12月に都内で実施された「XRKaigi 2025」。キヤノンが2つのセッションとブースで描いたのは 「EOSで培ってきた画質と光学技術を、XRの世界にどう持ち込むのか」という問いでした。
実写イマーシブコンテンツ制作領域で注目されている「EOS VR SYSTEM」や、EOS画質3D、MREALなど、BtoB現場に根ざしたXRソリューションをアピールしていたキヤノンの取り組みをご覧ください。
高画質イマーシブコンテンツの入り口になるEOS VR SYSTEM × Apple Vision Pro
「Apple Vision ProとCanonのEOSシリーズで進化するイマーシブ映像体験とビジネスユースケース」と題されたセッションでは、キヤノン株式会社 イメージング事業本部 課長 薄井俊也さんと、株式会社MESON代表取締役CEO 小林佑樹さんが登壇。セッションで最初に紹介されたのが、EOS VR SYSTEMです。
EOS Rシリーズのミラーレスカメラに専用の2眼レンズを装着し、左右の映像を1台のカメラで同時記録。撮影した180度映像は、純正ソフト「EOS VR Utility」を用いて、VRゴーグルなどのデバイスで視聴できる3D/VR映像に自動で展開・変換ができます。複数台カメラの同期やステッチを前提としていた従来のVR制作と比べ、2Dの映像を撮影するのと同じような感覚で取り組めるワークフローによって、いま、世界中で活用されています。
また、このセッションではApple Vision Proの超高精細ディスプレイとしての価値の高さをアピール。EOS R5 C/EOS R5を用いたネイティブな8K記録や、EOS R6 Mark II、EOS R7、EOS R50 Vで撮影した4K VR映像を、EOS VR Utilityでアップスケーリングすることで、Apple Vision Proの精細感を活かせる映像が作れるそうです。
同時に、VR180のような立体映像を表示したときの没入感は圧倒的ですが、体験までのハードルの高さも語られました。ヘッドセットという大きく重い機材を頭部に装着することの心理的抵抗、ジェスチャー操作や視線入力の学習コスト、初回キャリブレーションの手間。ショールームやイベントで大人数に体験してもらうには、そのハードルをどう下げるかがポイントになります。
そこで登場したのが、MESONの「Immersive Showroom」です。本体を被らずに覗き込むだけでコンテンツを体験できるように、Apple Vision Pro本体を3Dプリント製のスタンドに固定。コンテンツの再生・切り替えはスタッフ側のタブレットから行い、PowerPointをめくるような感覚で進行します。複数台のApple Vision Proに同じ映像を同期投影できるため、ひとつのイマーシブビデオを複数人で同時に共有することもできます。
この被らせないApple Vision Pro体験と、EOS VRで撮影した高画質VR180映像が組み合わさることで、高精細な実写イマーシブビデオを、多くの人にストレスを感じさせずに届けるというユースケースが成り立ちました。
3DCGとVR180で文化財を「記録・調べる・魅せる」
キヤノン株式会社 イメージング事業本部 専任主任 畠山泰裕さん、名古屋市名古屋城調査研究センター 学芸員 大村陸さんによる「名古屋城をフォトリアルCGとEOS VR実写映像でどう魅せるか?」セッションでは、名古屋城を題材にした取り組みが紹介されました。名古屋城において3Dスキャンイベントを実施し、その場でEOS VRによるVR180映像やXRコンテンツ体験も提供した事例です。
このプロジェクトでは、フォトグラメトリやNeRFを含む3D CGとVR180実写をどう使い分けるかも議論されました。
3D CGには、「自由視点で裏側まで見られること」「テクスチャのON/OFFや陰影強調など、研究・分析向けの加工が柔軟にできること」といった利点がある一方で、高品質なモデルを作るにはモデリングや点群撮影に多くの時間を必要とします。数日を要することも少なくありません。
対してVR180による実写イマーシブビデオは、「その瞬間の空気感や音、スケール感を、ほぼそのまま切り取れること」「撮影後すぐにXRヘッドセットで再生でき、イベント当日の上映にも使えること」が強みとなっています。
ただしカメラを動かしすぎるとVR酔いを誘発するため、基本は三脚固定+カット割りで構成するのが安全というノウハウも共有されました。
名古屋城側の視点として語られたのは、「記録する・調べる・魅せる」の三段階です。
記録する:3Dスキャン、写真、VR180映像で今この瞬間を残す
調べる:3DCGモデルで形状や外観を分析する
魅せる:XRヘッドセット上映やWeb公開で、一般の人に体験として届ける
EOS VR SYSTEMは、このうち「記録」と「魅せる」の距離を縮める役割を担い、文化財アーカイブを市民向けの体験へと接続する橋渡しになりつつあります。
現場に根ざしたキヤノンのXR
ブースでは、もう少しビジネス寄りのソリューションも展示されていました。そのひとつが「EOS画質3D」です。
対応するキヤノンのミラーレスカメラEOSで撮影した静止画から、数秒で3Dメッシュを生成するワークフローでの立体表示など、生産性を追求した3D化に向くアプローチです。特にシーズンが変わるタイミングでカタログやEC掲載アイテムを一新させるときに効果的でしょう。デモではターンテーブルと連動し、24枚の静止画を自動撮影→360度3D化する流れを見せていました。
もうひとつが「MREAL Collaborator」です。コンセプト段階ではありますが、MRデバイス MREALだけでなく、Meta Questのような汎用のXRヘッドセットにも対応し、複数デバイスで同じ3Dデータを共有しながらコラボレーションできるソリューションです。導入しやすい価格帯のデバイスに対応、さらにモノづくりの現場の声を反映し、必要な機能を厳選することで、 XRの学習コストを下げるという思想が語られていました。
こうして見ると、EOS VR SYSTEMで空間ごとそのまま切り取り、EOS画質3Dでプロダクトを立体情報として残す→さらにMREAL系アプリケーションで現場のコラボレーションに載せていくという、撮影から活用までをキヤノンのソリューションを用いて一気通貫する絵が浮かび上がります。
ハイエンドなデバイスやソフトウェアを個別に並べるのではなく、既存のEOSワークフローを土台にしつつ、需要に合わせて出力先を選択するという方式が、今回の展示・セッションに共通する軸でした。
Apple Vision Proなどの各種ヘッドセットのビジネス活用について考えているのであれば、キヤノンが提示したソリューションのどの部分に自分の求めているポイントが重なりそうか、一度イメージしてみる価値がありそうです。
キヤノン公式サイトはこちら:https://global.canon/ja/
EOS VR SYSTEMについてもっと知りたい方はこちら:https://personal.canon.jp/product/camera/rf/rf-lensworld/vr-lens














