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2017年のVRゲーム企画ならではのゲームデザイン『Airtone』【セッションレポート】

2017年10月8日に開催されたゲームエンジン「Unreal Engine 4」開発者向けイベント「UNREAL FEST EAST 2017」にて、株式会社ヒストリアの佐々木瞬氏による「VRゲーム”Airtone”制作事例 ~VRを活かす3つのゲームデザイン的挑戦~」のセッションが行われました。

筆者が聴講した感想としては、VR元年と言われた2016年の翌年にリリースという状況を踏まえた商品コンセプトを、いかに実際のゲームデザインに落とし込み、そしてイテレーション(計画から実装、検証まで短いスパンで反復して行う事)により製品にしあげていくか、その丁寧な過程に納得しっぱなしの講演でした。
セッション時の動画とスライドはインターネットに公開されています。講演ではテストプレイの重要性などにも触れていましたが、本稿では商品企画から導き出されるコンセプトとそこから降りてきた3つのゲームデザインの柱、そしてそれをいかに形にしていったかについてレポートします。

講演スライド (SlideShare)

講演動画(Youtube)

https://www.youtube.com/watch?v=3IW3502M_Hw&list;=PLr_Cbd4sUDTykH6Q5czJNhkh6bz5_RKH4&index;=7

コンセプトとそこから導き出されるゲームデザイン

『Airtone』はコンセプトとして、「和製王道VR音ゲー」「見ていて楽しい」「10時間遊べる」という点を掲げたそうです。まず(VRゲームとして)踏み荒らされていない分野で定番アプリを狙い、拡散しやすく、(VRゲームとしてありがちな)一発ネタではなく長く遊べる仕組みを入れていかないと売れないだろうという、今の時期のVRゲームならではのコンセプト戦略が見えてきます。

そのコンセプトをゲームデザインに落とし込んだのが下記の図です。

・「王道リズムゲームのゲーム的な面白さ」はキチンと確保しつつ
・「VRならではの身体を動かす空間表現」で新規の面白さに挑戦し
・VR空間での「少女と一緒に暮らす体験」で長時間遊ぶゲームループを仕込む

上記をさらに具体的にして、以下のような3つのゲームデザインでのチャレンジを立てていた、とのことです。
1)判定線の無い音楽ゲーム
2)VRならではの遊びを与える未知のドローパート
3)少女(ネオンちゃん)との生活空間を作り出す

1)判定線の無い音楽ゲーム – リズムゲームをVRにするには

数々のリズムゲーム、ダンスゲームを研究し、開発経験もある佐々木氏。和製リズムゲームは「音楽にノってリズムを刻む」という基本の楽しさと、中級者以降向けの「攻略性」の楽しさで構成されていると分解し、それぞれをVRの文脈に落とし込みました。

「音楽にノってリズムを刻む」については、叩くアクションを基本動作として決定。先行するVRリズムゲーム「Audioshield」ではシンボルに手を合わせる形ですが、本作ではよりリズムにノれるようにコントローラーを叩く(ハンドコントローラーを振る)ことで成功判定されるようにしているとのことです。

さらに要素としてほかのバリエーションが欲しかったのと、「叩く」では正確なタイミングがつかめないというところから、「トリガー」(飛んでくるマーカーに合わせて、ハンドコントローラーのトリガーを押す)と「長押し」(2つのマーカーの間でトリガーを押し続ける)という要素を追加しました。

「攻略性」については、リズムゲームにおけるいわゆる「運指」(どの指で押すか)を意識させるような、そんな譜面が作れるような要素を入れたそうです。具体的には腕を動かす必要がある長押しトリガーを作ったり、ラインを5本(奇数)にしてどちらの手でマーカーを取ればよいか惑うようにしたりといった要素です。

しかし、
・手は2本しかないので、3つ以上のマーカーの同時配置はできない
・ハンドコントローラーで叩く動作をしても物理的な反作用がなく、「連打をする」ことができないため、連続してマーカーを配置するのに限界がある
という、普通のリズムゲームで難易度を上げる手法はVRの本ゲームでは使えないという課題もあり、運指で難易度を上げていくことにしました。

なお、ハンドコントローラーの振動機能が本ゲームにおいて「いい働きをしている」そうです。確かに、マーカーを叩いたりなぞったりするとコントローラーが振動して、それが心地よいです!

さてそのマーカーですが、当初はマーカーが縦横無尽に飛んでくる遊びを想定していたそうです。しかし、現状のOculus RiftやHTC ViveなどのVRヘッドマウントディスプレイ(HMD)の視野角は狭いため、手元で見られるのは狭い範囲に限られてしまうという壁に、開発してすぐぶつかってしまいました。

それを回避しようと、音や配置、UIを用いてマーカーが飛んでくる方向へと視線誘導をしようとするも、うまくいかず。

そんななか佐々木氏は、「そもそも既存の音ゲーだって、プレイしているときは手元を見ていない」と気づきます。

それを踏まえ、手元を見せることを諦め正面からまっすぐマーカーが飛んでくるようにして、手元に判定線を置かないようなゲームにすることにしました。

自分の手の位置を見えやすくする工夫を入れることで、テストプレイヤーの7割は初見で、説明があればほぼ100%の人が判定線無しでもプレイできるゲームになったとのことです。

