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セミナー 2021.12.30

【XR Kaigi 2021】他のサービスとどこが違う?国産メタバース「めちゃバース」が目指すもの

国内最大級のVR/AR/MRカンファレンス「XR Kaigi」が今年も開催されました。今年の「XR Kaigi 2021」はオンラインカンファレンス「XR Kaigi Online」(11月15日~17日)と、リアル会場での展示・体験会「XR Matsuri」(11月25日・26日)のハイブリッドで実施。XR Kaigi Onlineでは、3日間の期間中に50以上のセッションが行われました。

今回はその中から、11月16日に行われたハシラスのセッション「XR Kaigiのバーチャル会場に採用、「めちゃバース」が目指すもの ~ 群衆のにぎわいがもたらす新たな価値~」をレポートします。登壇者はハシラスの代表取締役社長、安藤晃弘氏。

セッションでは今回のXR Kaigi Onlineのバーチャル会場に採用されたメタバース技術「めちゃバース」の紹介のほか、めちゃバース開発で得られたVRプラットホームの知見などが語られました。

エンタメVRとビジネスVR、2軸戦略のハシラス

ハシラスはVR開発全般を手がける制作会社。サンシャイン60展望台 SKYCIRCUSの「TOKYO弾丸フライト」やBOAT RACE振興会の「BOAT RACE VR スプラッシュバトル」などのロケーションベースVRのほか、近年では「キネトスケイプ」のようなビジネス向けのVRサービス制作も手がけています。


(エンタメVRとビジネスVR、2軸でVR制作に取り組むハシラス)

そして2021年のXR Kaigi Onlineのバーチャル会場には、ハシラスが開発したメタバース技術「めちゃバース」が採用されました。同社の代表取締役社長である安藤氏はセッションの中で、昨今話題の「メタバース」についての考えも述べながら、めちゃバースの紹介・解説をしていきました。

メタバースとは「想像補完量が少ないインターネット」

安藤氏はまず、メタバースを「想像補完量の少ないインターネット」と再定義。現実の似姿(もうひとつの社会、もうひとつの経済圏)として語られることの多いメタバースは、その要素のほとんどを従来のインターネットも満たしているが、人々が利用する際に想像で補完しなければならない情報量が多い点で異なると言います。この“想像補完量”が少なくて済むようにすることを意識して開発されたのが「めちゃバース」です。



(現在のインターネットでもある程度「メタバース的なもの」は実現しているが、ユーザーの想像で補われている部分も大きいという安藤氏)

めちゃ簡単でめちゃ沢山入れるメタバース

「めちゃバース」はハシラスが開発する、Webブラウザから参加するタイプのバーチャル空間(メタバース)技術です。

メタのMeta Quest 1/2向けに開発されたキネトスケイプを、より大人数が参加できるWeb版のメタバース空間へ進化させようという試みの中で開発が始まったというめちゃバース。「めちゃ簡単」「めちゃ沢山」を謳う同技術は、3000人超の同時体験人数を可能とし、また、URLワンクリックですぐに参加できるようになっています。



(現時点で実現可能なものから今後可能になるものまで、さまざまなユースケースを紹介)

安藤氏いわく、従来のバーチャルイベントで課題となっていた

・表示できる人数が少なく、会場スクリーンショットの宣伝効果が薄い
・参加までの手順が多く、新規のユーザーが参加しにくい
・(主に主催者側から)参加者の姿が見えず、リアクションが感じられない

といった悩みにめちゃバースがフィットしており、これらの課題を感じていた見込み顧客からご相談が来ることが多いとのことです。


(簡単に利用できることはもちろん、「にぎわい感」を求める見込み顧客も少なくないという)

めちゃ沢山=「できるだけ1インスタンス主義」

続いては、めちゃバースの特長のひとつ「めちゃ沢山」についての解説です。

多くのメタバース空間サービスではネットワーク負荷軽減のため、数十人規模のインスタンス(Instance、Web開発等では仮想サーバーの1ユニットを指す)を複数立てて束ねる形式を採用していることが多いという安藤氏。

そのため、同じイベントに参加していても、インスタンスが違うとお互いに見えなかったり、ライブであればアーティストからすべての観客を見ることができないことがあります。また、例えば音楽ライブでは、コールアンドレスポンスやギフティング(投げ銭)に対するアーティストからの反応がなく、観客の臨場感や一体感が欠けてしまうことも多々あります。


