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医療・福祉 2018.07.27

VRで摂食障害を克服、9割以上で効果 プログラム化する企業も

VRを使うと、体験者の周囲の環境を自由にコントロールしたり、体験者自身の外見を変えることができます。こうしたVRの特長を活用し、摂食障害の克服への取組が進んでいます。

オフィスにいながら環境をコントロール

ニューヨーク州のHoward Gurr医師は、VRを使って拒食症や過食症の患者の不安、自身の体に対するイメージの問題に取り組んでいます。

Gurr氏の治療方法は、認知行動療法とVRを組み合わせたものです。VRを用い、まずビーチなどの落ち着いた環境を体験することで患者をリラックスさせます。その後、同様にVRの中で飲食店、試着室といった、患者の不安の種になるような場所へ連れて行きます。そして「PsiousToolsuite」と呼ばれるプログラムを使い、患者自身の体に対するイメージの問題や、摂食障害の克服をサポートしていきます。

「(VRを使う前は)患者を椅子に座らせ、『さあ、これから不安を引き起こす場面を想像し、不安を克服しましょう』と言わなければなりませんでした」とGurr氏は振り返ります。「しかしVRを使うようになり、私は患者の置かれる環境をコントロール可能になりました。しかも全てオフィスにいながら行えます」

現実にないイメージの提示に価値

「PsiousToolsuite」は様々なVR環境を揃えています。医師やセラピストは患者のストレスレベルをチェックしながら場面をコントロールし、現実をどのように認識するか、導くことができます。

患者が自信を正しく認識できるようになると、セラピストは患者の実際の体に基づくVRのボディーイメージを提示します。患者は自身の体と他者を比べ、体に対するより正しいイメージを身につけていきます。

この治療方法は、患者をいくらか不安にさらすものとなります。しかし別のある医師は、「VRが現実と全く同じものだったら、ほとんど価値はありません(現実にないイメージを提示できることにVRの価値があります)」と話しています。「インフルエンザの予防接種のようなものです。あらかじめ少量のウィルスを体内に入れておけば、本当に感染した時には免疫があり、対応することができる」ということです。

9割以上で摂食障害の治療に効果あり

Gurr氏は30年以上の治療経験を踏まえ、VRは他の治療方法よりも効果的だとしています。90%以上の割合で、摂食障害の克服に貢献したということです。また2017年にブラジルのリオデジャネイロ連邦大学が行った調査では、VRの治療への適用について「挑戦することへのモチベーションや自己評価を向上させ、過食と嘔吐の症状を減ずる可能性がある」と結論を出しています。

定額利用でVR治療の普及を図る

このようにVRは摂食障害の治療に効果的だと示されていますが、まだ治療方法として広く普及してはいません。その理由として、開発ペースが速くなかったこと、また初期は非常に高価だったことが挙げられます。例えば1999年にVRキットを導入した医師は、15,000ドル(約160万円)を支払わなければなりませんでした。

現在では治療向けに、VR療法を定額利用するプランが用意されています。「Psious」のプログラムでは、月額39ドルから年額1,299ドルまでの3種類のプランを揃え、オンライントレーニングなども合わせて提供しています。

このプログラムを手掛けるPsious社のCEO、Xavier Palomer氏は次のように述べています。「VR療法が現時点で持つインパクトは明らかなものです。しかし将来を見据えたとき、私は”データ”が大きな意味を持つと考えています。我々は患者のデータを収集して分析し、プロトコルの改善を図っています」

VRを使ったトラウマや不安症克服の取り組みは、以下の記事でも紹介しています。

(参考)The Wall Street Journal


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