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メタバース 2023.01.20

「原神」に多くのユーザーが激ハマりする理由は、“歩く”だけで見えてくる

「HoYoverse」制作のオープンワールドゲーム「原神」。その人気は非常に高く、新規キャラクターや新規シナリオが発表される度にSNSでは大きな話題となっている。2023年1月現在は年に1度の大規模イベント「海灯祭」も開始され、注目度は増す一方だ。

「原神」は基本的にフィールドにいる敵を倒し、アイテムを獲得し、キャラクターを成長させるアクションゲームで、道中には数多くのイベントが用意されている。キャラクターは基本的にガチャ(祈願)システムで入手でき、好きなキャラをゲットしたら、その育成のために敵を多く倒すというのが大きなモチベーションになっている。

また魅力のひとつとされているのが本編シナリオ。「原神」のストーリーは謎が多いうえに複数のキャラクターの目論見が複雑に絡んだ重厚な内容となっているため、各ユーザーがSNSで考察を発表したり、世界観を解説する動画を投稿したりといったことが積極的に行われている。

そういった部分に焦点を当てれば、本格のアクションRPGというイメージが強くなるが、実際のところ、このゲームの魅力はそこだけに留まらない。HoYoverse公式サイトの言葉を借りるなら「没入型の仮想世界体験」にこそ、このゲーム本来の持ち味があると言っても過言ではない。どういうことなのか「原神」の世界を“歩きながら”説明しよう。

(既プレイヤー向けの注意事項だが、著者はスメールの最新シナリオまでクリア済み。シナリオのネタばれにならない範囲でスメールの画像も掲載することを、あらかじめご了承いただきたい)

シナリオを進めず、ただ歩いてみる

ともかく「原神」の世界を歩いてみる。このゲームはストーリーを進めるほどに冒険できるエリアが徐々に広がっていくのだが、実は(ある程度であれば)ストーリーを無視して、好き勝手に歩き回れる。エリアごとに重要なイベントが発生することもあるが、それらを攻略する順番はプレイヤーに委ねられているため、(序盤のチュートリアル的展開を除けば)色んなタスクを無視したままでも大丈夫だ。つまり、自由。まずは行ける範囲まで足を延ばすことにしよう。

最初のフィールド「モンド」は、緑豊かなエリアで、パッと見た印象は「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」の序盤のハイラルの雰囲気に近い。場所によっては深い谷や雪山、ゴツゴツとした岩場などもあるが、基本的には平原や台地の目立つ地域だ。それらを歩き、登り、飛び越え、時にイノシシを狩ったり、敵から逃げたりしながら、旅する。

広い。とにかく広い。時折、廃墟や遺跡に出くわし「これは何かゲームの重要な場所なのかな?」と想像する。もちろん、この時点では、ストーリーを進めていないので、真相は分からない。何も分からないまま歩くこの感じは廃墟探索の楽しみにもしかしたら似ているかもしれない。

もちろん、人の住んでいる地域もある。中世ヨーロッパ風の城塞都市を中心として、動物の狩りを生業とする町、大規模な酒造を営む地主の家などがある。ただ、そういった人の住む気配のある地域はとても少ないため、見つけられるとホッとする。こんな敵だらけの世界でよく人の営みが続いているなと感心するが、ところどころに立ち行かなくなって放置された場所などもあるので、かなり厳しい世界であることが想像できる。

と、ここまでは正直に言うと、よくあるオープンワールドっぽい雰囲気という印象。サバイバルは楽しめるものの、まだまだアクションに慣れるためのチュートリアルステージだなと思っていた。ただ、この時点で「このゲーム、どこまでも歩き回れそうだな」という期待感を持たせてくれたことは大きかったと思う。