他にも、移り変わる背景やVRならではの空間の広がりも見渡してもらえるよう、自分が移動し、かつチューブ状のコースを(酔わない程度に)曲げることで、視線誘導をできるような工夫も入れているそうです。

2)VRならではの遊びを与える未知のドローパート

VRならではの面白さとはどんなものかと考えた時に、人気のVRペイントツール『Tilt Brush』での体験を踏まえて「音楽に合わせてノリノリに描けたらさらに楽しいのではないか」という発想が生まれたそうです。

そこで、「指揮者のような遊び」「手本を見せて踊らせるダンスゲーム」という試作を一か月ほどで15本ほど作るも、体験させたい楽しさとは逆のものができたり、HMDの視野角の問題から遊びづらいものができたりしました。さらにリズムゲームのパートとのつながりが分かりづらいという問題が見えてきました。

開発期間の事も考え新しいチャレンジを諦めようとしましたが、リズムパートから想像しやすい形で、「トリガー長押し」マーカーの強化版のアイディアが生まれました。それは、マーカーが流れるチューブ外周以外も縦横無尽に動くレーンをなぞるというもの。

グラフィックスも通常のリズムパートから変化させることで、リズムパートとは別の遊びが生まれました。新パートを遊んでもらったところ、「いい感じ」であったうえ、リズムパートとのつながりもよくすんなりとルールを理解してもらえたということです。また、結果的にゲームに緩急がついたという効果も生まれ、いいことづくめだったようです。

3)少女との生活空間を作り出す – 長く遊ばせるルームパート

『Airtone』にはリズムゲームパートだけでなく、「ネオン」というキャラクターとコミュニケーションを行う「ルームパート」というものもあります。

ルームパートを入れた理由について、以下のような3点があげられました。
・リズムゲームパートが終わって戻ってくるのが、(HMDを外した)現実ではなく、このゲームの世界として、プレイヤーにこの世界で住んでもらいたい
・ルームパート内での家具を増やしたり、あるいはシナリオが進行したりするといった、リワード(報酬)の種類を増やしたい(リズムゲームの主たるリワードは楽曲だが、コストの都合でそれだけに頼ることはできない)
・宣伝や今後の展開を考える上で、『Airtone』というIPにキャラクター要素を入れておきたい

モーショングラフィック調のリズムゲームパートと比較して、ルームパートは、実在感を持たせることを意識したそうです。シェーディングもきっちりつけ(関連記事)、また物がつかめて投げられるといったギミックや部屋の中を見渡せて面白い仕組みを入れるなど、VRの空間を感じられるようにしましました。

ただし、シェーディングもリズムゲームパートと比べて違和感がないくらいの程度にはしたり、また「ネオン」の声も壁による遮蔽効果をオフにして彼女の行動が分かりやすくしたりなど、あえて現実にそのまま近づけるのとは異なる工夫もしています。

また、ルームパートではゲーム世界の設定と「ネオン」の事が少しずつ分かっていくような小規模なストーリーが入っています。中にはVRではより効果的に働く演出もあり、そこも評価されているとのことです。

ストーリーのネタバレになるため会場限定で、と講演動画が公開されることを忘れて話す佐々木氏。(公開された動画ではちゃんとピー音で大事な部分は伏せられてます!)
その話の展開でその演出がきたら確かにグッとくるな、という内容でした。

まとめ

このように、
1)判定線の無い音楽ゲーム
2)VRならではの遊びを与える未知のドローパート
3)少女(ネオンちゃん)との生活空間を作り出す
とそれぞれコンセプトの狙いごとに異なるゲームデザインのチャレンジの過程を解説した佐々木氏。

あらためての筆者の感想ですが
・2016-2017年のVRコンテンツ市場から自社開発でどこにフォーカスするかを定め、コンセプトを立て、そこからゲームデザインに落とし込むこと
・そのゲームデザインも、既存のリズムゲームを利用して手堅い遊びを抑えつつ、VRならではの新たな遊びへの挑戦も行うという点を分離して考えていったこと
などといった点がきれいに組み立てられていました。
それでいて
・既存のリズムゲームもそのままVR化できるわけではなく、VRならではの工夫を取り入れていったこと
・新たな遊びへの挑戦も、「作っては検証し」のループがあったからこそ成立したこと
といった開発面でのイテレーションの重要さも実感し、大変勉強になる講演でした。

参考リンク
株式会社ヒストリア
http://historia.co.jp/
「Airtone」公式Webページ
http://airtone-vr.com/
【レビュー】音ゲーは“体感”する時代へ VRリズムアクション『Airtone』
http://www.moguravr.com/airtone-review/
VRでの体験を引き出すビジュアルとは?「出張!ヒストリア2017」Airtone アートワーク/UIセッションレポート
http://www.moguravr.com/historia-2017/

この記事を書いた人

tabata hideki
「ゲームと社会をごちゃまぜにして楽しんじゃえ」がモットーの、フリーのコンテンツ開発者。節電ゲーム「#denkimeter」の開発担当だったり、最近はVRコンテンツも作ってます。 本業は、アイマスP(アイドルマスターのファン)を。

Twitter:@hitabataba

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