Home » 「にじさんじ」のANYCOLORが2024年度第1四半期決算を発表 物販・イベントの下振れで減収減益


企業動向 2024.09.12

「にじさんじ」のANYCOLORが2024年度第1四半期決算を発表 物販・イベントの下振れで減収減益

VTuber事業を展開するANYCOLOR株式会社が2025年4月期第1四半期(2024年5月~7月)の決算を発表しました。売上高は前年同期比16.9%減の74億3556万円、営業利益は同32.8%減の27億1856万円と減収減益となりました。主力のライブストリーミング事業は概ね計画通りでしたが、コマース(物販)事業やイベント事業が計画を下回る結果となりました。一方で、プロモーション事業は好調に推移しています。通期の業績予想は据え置かれており、第2四半期以降の巻き返しに期待がかかります。

VTuberやID会員は増加

決算概況について詳しく見ていきます。売上高は74億3556万円(前年同期比16.9%減)、営業利益は27億1856万円(同32.8%減)、経常利益は27億684万円(同32.8%減)、四半期純利益は18億7935万円(同32.8%減)となりました。

ANYCOLORの事業は、YouTubeでのライブ配信を中心としたライブストリーミング事業、グッズ販売などのコマース事業、音楽イベントなどのイベント事業、企業タイアップなどのプロモーション事業の4つに分類されます。

第1四半期末時点での「にじさんじ」および「NIJISANJI EN」に所属するVTuber数は165人(前年同期比9名増)となりました。また、ANYCOLORのサービス利用に必要なANYCOLOR IDの数は135万ID(前年同期比32.9%増)に達しています。

コマース・イベントのスケジュール遅延・延期が響く

決算結果を分析すると、ライブストリーミング事業は概ね計画通りの着地となった一方で、コマース事業とイベント事業が計画を下回る結果となりました。

コマース事業では、VTuberユニット関連のグッズ施策は好調だったものの、第1四半期中のグッズ発送スケジュール遅延の影響で数億円程度が翌四半期以降に繰り延べられたことが下振れの一因となりました。特に、2024年6月にデビュー1周年を迎えたユニット「HEROES」の人気が拡大しており、グッズ収益に大きく貢献しています。

イベント事業では、期初に計画していた3つのイベントのうち、1件を延期、1件を中止したことにより、第1四半期の業績予想を大きく下回る結果となりました。延期したイベントについては、12月に開催を予定しています。

一方で、企業とのコラボレーションを行うプロモーション事業は好調に推移しました。前年同期比で案件実施数については横ばいであるものの、案件単価が大きく伸長しており、特に7月単月では案件の大型化等で過去最大の収益となるなど、好調な状況が続いています。

今後の見通しについて、ANYCOLORは2025年4月期の通期業績予想を据え置いています。売上高390億円(前期比21.9%増)、営業利益148億円(同19.7%増)を見込んでいます。

第2四半期以降は、コマース事業での周年グッズや楽曲コンテンツ、季節コンテンツなどの発売や、「VΔLZ LIVE TOUR 2024『三華の樂』」「Nornis LIVE TOUR 2024 -Tensegrity-」などの中規模イベントの開催を予定しています。プロモーション事業でも、三井住友カードとのタイアップをはじめ、新規・リピートを含む様々な企業案件の実施を見込んでいます。

ANYCOLORは中長期的な成長戦略として、2027年4月期に売上高600億円、営業利益240億円を目指すという中期経営目標を掲げています。この目標達成に向けて、年平均10~15%程度の新規VTuberデビューによるVTuber数の増加や、VTuber1人あたりの収益拡大などに取り組む方針です。

VTuber市場は引き続き成長が見込まれる中、ANYCOLORは「にじさんじ」というブランド力を活かしながら、多様な収益源を確立し、安定的な成長を目指しています。第1四半期は計画を下回る結果となりましたが、第2四半期以降の巻き返しと中長期的な成長戦略の実現が注目されます。また、所属するVTuberにまつわるトラブルが国内外で多く発生しており、大きな話題となることも増えています。こうしたネガティブな事案への対応も適切に行なっていけるかがポイントと考えられます。

(参考)ANYCOLOR IR


VR/AR/VTuber専門メディア「Mogura」が今注目するキーワード