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VRゲーム・アプリ 2024.06.15

なぜ人はゲームやメタバースで写真を撮るのか? バーチャルにシャッターを切る快感

『学マス』の写真撮影の楽しさ

ゲーム『学園アイドルマスター(以下・学マス)』のクオリティの高さが話題で、多くのストリーマーやVTuberが育成配信しているのを見かける。キャラクターをプロデュースし、育成してアイドルを目指すこの『アイドルマスター(以下・アイマス)』シリーズの中でも、3Dモデルのできの良さ、ムービーのこだわり、キャラクターごとの会話の面白さ、育成のシステムの緻密さ、プレイのしやすさなど、完成度の高い部分だらけだ。

話題になっているもののひとつが、写真撮影機能だ。高校生のアイドルたちがライブ出演をする際に、プレイヤーはプロデューサーの目線で、彼女たちのパフォーマンスをカメラを構えて撮影することができる。

プレイヤーはカメラアングルを切り替えながら、ズームイン・アウトをしてお気に入りのショットを撮影する。撮影時は横持ちにするため、本当にスマホで撮影している感覚が味わえる。

このとき撮影した写真の一枚を選び「メモリー」としてカード化することができる。このカードには継承するスキルなどが記録されており、次の育成で使用することで有利に進められるようになる。メモリーは自分で見ることはもちろん、他のフレンドにレンタルすることもできる。

自分が手塩をかけて育てたアイドルのお気に入りの写真を、人に見せることができるのだ。名刺でも同じように写真を使えるのだが、メモリーはゲームシステムと連動しているのが大きい。エンディングムービー的な立ち位置だったライブシーンを飛ばさず、じっくり見ていいアングルを探すようユーザーを導いているのも仕組みとしてうまい。腕によりをかけて撮影したお気に入りの写真は、SNSにアップされているのをよく見かける。


(『学マス』の写真撮影は、それ自体がプロデュースゲームとしての性質にぴったりマッチしている)


(撮影した写真は能力を秘めた「メモリー」として保存され、フレンドにレンタルする際に自慢の写真を見せることができる)


(撮った写真は名刺として使うことも可能。プロデューサーとしてのロールプレイを深める仕組みだ)

『アイマス』シリーズは最初期から、カメラへのこだわりを見せていた。アーケード版初代『アイドルマスター』では「プロデューサーカード」と「ユニットカード」の2枚をゲームセンターで買ってプレイ時に使用した。ユニットカードは、育成アイドルのライブ時にプレイヤーが画面タッチで撮影したときの写真が反映され、印刷されるという仕組みになっていた。

まだスマホのない時代の話。アーケードゲームで撮影した自分の育成中のアイドルを、名刺のようにして他のプレイヤーに見せることができる画期的な技術だった。今は筐体はほぼ稼働していないが、最高の写真をおさめた当時使っていたユニットカードを大切に保存している人は少なくないと思う。

『学マス』はスマホゲームなので、スクリーンショットはプレイ中どこでも簡単に撮れる。しかしあえて不自由な「カメラ」を模した機能を利用すること自体が大事だ。『学マス』のキャラクターは歌もダンスも成長するシステムが有る。ゲーム内でシャッターを切って写真を保管することは、アイドルの成長を記録するプロデューサーのロールプレイのひとつだ。

大切なキャラクターなのだから、最高の一瞬を撮って見せたい。可愛く写してSNSでシェアをし、他の人に見てもらう行動は、アイドルの宣材写真を美しく撮って売り込むプロデューサーの活動と似ている。

初代『アイマス』『学マス』共に、シャッターチャンス自体はかなりシビアだ。簡単に実装できそうな機能(巻き戻しやコマ送りなど)はあえて入れず、カメラが持つ「最高の一瞬を切り取る緊張感」を疑似体験させようという制作陣の意図を感じる。

現在カメラ機能が使えるゲームはとても多い。各種メタバースではカメラ機能が急速に進化している。そのいくつかの例を取り上げながら、人間はなぜ「面倒くさい操作が必要なカメラで撮影する体験」にこだわるのかを追ってみたい。

ゲームにおける推しの撮影、旅の記録

キャラクターや世界を自由に撮影したい、という思いは現在色々なゲームの中で汲まれている。

ビデオ撮影ゲームとして2000年には『カードキャプターさくら 知世のビデオ大作戦』という作品が発売されている。これは親友ポジションの大道寺知世になって、メインヒロインの木之本桜を撮影するゲーム。ずばり公式のジャンル名は「ヴァーチャル撮影ゲーム」だ。

