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活用事例 2017.06.28

大手の参入が相次ぐAR分野で何が起きているのか ARグラスのCastARがスタジオ閉鎖

現実にデジタルな情報を投影するARデバイスの開発を行っているCastAR社がオフィスを閉鎖し、カリフォルニア州パロアルトにある本社とソルトレイクシティーにあるソフトウェア研究施設の従業員の解雇を行っていることが分かりました。CastARのARデバイスは2017年中に消費者向けの出荷予定となっていました。

Kickstarterでの成功、シリーズA資金調達も次の資金調達に失敗か

CastARは、Valve社でARのプロジェクトに関わった2名の従業員が2013年に設立したARスタートアップです。その後、Kickstarterでクラウドファンディングを行い、100万ドル(約1,1億円)以上を集めました。2015年にはAndroidの生みの親であるアンディ・ルービン氏が率いるベンチャーキャピタル(VC)から1,500万ドル(約16.5億ドル)のシリーズAの資金調達も行っていました。

米メディアPolygonは元従業員の話として、同ベンチャー・キャピタルがこれ以上の出資を望まず、他のVCからのシリーズBの資金調達に失敗した、と報じています。

出荷されない製品

2013年のKickstarterの当時は2014年9月の製品出荷を目指し、2015年の資金調達では2015年中の出荷を約束していましたが、遅れを重ね、2017年6月時点では2017年中の出荷を表明していました。

CastAR社のARデバイスはサングラス型のデバイスで、2基のプロジェクターにより再帰反射を利用してデジタル情報を投影します。

また、同社はオプションでCastARにパーツをとりつけることでVRヘッドセットとしても使えるようにすることを主張していました。

グラスからスマホへ ビッグプレイヤーの参入が相次ぐAR分野

現在、AR分野では、ただデジタル情報を投影して重ね合わせるだけでなく、SLAM技術をを活用した機器、機能が主流となりつつあります。SLAM技術により、眼鏡の前面におかれたカメラを通して空間を認識し、現実の物体とデジタル情報が干渉したり、歩いてもオブジェクトが空間に固定されます。

こうしたARグラスはODGなどが開発を進めているほか、2016年からはマイクロソフトがMRデバイスとしてHoloLensを展開しています。また、ヘッドセットではなくスマートフォンを使い、空間を認識するAR機能としてグーグルが一部の対応スマートフォンでARができるTangoを展開。フェイスブック、アップル、Snapなどは誰もが持っているスマートフォンでAR機能を実現しようとしています。

イギリスの投資銀行Digi-Capitalの予測(2017.1)によれば、今後ARの市場は2018年を境にVRを大きく超えて成長するとされています。そして、成長するARの市場を支えるのがスマートグラスなどのARデバイスではなく、スマートフォンを使ったARと予測されています。


市場規模予測。濃い水色がAR、水色がVR

VR/ARの機能を搭載したデバイスの出荷台数予測。一番下の濃い紺色がモバイルAR(スマートフォンAR)、その上の濃い水色がモバイルVR(スマートフォン、一体型)、その上の水色がコンソールVR(PCは、ゲーム機)、オレンジ色がARスマートグラス

CastARの失速には、資金を集めながらも製品を出すことのできなかった状況に加え、ARデバイスからスマートフォンARへの流れの変化も失速に影響しているとも考えられます。

大手の参入が相次ぎ、新陳代謝の激しくなりつあるAR分野の動向には引き続き注目です。

(参考)
AR Headset Startup CastAR is Reportedly Shutting Down – Road to VR
http://www.roadtovr.com/ar-headset-startup-castar-reportedly-shutting/

After mixed year, mobile AR to drive $108 billion VR/AR market by 2021 – DigiCapital
http://www.digi-capital.com/news/2017/01/after-mixed-year-mobile-ar-to-drive-108-billion-vrar-market-by-2021/#.WVMHo4jyiUn

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