(多くのバーチャル空間サービスでは1インスタンスあたり数人~数十人が上限)

これに対しめちゃバースでは、1インスタンスに入れる参加者をできる限り多くする「できるだけ1インスタンス主義」を掲げてこの課題に対応しています。

また、描画省略も行わないため、3000人超の参加者は相互に姿を見ることができます。来場者が臨場感や一体感を感じられるだけでなく、登壇者は数千人の観客を前に緊張感も感じられるだろうと安藤氏は言います。

なお、「複数日開催でのべ○万人」という形式のイベントであれば、イベント設計(時間あたりの平均来場者数やピークタイムの来場者数)次第では、めちゃバース1インスタンスだけでも対応することは可能だろうとも説明しました。


(1インスタンスあたりの収容人数を大きくすることで「わちゃわちゃ感」を作り出せる)

めちゃ簡単=「簡単に入れて簡単に使える」

そして話はめちゃバースのもうひとつの特長、「めちゃ簡単」へ。「めちゃバース」は「簡単に入れて、簡単に使える」を目指していると安藤氏は言います。

簡単に入れるために(XRデバイスではなく)Webブラウザでのサービスとしており、バーチャル空間への参加もURLを1クリックするだけと、手続きを極力減らしています。安藤氏は例として「Twitterで流れてきた誰かのタイムラインに貼られたURLをクリックしたらすぐにバーチャル空間に入れる。そのバーチャル空間に入ったら、URLを投稿した人がすぐ隣にいる」といったケースを挙げました。

また、簡単に使えるようにするために、とにかく体験のために覚えるべきことを減らし、直感的な操作ができるように設計・開発していると言います。加えて、機能の詰め込みすぎは逆に覚えることが増えてユーザー離脱の原因となるため、「“何でもできる”はけっして親切ではない」という考えのもと、本当に必要な機能だけに絞り込んでいるとも語りました。

(簡単に使えるようにするための工夫はまだまだチャレンジしがいがあると言う安藤氏)

めちゃバースの導入と料金形態

めちゃバースの特長紹介のあとは、サービス導入や料金の話に。めちゃバースはまだ各クライアントが自主的にワールドをアップロードするような形にはなっていないため、バーチャル空間の設計や想定収容人数、開設期間などに応じて個別に相談が必要とのことです。



(クライアントの要望に応じてバーチャル空間の設計や費用も異なる)

めちゃバースで発見したこと

続いては、めちゃバースの開発や実際の運用を通じて得られた知見が紹介されました。


(めちゃバースの開発・運用で得られた知見が共有された)

ドラッグ移動かFPS移動か

めちゃバースでの操作方法は、いわゆるFPS方式(左手で移動、右手で視点操作やアクション)を採用しています。マウスのドラッグによる操作にもメリットがあり、どちらにするかは悩ましいとしつつ、今後バーチャル空間でもメジャーな操作方法になるのではとの考えから、現在はFPS方式にしているとのこと。

ボイスチャットの有無

めちゃバースには現状、ボイスチャット機能がありません。バーチャル空間サービスでは必須と思われがちなボイスチャット機能ですが、実際ユーザーはバーチャル空間サービスを使いながら他のボイスチャットサービスを併用していたり、「発話したくない」というニーズもあることなどから、ボイスチャット実装の優先度は低いということです。

バーチャル空間設置のコツ

めちゃバースに限らず、バーチャル空間では設計の都合からYouTube Liveなどのストリーミング配信のような「無段階で無制限なスケーリング」を達成しずらいそうです。イベント主催側は来場者数をある程度予想して発注を行わないと、バーチャル空間が過疎・過密に陥ってしまいます。なお、現在これが大きな問題となっていないのは、多くのバーチャル空間サービスでは1インスタンス当たりの人数が多くないから、と安藤氏は解説しました。

ハシラスがこれから取り組むこと

最後は今後のハシラスの取り組みについて。安藤氏は、今後さまざまなメタバース空間が登場し、マルチバースなどと呼ばれる中で用途に合わせたさまざまなメタバースが出てくるはずだと予想。「そんな中で『めちゃバース』は“世界一めちゃ簡単・めちゃ沢山”を実現していこうと思っています」と述べ、セッションを締めくくりました。


(メタバース業界の今後を予想しつつ、ハシラスらしいメタバースを作っていきたいとした)


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