魔法少女モノゲームとは思えぬ内容だが、変化球だらけな原作キャラクターの持つ味をしっかり捉えたコンセプトでもあった。大道寺知世は普段から木之本桜にかわいい衣装を作って着させてビデオカメラで撮影する、という記録魔。彼女の尖ったキャラクター性を活かしながら、女の子を好きに撮影できる、という欲求も満たしてくれる内容だ。自由度は低かったが、ゲームの3DCGのクオリティが徐々にあがってきた時代だからこそ生まれた作品だった。

最近だと『原神』はカメラ機能がしっかりしており、ファンが撮影した画像も多くSNSにアップされている。アイテムである「写真機」を手に入れて装備すると、自キャラと周辺の景色を撮影できる、という物体の感覚と体験が重視されているのが特徴だ。

フォーカスをあわせたり、キャラクターの表情を変えたりと設定できるのできれいな写真がたくさん撮れる。どちらかというと雄大な背景の中にキャラクターを入れる、という方向性の写真を撮るのに向いているシステムになっている。もっと面白い絵をとりたいという場合は(こちらに視線を向けるなど)かなりテクニックがいるので、それを試行錯誤してネットで手法を教え合うのも、ひとつのゲーム性としてSNSで盛り上がっている。


(『原神』では写真機を入手することで、使っているキャラクターを軸に写真撮影ができる)


(「写真機」を入手しないと撮影ができないという不便さも、キャラクターたちの旅への没入感を深めてくれる)

ここで気になるのが、撮っている人、撮られている人が誰なのかだ。撮られているのは「キャラクター」であって「自己投影キャラ」ではない。複数人で撮影しているファンも、好きなキャラのコスプレ撮影としてワンシーンを再現するなどが多い。いうなれば撮影されているのは、キャラクターの動きを再現するコスプレイヤーとしての意識が強いようだ。物語性のとても強い作品なので、撮影者としての「自分」は写真には入りづらい。

もっと極端にキャラクターを切り離して、離れた位置から撮影できるようにしたのが『ギルティギア』や『グランブルーファンタジーVS』シリーズ。これらのゲームにはフィギュアを鑑賞できるモードがあって、自由にキャラモデルをいじりながら撮影をすることができる。ポーズも変えられるし、複数人をならべてアニメのワンカットみたいにもできる。シチュエーション作りの幅があるので、ありえないストーリーを写真で作る遊びが可能だ。

このフィギュア撮影は、全くしなくてもゲームに支障がない。写真撮影行為を、あくまでも自分のものとして保管したりシェアしたりする「コレクション」のためのものとして成立させている。


(『グランブルーファンタジーVS』シリーズではデジタルフィギュアとしてプレイキャラやサブキャラを並べて撮影ができる。カメラの機能はものすごく多い)

「推し」の撮影はできるだけきれいに、完璧に撮影できるかどうかが大きなポイントのひとつ。こうなるとプレイヤー自身はそこに入らず、ちょっと離れたところから撮っている距離感になる。本編にかかわらず、自分のプレイにも関係しない部分だからこそ、プレイヤーのこだわりが如実に出て「作品」を作ることができる。

ゲーム本編に関わる撮影

撮影がゲームの主軸になる場合もある。有名なものとしては『ポケモンスナップ』シリーズがあげられる。ポッド型の乗り物に乗って島のあちこちにいるポケモンを写真に収める、というのが主な内容で、ポケモンに餌をあげて反応を引き出して撮影するなど、触れ合い重視の内容になっている。よい写真であればあるほど、スコアが高くなっていく仕組みだ。

元々ポケモン自体コレクション要素の強いゲームだが、技術を駆使したよりよい写真をコレクションすることに絞っているこの作品は、カメラを扱う楽しさの再現が徹底されている。「エクストラ撮影」では写真の明るさやぼかしや撮影範囲の調整ができ、フレームを加えるなどの加工も可能だ。


ウムランギジェネレーション』は、何を被写体にして撮るか、露出や色相彩度の調整はどうか、構図は取れているか、などが評価されて納品し、報酬を得るというゲームだ。
実際はそこまで厳密に評価されるわけではないのだが、写真のクオリティに凝り始めるといつまでも遊べてしまう中毒性があり、話題になった。

これらのゲームを含め「写真撮影がゲームそのもの」という作品は、ミッションとしては「必要なものが映っているかどうか」「サイズと構図はどうか」くらいの判定なので、本格的な技術がないとクリアできないということはない。

