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テック 2018.08.17

思わず息を飲む広い視野、VRデバイス「StarVR One」体験レポ

台湾に本社を置くStarVR社は、カナダ・バンクーバーで開催中のSIGGRAPH2018(※)にて、自社が手がけるVRヘッドセッド「StarVR」の製品版である新型モデル「StarVR One」を発表しました。

2017年に開発者版がリリースされたStarVRは、水平視野角210度を誇る超ハイエンド向けのVRヘッドセット(比較:Oculus Rift CV1やHTC Viveは水平視野角110度程度)。

StarVR Oneは、エンタープライズ向けの展開を想定しているVRヘッドセットです。VRアーケードなどの施設型VRと法人でのB2Bの利用を目指しています。

リフレッシュレートなどの性能向上に加えてアイトラッキング機能の搭載などが明らかにされた他、HTC ViveのトラッキングシステムであるLighthouseに対応、OpenVR対応によるUnityでの開発のサポートなどが発表されています。

SIGGRAPH内のStarVRブースでは、早速新型モデルの体験をすることができました。本記事では、StarVRブースでの体験レポートとCTOのEmmanuel Marquez氏へのインタビューで得られた情報をお送りします。

 

かなり広いStarVRブース

企業展示が行われているExhibitionのエリアに入ってしばらく奥へ進むと、StarVRのブースがあります。新型モデルの写真が大きくプリントされた黒い壁に囲まれた区画は、SIGGRAPHのメインスポンサーであるNVIDEAブースに迫る広さです。

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(StarVRブース。中に入ると6つのプライベートルームがある。)

新ハードウェアStarVR One、その実力とは

装着は快適

ヘッドセットの装着は、HTC Viveのデラックスオーディオストラップと似た形式。目の部分にヘッドセットを押し当てて輪状のヘッドストラップ部分を被った後、後頭部にあるダイヤルを回すことで締めて固定します。


(レンズは円形ではなく、ヘッドセットの内側ほぼ全てを覆う。左目用のレンズの周辺に見えている赤紫色の光は、Tobii社製のアイトラッキングセンサー)

筆者は眼鏡をかけたまま体験に臨みました。ヘッドセット固定後、目元に圧迫感を感じましたが、装着時に眼鏡が邪魔になることはほとんどありませんでした。ただし、長時間の体験時に目元の圧迫による痛みが生じる可能性が考えられます(なお、同時に体験したMogura VR編集長は眼鏡の圧迫感は感じなかったとのこと)。

眼鏡挿入時の横幅に関しては、Oculus Rift CV1よりは余裕がある、HTC Viveとは同程度、といった感想です。一方で上下幅のスペースはRiftやViveよりやや狭いと感じました。大きな眼鏡を掛けている人は装着時に手間取ったり、付けたまま体験することが難しい場合もあるかもしれません。

またRift装着時に見られるような鼻元の大きな隙間は、特に感じられませんでした。

HTC Viveのデラックスオーディオストラップのような簡単な装着方法や、ストラップ部分に重量を持たせることで重心を後頭部側へずらす設計は、装着の快適性向上に繋がっています。どのデモも10分程度しか体験していないため長時間の装着についてコメントはできませんが、体験中に装着疲れを引き起こすことはありませんでした。

ヘッドセット本体の重さは公式アナウンスによれば450g(StarVR One XTでは430g)。数値上ではOculus Rift CV1や現行版のHTC Vive(約470g)より軽くなっています。ただ装着した感想としては、重心の位置などの関係でRiftより頭部に重量を感じました。

進化したStarVR One、210度の圧倒的臨場感

リフレッシュレートが90Hzに向上したという発表通り、視界の映像遷移は非常に滑らかです。ディスプレイの解像度はCTOへのインタビューでも「解像度以外の表現で伝えたい」とのことで、具体的には明らかにされませんでしたが、広い視野角を考慮してもVive Pro(片目あたり1.5K)の見え方と遜色ないクオリティを感じました。

こちらはプレイ中のPCの画面。描画を行う際は、2枚のディスプレイに対してさらに2分割した映像(合計4分割)を表示し、特許を取得しているレンズを通して観ることで広大な視野角を繋ぎ目なく綺麗に見せています。

デモ体験では、210度との比較用として「視野角が狭い設定」も用意されていました。筆者が最初にStarVR Oneを装着した時は視野角が狭い設定にされており、「210度の視野角はこんなものなのか?」と首を傾げてしまいましたが、アテンドスタッフの合図とともに210度全てが解放され、視界が一気に開けた時は思わず感嘆の声を漏らしてしまいました。両者を比較して見ると一目瞭然、StarVR Oneでは従来のVRヘッドセットよりも明らかに現実の見え方に近い光景が広がっています。

(StarVR公式サイトには、水平視野角が狭い場合と210度の場合とで、どのくらい見え方が違うかを体験できるデモが掲載されてます)。

StarVR Oneでは、開発者版で見られた立体視の不整合なども改善され、210度の広大な視野角でも違和感のない綺麗な立体感が得られました。また体験開始時にアイトラッキングを用いてIPD(瞳孔間距離)を自動的に検出し調整を行います。装着すると、白いT字の上下をひっくり返したような表示が視界の中心に表示されます、赤く表示される同じ逆T字を白に合わせるようにヘッドセットの位置や傾きを調整し、合わさるとIPD調整が自動算出され、最適化されます。ユーザごとに見え方をカスタマイズすることで、より自然で目に負荷の少ない視覚体験を実現します。

ただ、5種類行った体験の中で、調整をしないまま体験したことがありました。そのためか、視界の中心(目頭付近)に黒いちらつきが見られる場合がありました。全ての回で生じた訳ではないので、IPD調整やヘッドセットの付け方などで対処可能なものと思われます。

アイトラッキングによるフォービエイテッド・レンダリング

StarVR Oneの視線追跡を使い、デモ体験のいくつかにおいては、すでフォービエイテッド・レンダリングが実用化されていました。


StarVR公式サイトではフォービエイテッド・レンダリングのブラウザ版デモが掲載されている)

もちろん、視線を移動してから描画が高精細になるまでに若干の遅延があったり、アイトラッキングがずれて見ている場所が低画質のままだったりすることがない訳ではありませんが、概ね自然な見え方を保ったままでフォービエイテッド・レンダリングが実現していました。フォービエイデッド・レンダリングにより、画面全てを高精細に描画する必要がないため、PCの処理負荷軽減などが期待されます。

HTC ViveのシステムをStarVR Oneにも適用可能

体験した部屋の隅には、HTC Viveで用いられるトラッキング用のベースステーション(1.0)が駆動しています。渡されたコントローラーもHTC Viveのものです。基調講演での発表通り、開発者はオプティカルトラッキング以外にも、Viveのトラッキングシステム(ベースステーション1.0、2.0の両方)を利用することができ、互換性があります。

ヘッドセットから3本伸びているケーブルは2つに統合され、天井へ。新規格であるVirtualLinkに対応しているため、2本のUSB-CケーブルでPCと接続します。ケーブルの全長がどの程度なのか測ることはできませんした。

ここまでは「StarVR One」のスペックやデバイスの特徴について書きましたが、では実際にVRコンテンツを体験すると、果たしてどのように感じられるのでしょうか? 続くページでは、StarVRのブースで設置されていたビジネス向け・VR体験施設向けのVRコンテンツ体験レポートをお届けします。


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