このゲームの本番は「璃月」から

印象が変わったのは、次のエリア「璃月(りーゆぇ)」から。「別のゲームがはじまった?」というくらい雰囲気が変わると言っても良い。

「璃月」は、中世中国のような風景と街並みの広がるエリアなのだが、もともと中国開発のゲームだったためか、世界観づくりの力の入れようが尋常では無い。仙人の住んでいそうな山嶺、つい見惚れてしまうほど美しい棚田の風景、湿地帯の中央に構えられた巨大な旅館、そして中心都市となる貿易拠点「璃月港」の美しさ……。「原神」のスタッフによるインタビューによれば、璃月の景色の一部は、中国湖南省の「張家界」などの実在の土地をモデルにしているそうだ。

歩く楽しさは、璃月から明らかにレベルアップする。何も目的を置かずに歩き回れば深山幽谷の絶景に出くわし、ほぉ……と息をつく。道なき道を歩いた先で見られる景色に感動するという体験自体が本来の旅の楽しみと通じるものとなっている。

そして、活気のある「璃月港」の街並みを眺めるのも、古き良き中国世界を観光しているような趣がある。実際、港には数多くの料理店があり、講談師の話を聞きながら酒宴を楽しめる店や、船の上で高級料理を楽しめる店など、それぞれの店舗ごとの個性がしっかりとしている。また漁港の雰囲気も良い。せわしなく動き回る労働者と商売人、ぼんやりと釣りに興じる老人、物憂げに橋から海を見つめる女性。キャラクターそれぞれに人生があることを感じさせてくれるのだ(ストーリーを進めると、そういったキャラクターたちがドラマに加わってくることもあり、より愛着が持てるようになっている)。

ここで料理にも目を向けてみよう。「原神」は料理レシピの多さも特徴のひとつで、レシピを獲得した上で食材を入手すれば、さまざまな料理を作れる。なかには完全に架空の料理もあるが、現実の食材で再現できそうなものも多く、特に「璃月」では多彩な中華料理の数々を獲得可能だ。料理ひとつひとつにも調理の手順や風習などの説明文があり、どのような料理文化が背景にあるのかをうかがえる。

初めて港を訪れた際は、料理屋の店主に話しかけてレシピを購入するのが一番の楽しみだった。「その町のその店でしか食べられない味を発見できる」という体験が得られるからだ。

もちろん璃月に至るまでのストーリーも面白く、とある地点まで物語を進めれば、この都市の権力構造や直面している社会問題なども浮き彫りとなってくる。策謀渦巻く一筋縄ではいかぬ街というのもアジアっぽさを感じさせてくれるポイントで、とても良い。気が付くと、もっぱら璃月を歩き回ってしまうほど、この街のとりことなっているのだ。

巡るほどに考察したくなってくる

「原神」には日本を舞台とした地域もある。「稲妻」と呼ばれ、明らかに江戸時代をモデルとした街並みが再現されている。特に海周りの景色は美しい上に、昔の日本っぽさを感じさせてくれるスポットがいくつかある。

残念なことに、稲妻は非常に歩き回りにくい。ただ歩いているだけなのに雷が落ちてくる場所や、霧に包まれて特定のポイントに強制的に戻される場所、あまりにも敵が密集して写真を撮る余裕がない場所などがあり、普通に散歩をするためには、結構なボリュームのシナリオをクリアしないといけない。

一方で「考察したくなる場所の多さ」は璃月を超えている。謎めいた空間や、歴史的建造物が多く、ここがストーリーとどのように絡んでくるのかを考えながら歩くのが楽しい。中でも(かなり長大なミッションをクリアしないと到達できない)某所は「原神」という物語の核心に迫るような情報が詰まっているため、世界観の考察に重きを置きたいユーザーはここから離れられなくなるだろう。

考察という繋がりで“本”にも注目しておきたい。「原神」では本もアイテムとして購入したり拾ったりできるのだが、なんと個々の本の物語もしっかり読めるようになっており、長いものだと普通に文庫本1冊くらいありそうなものもある。ゲーム世界を歩いているだけのはずが、いつの間にか読書の時間になってしまう。