しかしとことん凝った写真を撮影する機能が備わっているのは、制作者側のカメラへのこだわりだ。ただクリアするのではなく、写真を撮影することの楽しさを、体験してほしいという意図を感じる。

プレイヤー=キャラクターとしての没入感

今のSNS文化を取り込んだシステムに「ゲーム内の自撮り」がある。かつては一人称視点から(自分を入れずに)全体を撮るか、自キャラを含め三人称視点でスクリーンショット的に全体を撮るかが中心だったのに対し、カメラをひっくり返して、自分を撮ることを意識的に行うゲームが出てきた。

ポケットモンスタースカーレット・バイオレット』はその顕著な例のひとつ。十字キーを下に押すとカメラが起動でき、ポケモンや風景やNPCを撮影することができる。ここでYボタンを押すとカメラをひっくり返して自撮りモードになる。ちゃんとカメラを持っているような演出が楽しい。エモートなどを入れることもでき、撮影の自由度は高い。

『ポケモンSV』はオリジナルを作れるキャラクターメイクがあるため、プレイヤーにとって自分の分身・アバターとしての意味合いが強い。撮影した写真はゲームのユニオンサークルのメンバーにシェアすることができるのもSNS的だ。

自撮りは『龍が如く8』や『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』『Marvel’s Spider-Man』などでも可能だ。「ポケモンSV」と異なり、この3つはプレイヤーが固定のキャラクターを動かすゲームで、自分自身の固有アバターではない。

手に持つカメラで自撮りをすると、そこに「キャラクター」が映る。春日一番やリンクやスパイダーマンが自身のアバターになっているかのような疑似体験だ。これが、プレイヤーがゲーム世界にぐっと没入するギミックとしてうまく作用している。

思い出の共有

今まではソロがメインのゲームでのコレクション性について見てきたが、さきほどの『原神』などオンラインゲームで複数人で遊んでいる場合の撮影は、意味合いがまた大きく変わってくる。特に重要なのが仲間との思い出の共有だ。

あつまれ どうぶつの森』はほぼメタバースと言って差し支えないくらい、オリジナルワールドを作り込んだり、人と交流したりできるゲームだ。このゲームの中のスマホにはカメラアプリがあり、住人や友達を撮影したり、自撮りしたりすることができる。三脚機能もあるので、カメラを離れた場所に置いて構図を整えることも可能だ。

このカメラアプリはかなり高性能で、様々なフィルタ機能や、日付を入れるようなフレーム機能も搭載。撮影した写真はSwitch本体に保存される。XやInstagramにも簡単にシェアできるので、思い出つくりやこだわった自撮り表現にはぴったりだ。技術的な面白さとは別に、たとえシェアしなくても、みんなで集まってカメラ機能で撮影する、という事自体がいい思い出になる。

バーチャルから現実に飛び出すキャラクターの撮影

アイドルマスターミリオンライブ シアターデイズ』や『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトスポット(デレスポ)』などにもカメラ機能がついている。こちらはゲーム内撮影だけではなくてARを利用した、キャラクターをリアルに引っ張りだしてくる撮影手法だ。

スマホでカメラを外に向けるとARでアイドルたちが平らな場所に登場。ポーズを取らせてあたかもそこにいるかのように撮影することができる。


(『デレスポ』のシステムでは、普段の舞台の上での撮影と、ARで現実世界にアイドルを呼び出す撮影の両方が楽しめる)


(『ミリオンライブシアターデイズ』も同様に、アイドルをARで現実に呼び出すことができる)

カバーの『ホロリー』も同様に、ARを活かした撮影機能だ。ホロライブのメンバーの3Dモデルが搭載されており、リアルの空間に彼女たちを呼び出して撮影できる、というすぐれものだ。


(VTuberを現実に呼び出して撮影できるというのは、なかなか類を見ない。ときのそらと一緒にいるあん肝まで呼び出せる)

ARフィギュアアプリである『HoloModels』も同様に、好きなところに買った推しキャラフィギュアを置いて撮影できるので、旅行のお供にもってこい。自分のアバターを入れてポーズを取らせ、AR撮影ができる『FumiFumi』のようなアプリも存在する。

キャラクターのアクリルスタンドやぬいぐるみを旅行先や聖地巡礼先に持っていって、写真に一緒に収める、というのは昔からある楽しみ方だ。推しがかわいい・かっこいいこと、それを旅先で撮影すること自体が思い出としても大事なわけで、自分の姿はそこには必要がない。使う人によってバラバラだとは思うが、自分の姿を写したくない人にとって、旅先のぬいぐるみやAR撮影は、いわば自分のアバター的な意味合いもあるのかもしれない。これだけ色々技術が進歩しているということは、写真を撮ること自体は好きだという人が多いのは間違いない。

メタバースでのカメラ表現・なぜ撮影するの?

