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業界動向 2023.02.17

ホロライブプロダクションのカバー、東証グロース市場へ上場。調達資金はスタジオ機材・キャラグッズ拡充に

2月17日、VTuber事務所「ホロライブプロダクション」を運営するカバー株式会社が、東京証券取引所グロース市場への新規上場承認を発表しました。上場日は、2023年3月27日を予定。今回の上場申請に当たって、主幹事会社はみずほ証券株式会社と三菱UFJモルガン・スタンレー銀行が共同で担当します。

金融庁「EDINET」(金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム)に公開された有価証券届出書で明らかになりました。カバー株式会社(以下「カバー」)の公式サイトも「お知らせ」を公表しています。

カバーは2016年6月創業。2017年9月の「ときのそら」デビュー以後、数多くのVTuberを輩出し、日本国内だけでなく海外でも高い人気を有するVTuber企業として成長を続けています。直近では「ホロアース」の開発を行うなど、メタバース分野にも参入しています。

調達資金はスタジオ機材やキャラグッズ拡充、サプライチェーン整備に

有価証券届出書によると、今回の売出株数は1,864,100株で、総価額約13億2千万円(※いずれも予定)。このうち、手数料などを引いた手取金(約9億5千万円)の使途は、「新スタジオに設置する配信機材用の設備及びIP(Inttelectual Property : 知的財産)のコマース展開促進のための運転資金」としています。

具体的には、「配信技術の向上と、配信用スタジオの拡充による大規模スタジオを活用」するなどの設備資金と、「グッズラインナップの増加やサプライチェーンの整備」のための人材採用・外注費などの運転資金に充てるとしています。

配信・グッズを中心に、VTuber1人あたり収益は年間2億円

直近の財務諸表によれば、カバーの売上高は136億円(2022年3月期, 前年度比+138%)、営業利益は約13.5%。主要な収益源は「配信プラットフォームを通じたライブ配信」「フィジカル/デジタルのVTuberグッズ販売」としています。

「ホロライブプロダクション」に所属する71名のVTuberのうち、チャンネル登録数100万人以上のメンバーは31名が在籍しており、「在籍VTuberあたり収益」は約2億円に達しています。

また、所属VTuberのYoutube配信における海外再生数比率は41%(2022年12月)に達し、「字幕翻訳等の二次創作動画の累計再生回数」は少なくとも65億回以上であるとも指摘しており、海外からの人気が高いことも伺えます。

VTuber・芸能分野における近年の企業動向

カバーと近い分野の企業では、VTuberプロジェクト「にじさんじ」を運営するANYCOLOR株式会社が、2022年4月に東証グロース市場へ上場。直近では年間売上高225億円(2023年5月期業績予想)、時価総額は約1460億円に達しています。

また、著名Youtuberヒカキン(HIKAKIN)氏が所属するUUUM株式会社は、2017年8月に東証グロース市場(旧称:東証マザーズ)へ上場し、直近では年間売上高235億円(2022年5月期)、時価総額は約156億円。なお、大手老舗の芸能プロダクションでは、株式会社ホリプロダクションの年間売上高が約135億円(2021年3月期)だとされています(出所:マイナビ2023「会社データ」)。

収益性向上に期待も、課題は誹謗中傷や不祥事などの活動継続リスク

カラーは有価証券届出書のなかで、「VTuber IPは立上げに長い期間と多額のコストが必要なTVアニメやゲーム等のコンテンツのキャラクターIPと比較して、相対的に低コストで継続的に視聴者との接点を持つことができる」「タイアップ広告でもVTuberの直接の稼働無しに商品パッケージやポスター等で活用される事例」があると述べており、パッケージ販売型のコンテンツビジネスと比べて、収益性を向上しやすい業態であることが伺えます。

一方で、「誹謗中傷対策などのコミュニティ健全化の施策は重要」「外部専門家と連携しての誹謗中傷対策、コンテンツ・クリエイター保護のための施策を継続」すると述べ、「事業に関するリスク」として「不適切なコンテンツの配信、スキャンダル、炎上、誹謗中傷、その他の健康上の理由等により、当社所属コンテンツ・クリエイターが視聴者からの継続的な支持を得ることができなくなった場合」などがあるとしています。

(参考)EDINET, カバー


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