リサーチ企業IDC Japanが2024年通年の国内AR/VRヘッドセット市場に関する調査結果を発表しました。2024年の国内のXRデバイス出荷台数は前年比14.8%減の48.6万台となりました。IDCはXRのカテゴリーをVR、AR、MR、ERの4区分で出す、MRカテゴリのみが成長を示し、その中でもMeta Quest 3が市場を牽引しています。一方、話題となったApple Vision Proは高価格のため法人向けを中心とした限定的な出荷に留まりました。IDCでは2029年までにXRデバイス市場は約38万台になると予測しています。
IDC Japanの調査によると、2024年の国内XRヘッドセット市場では、MRカテゴリ以外のすべてのカテゴリで前年比減少となりました。XRに含まれるAR/VR/MR/ERのIDCにおける定義は以下の通りです。
– ARヘッドセット:デジタルコンテンツを現実の視野に重ねて表示し、3Dのオブジェクトを操作できるヘッドセット。使用されているグラスは半透明かシースルー。
– VRヘッドセット:ユーザーの現実世界の視界を完全に遮り、デジタル世界を体験できるヘッドセット。装着時は安全環境が求められる。
– MRヘッドセット:VRと類似しているが、外向きカメラが備えられており、装着した上での外出も可能。完全没入型環境と、現実の中にオブジェクトを表示・追加できる環境を切り替えることが可能。
– ERヘッドセット:外部コンテンツの表示を提供する、シースルーまたは半透明のディスプレイを持つ。単眼であることが必須ではないが単眼タイプの製品が多く含まれる。
唯一成長したMRカテゴリを支えたのは、Meta Quest 3です。Meta社は初代モデルのOculus Questから約6年が経過し、ゲーム用途を中心に一定の市場を確立することに成功しています。また、最近では法人向け用途の開拓も進んでいるとのことです。
同じくMRカテゴリに含まれるApple Vision Proは、発売時に大きな注目を集めましたが、高価格であることもあり、実際には法人向けを中心とした限定的な出荷に留まりました。IDCの分析によれば、Vision Proを購入した法人も実際の業務利用というよりは、研究開発目的での購入がほとんどであり、継続的な需要は見込めないと予測されています。
VRカテゴリについては、PSVR2の出荷台数が絞られていること、主力であるMetaがQuest 3以降はMRヘッドセットに移行したこともあり前年比大幅減少となりました。IDCでは現在VRカテゴリに分類されているモデルの後継機種は今後MRカテゴリに含まれるようになると予測しており、2026年以降はVRカテゴリの出荷数はほぼなくなるとしています。
ARカテゴリはMicrosoftに続き、成長が期待されていたMagic Leapも現在では事業のほとんどを停止しており、IDCでは今後の成長は期待できず、現状水準に留まると予想しています。
ERカテゴリは前年比減少となりましたが、XREALのデバイスを中心に一定の需要があり、確かな市場が形成されつつあります。IDCでは今後も一定の成長軌道をとると予測していますが、より安価なMRデバイスが登場した場合は市場が淘汰される可能性もあるとしています。
IDCは以上の分析を踏まえ、国内のAR/VRヘッドセット市場は2029年までに約38万台になるとIDCでは予測しています。
(2025年~2029年国内AR/VRヘッドセット市場予測)
市場は停滞するも新たな可能性も
IDC Japan株式会社Consumer Devicesのマーケットアナリスト井辺将史氏は「かつてはスマートフォンの代替となるデバイスとして大きな期待を寄せられていたAR/VRヘッドセットだが、現時点でその成長は停滞している」と述べています。Apple Vision Proの登場により市場発展が期待されましたが、「既出の用途の域を出るものではなかった」とコメントしています。
一方で、「MetaやXREALなど一定の成果を残している企業もある。また、ヘッドセットを装着したことによる没入感は、ユーザーにとって新しい体験を与えるものであることには変わりない。この価値をより手軽に安価に体験できるようになれば、市場は劇的に変化するだろう」とも述べており、将来的な市場拡大の可能性を示唆しています。
(参考)IDC