ANYCOLOR株式会社はIR情報として、VTuberグループ「にじさんじ」の中期的な経営方針を発表しました。資料の中には、今後にじさんじが成長するにあたっての注目すべき取り組みがちりばめられています。
中期的な成長に向けた採用、スタジオ強化、オーディションの拡充
「中期的な成長に向けて」の項目では、中期経営目標として、2027年4月期は2024年4月期対比で売上+88%、営業利益で+94%の増収増益を目指すとのこと。そのための主要方針として、「事業基盤の強化」「継続的なVTuberの輩出」「VTuberあたり収益の拡大」を掲げています。
事業基盤強化の一環として、ANYCOLORではVTuberのデビューやプロデュースなどあわせて、採用の強化を図る計画です。必要な人材例として、タレントマネージャー、イラストレーターや3Dモデルデザイナー、スタジオエンジニアを挙げています。2024年4月期では430人の正社員及び契約社員が在籍していますが、継続的な増員をしていくとのこと。
また、新スタジオは面積規模をこれまでの3倍の規模に拡張。2D/3Dスタジオ、レコーディングスタジオ、個人配信ブースといった各種のスタジオ機能を拡充し、配信や音楽、イベントなどでコンテンツ強化を実現すると明らかにしました。
(オーディション情報より)
VTA(バーチャルタレントアカデミー)も、取り組みを強化する計画です。幅広い才能を集める継続的なオーディションでは、年間で50〜60人の候補生を選定。それに加え、スーパーエリートライバーオーディション、マスコットライバーオーディション、ペアオーディションのように、よりユニークな才能を持ったVTuberオーディションを実施し、既存のVTuberたちと異なるファン層の開拓も目指しています。
“人気VTuber への依存”という問題への回答
「事業リスクと対応策」の項目には気になる部分も。リスクのひとつとしてあげられている「人気VTuber への依存」では、コンテンツ・IPを展開する中で、特定のVTuberの人気に収益を依存し得るような構造が存在するそうです。人気VTuberのライバーが活動を休止 (卒業・引退など) した際に、業績への影響が出る可能性があるとのこと。
こうしたリスクに対し、ANYCOLORは「当社事業の特徴として逃れられない点ではあるものの、実際は当社の売上は多くのVTuberに分散しており、特定VTuberへの依存によるリスクが顕在化する可能性は高くない認識」と回答しています。
なお、別項目では「当社の特徴」として、 幅広いVTuberに収益が分散していることを明らかにしています。デビュー年度別の収益貢献度では、年度ごとにデビュー時期を分けたVTuberのグラフにて、2019年度以前にデビューしたVTuberから2023年度にデビューしたVTuberまで幅広く収益を得ていることが判明しました。
ANYCOLORは、世界のバーチャルアイドル・VTuberの市場規模の年平均成長率を24%と予想しており、2023年の10億8,270万ドルから、2029年には40億4,433万ドルと見ています。VTuberの活動を拡げることでエンターテインメント業界の広大な市場を開拓するとし、これまで以上の拡充を図る見通しです。
2023年に取材した、ANYCOLOR VTuber事業統括プロデューサーへのインタビューはこちら。
(参考)決算資料