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医療・福祉 2019.01.10

5G等最新テクノロジーがもたらす医療の変化、メンタル医療×VRの「両刃の剣」 – 起業家医師から見た医療×VRのいま

医療向けAR/VRは米国を中心に導入が進んでおり、活用範囲の規模と質の両面において進化を続けています。外科医等のトレーニング、手術のシミュレーション、リハビリ、疼痛や不安の軽減など、領域は拡大。AIとの組み合わせで医療機器として承認を得るなど、治療方法としての価値も高まっています。

本記事では医療向けAR/VRの今を、起業家医師の視点で切り取っていきます。

5Gがもたらす変化:医療にも活用の場

米国から5Gがもたらすインパクトを6つの局面から伝えるレポートです。このレポートでは、以下の7点に焦点を当てています。

・ブロードバンド・インターネットの範囲拡大
・スマートカー、スマート都市、そしてスマート工場
・全てがオンデマンド化する
・より没入感の高いARやVR
・よりスマートな医療
・より優れた法の執行(警察の機動力向上)
・P2Pコミュニケーションの発展

これらの中から「よりスマートな医療」に注目。まず5Gの登場で、MRI等の画像データや個々の患者のデータを遅延なく共有できるようになり、診断や処置の判断がより正確かつ迅速となることで、医療の質的な向上が見込まれます。


(ジョリーグッドによる5Gを利用した他視点VR同時配信システム「GuruVR Multi-View」。2018年12月にはJ&J;やNTTドコモと共同で、遠隔リアルタイム医療研修VRサービスの実証実験が開始されている)

では翻って、医療AR/VRはどのように進化し、どう活用されていくのでしょうか。例としては救急用の無人ドローンとVRを組み合わせ、患者の状況を医師が確認しつつ、患者にリモートでアドバイスを行うことも可能になるでしょう。災害時や山岳救助での応用が大いに期待できると考えられます。

またARで患者のバイタルデータを自分の視野に掲示することも可能になるでしょう。緊急処置が必要な場合、処置によるバイタルの変化をリアルタイムで視野に捉えることで正確で迅速な評価が可能となり、より適切で効果的な対応に繋がります。

(参考:Lifewire、2019年1月9日時点)

メンタル領域の医療VRの進化は、深刻なリスクを孕んでいる

2018年のAR/VR のトピックスTop 10に関するレポート。9番目にランク・インした医療VRについては、医学研究を基盤に開発されたVRによる暴露療法(PTSD等の治療に活用)の成果を挙げています。一方で安価なVR機器の登場でVRが身近になった今、今後ソーシャルVRとAIが融合すると、医学的な専門知識を持たない人々がセラピーと称するメンタルサービスを提供し始め、深刻な倫理問題が生じると警鐘を鳴らしています。


(VRを活用した心理的な療法は今のところ成功を収めており、複数の活用事例が世界各地に存在する。デバイスが入手しやすくなることは普及の観点からは望ましいものの、専門知識のない“自称セラピスト”による悪影響を懸念する声もある)

専門知識を持たずにセラピストと称し、メンタル領域で独自サービスを提供する人達はすでに存在しており、心療内科医である筆者はそういったサービスで傷を深めた方々に向き合うたび、その“自称セラピスト”の無責任さに憤りを感じます。この記事が指摘するリスクは、桁外れに大きいものとなることは避けられないと思われます。デバイスが安価になり、5Gなどにより通信回線が高速化することで普及が進めば進むほど、この問題は深刻化するでしょう。一方、専門知識に基づいて適切に活用すれば、医療におけるVRは大いに効果が期待できます。メンタル領域の医療VRの進化はまさに「両刃の剣」です。

専門家の一人として、私が責任を持って実践していくと決心していることが2点あります。まずは「AI×AR VRを活用した良質なサービスの開発と普及を、医療の枠組みで専門家がエビデンスに基づき牽引すること」。そして「無責任なサービスで傷ついた人々へ医療現場の専門家が適切に対応できるよう、国内外の最新状況や対応方法を把握し、発信する等でサポートする」ことです。

(参考:DIGITAL BODIES、2019年1月9日時点)

デジタルトランスフォーメーションで変わる医療

こちらのレポートでは2019年、医療領域で注目すべきデジタル技術として、

1.遠隔医療
2.AI
3.ブロックチェーン
4.AR/VR
5.デジタルツイン
6.ウェアラブル機器とIoT

を挙げています(記事中では特に1~5が医療に及ぼすプラスのインパクトが大きい、と語られています)。

筆者が興味を持ったのは、AR/VRと他の技術の併用で広がる可能性です。記事冒頭で紹介されている「Addison」と名付けられたバーチャル介護者は好事例です。AddisonはAIを活用して双方向の会話をこなし、24時間365日、在宅での健康チェック機能(患者の活動モニター、服薬の指示、健康状態悪化の兆候を検知、バイタルデータを収集し評価するetc)を搭載しています。Addisonには、少なくとも遠隔医療、AI、VR、ウェアラブル機器とIoTの技術が活用されています。


(画像:“バーチャル介護者”Addisonのイメージ。Addison.care 公式Webサイトより)

またVRとデジタルツインの併用は、医療の安全を大きく高めるでしょう。デジタルツインは産業機器などの再現モデルをデジタル上に構築し、現実の機器から集めたデータを随時反映させてシミュレーション、故障等を予測する仕組みです。医療サービスの提供プロセスが変化する際の影響を事前に確認する等の応用が可能で、VRと併用すれば影響を事前に「体験」することができると考えられます。

(参考:Forbes、2019年1月9日時点)


BiPSEEは、ママやパパの視点から、ARとVRを活用し、子どもの医療の現場を豊かで楽しいものに変えていきたいと考えています。BiPSEE Kids でご意見をお聞かせください。

 


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