本の内容は現実の物語ともリンクするものから、作中人物の裏側を知れるものまで様々で「考察するなら、これを全部集めてね」という運営側のメッセージとしても受け取れる。稲妻では、とある人物が営む出版社が繁盛しており、流行の書籍について話し合っているキャラクターたちもいて、そこで話し合われている内容が、明らかに日本のオタクカルチャーをモチーフにされているのも面白い。日本ユーザーであれば、稲妻のどこに日本らしさがあるのかを発見するための旅をするのも良いだろう。

あらゆるモノが過剰に詰め込まれた世界

さて、現状進行中のシナリオのメイン舞台となっている「スメール」も歩こう。南アジアや中東、北アフリカ地域などをモチーフとしたとされる森林と砂漠の広がるフィールドだ。

広い。とんでもなく広い。森林地帯と砂漠地帯を合わせれば、モンドなど比べ物にならないほど広い。しかも鬱蒼としたジャングルの中は道が非常に複雑化しているし、地下に繋がる洞窟もいたるところにあるため、めちゃくちゃ迷う。散歩しているのか迷子になっているのかは、もう分からない。冒険をしている緊張感は、他エリアの比ではないだろう。

道中にあるモノの量も過剰だ。動物や植物の種類が一気に増え、画面の中の情報量が多い。何が何でも幻想的な中東のファンタジー世界を生み出してやるという開発陣の異常な執念が宿っていると言っても良いだろう。面白いのは、スメール以降から、人に家畜として飼育されている動物や、条件次第では敵対状態になる野生動物などが新たに登場し、生態系の豊かさによりリアリティが増している。料理や本、動物など、これまでに紹介したものを見ていくと、「原神」の世界観の細部の表現への強いこだわりが見えてくる。

そもそも、HoYoverseは「世界」をつくること自体に異様なこだわりがあることは分かってきただろう。現実の世界の地理的特徴や風土、文化などをうまく取り上げた物語の舞台を作り上げ、その上で「この世界が本当にある」と見せるための要素を“過剰”なまでに追加している。本を開けば物語が掲載されていて、料理レシピをみれば都市ごとの特色の出ている素材が使われている、というように、あらゆる要素の実在感が大切にされている。だからこそ、歩き回るだけでも「自分は本当に『原神』のテイワット大陸を旅しているんだ」といった「没入型の仮想世界体験」を得られるのだ。

実際、昨年9月にはJTBが「原神」の舞台をガイドブックとして紹介するという異例の書籍「るるぶ原神」が発刊され、話題となった。ゲームの世界を「観光地」として紹介できるほどにリアリティが追及されていると言えるだろう。

今回紹介したもの以外にも「原神」には、オリジナルのマップをクリエイティブして他ユーザーに共有する機能や、マルチプレイで友人たちと一緒に世界を巡れる機能などもある。こういった要素を利用すれば、MMORPGやメタバース系サービスとも近似した遊び方が可能だ。

もちろん、根本はアクションRPGなので、その要素だけを存分に遊びつくすといったプレイスタイルもできる。また最近では「『原神』の世界で流行っているカードゲーム」を遊べるといった要素も増え、本編を隅に置いてカードに夢中になっている人も少なくない。

他にも、釣りや狩猟といったミニゲーム、マップの宝のコンプリート、登場人物たちとの交流がメインとなる任務……。やはり、あらゆる要素が過剰だ。どれだけプレイしても遊びつくせないボリュームとなってしまっているが、その「過剰さ」自体も現実の世界を再現した結果なのかもしれない。

ひとまず、今も順調に遊べる範囲を拡大し続けている「原神」という世界を一度訪れて、世界をぶらりと歩き回ってはどうだろうか? いつの間にか没入してしまうような要素は、そこらに無数に転がっているはずだ。

「原神」の詳細はこちら。
https://genshin.hoyoverse.com/ja/

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