VRChat、cluster、Resoniteなどのメタバースでは、カメラ機能は欠かせないものの1つになっている。ただの記録であればスクリーンショットでも問題はないだろう。しかしメタバースはその世界に入って生活する場所だ。その空間のなかでできるだけリアルに、かつバーチャルでしかできない技術で写真撮影をしたい、と考えるのはもっともな流れだろう。この2年くらいで、VRChatもclusterも大幅にカメラ機能が進化したあたりからも、需要が高かったのがよくわかる。

写真を撮る最大の理由のひとつは、先程の『どうぶつの森』同様に、思い出を共有することにあるだろう。日本のVRChatやclusterでは多くのイベントで、終わり際に集合写真を撮る文化がある。正直数十人並ぶとパソコンがすごく重くなるものだが、それでも集合写真の時間は参加者には大事にされている。

みんながお互いにスナップショットを撮るのはリアルと同様だ。むしろリアルよりもハードルが低いかもしれない。というのもみんな自分の好みの姿のアバターを身にまとっている、いわばおしゃれをしている状態だからだ。加えて「Friend」や「Invite」などで部屋を立てている場合は、無関係な人は入ってこない。友達しかいない状態だと他の人が映り込むことがなく、気軽にシャッターを押せる。

メタバースのプレイヤーの中では「おはよう」というポストにあわせて自撮りを載せる「おはツイ文化」が一部で広がっている。アバターもカメラ技術もとてもクオリティが高い自撮り写真が、数多くSNSに投稿されている。

「自分をかわいく見せたい!」という気持ちはもちろんあるとして、自身のお気に入りのアバターをひとつのキャラクターとして、SNSでアピールするプロデュース活動だと言う人もいる。自分自身と、撮影している自アバターを、別人格として捉えているということだ。この点だけを考えると『学マス』のアイドルライブでシャッターを切る心理と、比較的近いかもしれない。

近年はバーチャルフォトグラフィと呼ばれる芸術的な撮影活動も行われている。こちらは近年ゲームとメタバースの中の活動として急激に伸びている表現ジャンルで、しっかり撮った作品はバーチャルならではの味があるアート作品として、世界的に広く認められ始めている。

メタバースでのカメラ撮影表現

clusterのカメラは特にデスクトップやスマホで入っている状態で使いやすい作りになっている。撮影は簡単で、メニューから選択すれば大きなカメラ画面が出てくるので、直感的に触るだけで大体映すことができる。自撮り用にレンズを反転させることができ、ネームプレート表示のオンオフもできる。


(著者をclusterのデスクトップモードで撮影している場面。レンズ操作モードにすると自分の周りを自由に動かせるようになる)

デスクトップモードで特に便利なのはレンズ操作モードだ。左下にあるVを選択すると、自分自身が動くのではなくてカメラレンズだけを上下左右自由に動かすことができる。ズームも併用すればだいたいのものはカメラにおさめられるはずだ。これによってclusterのハイクオリティ写真がどんどん生まれるようになった。

ネックはこのドローンカメラがVRモードだと使えないということ。ぜひとも機能を充実させてほしいところだ。

VRChatのカメラは初期から大幅に進化し、使い切れないほどの機能が搭載されるハイクオリティなものになっている。起動したあと選択するものが多すぎて悩みそうになるが、撮影するだけならメニューから選んでシャッターを切るだけなのでそこまで難しくない。


(VRChatのカメラは機能がものすごく多いので、触っているだけでかなり楽しい)


(著者を自撮りしている状態(カメラを反転している)。これはマニュアルでフォーカスを変えているので、背景がボケて奥行きが増して見える)

凝った撮影をしようとなると、自由度が高いため延々と遊べてしまう。フォーカス、フィルター、ドローンカメラ、ピン機能など、かなり細かい設定で撮影ができる。バーチャルならではの機能で、被写体のアバターだけを残して背景透過する、なんてこともできる。ポスターやアー写を作る際にものすごく便利だ。


(「ぽこピーランド」にあるプリクラは、是非一度試してほしい機能満載! カメラ機能を使えばこのようにちゃんと保存できるプリクラっぽい撮影ができる)

