベースVR協会の話題では、タミヤ室長も協会内で行うワーキンググループのその熱量の高さを指摘。ワーキンググループへの理事の出席率も非常に高く、出席者は各企業のVR担当者という意識で出席しているように感じると話し、活発な議論が行われている様子を紹介しました。

同協会代表理事の安藤氏も、今あるロケーションベースVR業界の問題に対しては「健全に解決」していくと話し、実際に同協会から2018年1月5日に13歳未満のVR体験者に関するガイドライン(※)が発表されています。

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また、安藤氏は今後のVRアトラクション施設は、施設自体がVRプレイエリアになり、利用者はVRヘッドセットを装着したままでも、シームレスにVRアトラクション/VRアプリを切り替えられるようになっていくだろうとし、2018年はそういったVR体験の開発にもチャレンジしたいと語りました。

VR ZONEは、大きなIPとも話せるようになった

VR ZONE SHINJUKUがオープンしたことで、「大きなIPともお話ができるようになった」「これまでよりもさらに大きなお話ができるようになった」と明かしたのはタミヤ室長。「(2018年は)凄いのがお見せできると思います」と、イベント参加者に期待を抱かせました。またコヤ所長は「VR発のIPを作っていきたいし、作っていかなければいけないと思っている」と熱く抱負を語りました。

VRアトラクション施設の分野では、世界でも日本が先行しており、人気も博しています。2018年もロケーションベースVRに引き続き注目していきたいところです。


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