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話題 2018.04.24

VRでトラウマ克服、性犯罪被害の治療に取り組む

VRの活用が期待されている分野のひとつに医療があり、その中でも注目を集めているのがセラピーでの利用です。カナダや米国で行われている、性犯罪被害者のトラウマ克服のためのVR活用事例を紹介します。

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被害現場をVRで再現

「性犯罪被害者には、恐怖を克服するための治療が必要です」Stéphane Bouchard博士は、ABCニュースに対してこのように語りました。Bouchard氏の率いるチームは、性犯罪被害者に、被害現場を再現したVRコンテンツを体験させています。自分の被害体験の一番つらい部分と効果的に、しかし安全に向き合うためにVRを使っているのです。

VR技術を恐怖症やPTSD(心的外傷後ストレス障害)の治療に用いる手法は、20年以上前から存在します。そしてVRでの暴露療法(患者を徐々に恐怖の主因に向き合わせていく治療方法)は、退役軍人のPTSD治療に有効であることが証明されてきました。

被害者に再び犯罪のシーンを体験させるというこの治療方法には、眉をひそめる人もいるかもしれません。しかし暴露療法は、古くからある一般的な治療法です。

Bouchard氏は、「VRを使って、またはVRなしに再度被害現場を体験させることは、治療プロセスの一つです。唯一のプロセスではありませんが、重要な部分を占めています」と強調しています。

Bouchard氏によれば、VRによる暴露療法を体験した性犯罪被害者は、「非常にポジティブな」反応を示したと言います。

メンタルヘルス分野で進むVRの活用

同氏はVRと臨床心理との関わりについて、1999年から研究を行ってきました。そして、近年メンタルヘルスの専門家や患者の間では、VRが急速に広まっていると言います。

「10年前の我々は、VRのハードウェアやソフトウェアのコストが高いという問題を抱えていました」とBouchard氏は話しています。しかし技術の進歩によりVRヘッドセットの価格は低下し、どのような場所でも手に入れやすくなった、と続けています。

軍隊での性犯罪被害者に対するVR治療プログラム

南カリフォルニア大学のAlbert Skip Rizzo博士は、性犯罪被害に遭った兵士たちのPTSD治療にVRを使ってきました。VR治療プログラムは2014年に、軍隊での性犯罪被害者に対して開始されています。

同氏によれば、プログラムは「初期の安全性・実効性の確認が完了したところ」。今年5月には、学会で知見を発表するとしています。同氏は研究について、「この治療方法は非常に感情に訴えるものです。第一に患者を傷つけないこと、第2に良いデータが得られたこと。この2点に満足しています」と語っています。

Bouchard氏の場合と同様、この治療方法は批判も受けています。Rizzo氏は暴露療法がきちんとした証拠に基づき、確立されていた治療方法であるとした上で、VRによる暴露療法は簡単なものではないと強調します。

「この治療は痛みを伴い、つらいものです」「しかし、患者を見れば段々力づけられているのがわかります。体験を繰り返すうちに、不安な気持ちは消えていくのです」とRizzo氏は話しています。

VR技術が目標に追いついてきた

同氏は1996年から研究を行ってきましたが、当時のVR技術はまだ未熟なものだったと話しています。しかし、同時に「我々の目標に、技術が追いついてきた」とも語っています。

Rizzo氏は、「技術は日に日に進歩し、VRは他の治療方法と差をつける態勢にあります」と話し、「VRは魔法ではありません。しかし、暴露療法を含むVRがマッチする分野においては、これまでとまったく違うことができると考えています」と述べました。

(参考)ABC NEWS


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