VRChatの「ぽこピーランド」にあるプリクラは、写真撮影の楽しさを思い出させてくれるもののひとつ。現実のプリクラさながらの撮影が可能で、自分とぽんぽこピーナッツくんの写真や友達との写真が撮れる。これはVRCのカメラを使えばスクリーンショットとして保存することができる。思い出づくりにはもってこいだ。

美少女ゲームツクール2020 HD版 ADV-Maker 2020 HD Edition」のワールドでは、カメラのギミックを利用してノベルゲームのような画面を自在につくることができるようになっている。背景や小物、セリフなどバリエーションが多くかなり遊びがいのあるワールドだ。ここではまとっているアバターは自分ではなく「架空のゲームのキャラクター」としてのロールプレイになる。VRChatのカメラ機能を二次元的ミームに落とし込んで遊べる例だ。


(カメラ機能を使うことで二次元になりきれるワールドもVRChatには存在する)

Resoniteではカメラによって、撮った写真をその場で物体にして、みんなに手渡しできるという唯一無二の遊び方ができる。他のメタバースでは写真はデータとして保存されるのだが、Resoniteでは撮った写真をアイテムとしてその場に出せる上に、そのアイテムは複製して各々が持って帰る事が可能だ。これは個々がゲームの中でものを持ち歩けるインベントリのシステムがあるからで、データであるはずの写真に物質的な存在感を持たせることが出来ているのは体験として非常に面白い。


(Resoniteにあるギミックのひとつが、写真を実体化するカメラ。撮影してワールドに出現した写真はそれぞれがコピーして、持ち帰ることができる)

シャッターが刺激する人間の欲求


(VRChatのポラロイドカメラギミック。ログアウトしたら消えてしまうが、撮りづらいカメラで撮影して実物が擬似的にでてくる懐かしい感覚は、味わう価値あり)

VRChatではポラロイドカメラのギミックを有志が頒布している。手に構えて撮影することができ、実際にポラロイド写真さながらに写真アイテムが出てくる。残念ながらこの写真を残すことはできないが、物体として出てきた写真は壁などに貼ってみんなで見ることができる。人と記録を共有し、かつ不便を楽しむ姿勢がよくわかるギミックだ。

Polaroid Camera for Vrchat World – Fairplex Shop – BOOTH
https://booth.pm/ja/items/3864886

VRChat用「撮れる!描ける!インスタントカメラ(ポラロイドカメラ)3.0」【アバター用アクセサリー】 – 竜のねどこ – BOOTH
https://booth.pm/ja/items/2921754

VRChat ギミック ポラロイドカメラ (Polaroid Camera) – いるか興産 – BOOTH
https://booth.pm/ja/items/5745241

VRC Instant Camera System – sistersingaming – BOOTH
https://booth.pm/ja/items/4506857

写真撮影はただの記録作業ではない。むしろゲームやバーチャルだったら記録はもっと合理的でいいのに、わざわざ現実のカメラの仕組みをなぞって不便にすらなっている逆行現象すらある。

これは写真が人間の欲求を満たすものとして昔から機能しているから、というのがあるだろう。人はカメラを通じて、よい情景とよい時間を切り取る。その際に必須なのがシャッター音だ。そもそもシャッターなんてゲーム内にないはずなのに、カシャッという音はどうにも気持ちがいい。「撮影した」という事実を知る以上の、「写真を撮っている感」の体験に意味がある。

まだまだ「新しい方向」「レトロな方向」両方に広がりそうなバーチャル写真撮影の進化。その影響はアバター衣装の販売の多様化や、ゲーム内のコスチュームセットの増加に及んでいくかもしれない。アバター自撮りが好きな人や思い出写真をアップしている人たちで、新しく買った衣装の写真を撮影している人はものすごく多い。メタバース内イベントにあわせて服を新調する人もいるし、ゲーム内でも期間限定イベントにあわせてキャラクターにオシャレをさせて、撮影した写真をSNSにアップする人もいる。

自分のために着替えるより、写真を撮ってシェアできるとなると服を買うモチベーションもあがる。写真文化が今後大きなコンテストなどに発展するとき、それにともなってアバターや衣装が売れ、経済効果をあげていく可能性は十分ある。メタバースの場合、ファッションが進化したら、そのファッションを撮影するためにグレードアップしたカメラの機能もユーザーによって作られるかもしれない。

進化したカメラ機能が「自分の眼の前に手で持っていって、フィルムを巻かないと取れない」などのような機能がつく方向にも進化しうる。もし、そうなれば、“無駄”と“不便”に対して価値を得られるような、心の余裕と技術磨きをさらに楽しめるステージに向かえそうだ。


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