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VRChat 2025.03.16

「サンリオVfes 2025」はVRChatでのライブ演出を大幅にアップデートした【体験レポ】

今回が4回目の開催となる、「Sanrio Virtual Festival 2025(サンリオVfes)」。2025年2月から3月にかけてVRChat上の特設ワールドで開催され、9日には再公演も含む全日程が終了。残すは3月16日と17日のタイムシフト公演のみとなっている。

連日たくさんの観客で盛り上がっていたサンリオVfesの有料ライブの中から、本記事では、さまざまな空間演出が見られたパーティクルライブをピックアップ。もし見逃したパフォーマンスがある人は、忘れずにチェックしてみてほしい。

ステージ形式をリニューアル その意図は?

(サンリオVfes皆勤賞のAMOKA。モチポリの姿になって2人の歌声を聞くと、「サンリオVfes、始まったな……」という高揚感が込み上げてくる)

VTuberやバーチャルシンガー、VRChatで活躍するクリエイターにアイドルユニットなど、今回も多彩な顔ぶれが揃っていたサンリオVfes。

事前情報では、松平健さん、田原俊彦さん、月島きらりさんの3人組の話題性が高かった一方で、今年は海外で活躍するバーチャルアイドルも出演。VRの空間演出は控えめに、洗練された歌とダンスのパフォーマンスを楽しめたのも特徴のひとつだと言える。もちろん、サンリオキャラクターたちとのコラボレーションも見どころだ。

(海外で絶大な人気を誇る、VShojo所属のironmouseさん)

(「小学館Presents マツケン☆トシちゃん☆きらりん☆レボリューション SPECIAL LIVE」より、『マツケンサンバⅡ』のパフォーマンス。キティちゃん、シナモンくん、月島きらりさんと一緒に踊り、巨大化した松平健さんがミラーボールに乗って会場を浮遊する一幕もあった)

(ついにステージ上でのポムポムプリンくんと念願の共演を果たした、因幡はねるさん)

ムーナ・ホシノヴァさんは、ぐでたま&クロミちゃんとコラボ)

個性豊かな顔ぶれが目立っていた一方で、イベントの開幕当初から気になっていた点が1つあった。それが、有料ライブ専用のステージとして今年登場した、バーチャルサンリオピューロランドの新フロア「NEW WAVE PORT」だ。

過去のサンリオVfesで有料ライブのために用意されたワールドを振り返ってみると、ステージが空間の中央に設けられていることが多かった。たとえば、2021年の「FUTURE STAGE」は円形のステージが中央にあり、観客はその周囲のどこからでもアーティストを見られるような構造になっている。

(2021年のサンリオVfesより、B3フロア「FUTURE STAGE」。バーチャルアーティストのライブが行われた)

(2024年のサンリオVfesより、B3フロア「LUMINA STAGE」。2つの円形のステージと、それらを繋ぐ花道をアーティストが移動することで、奥行きのあるライブ体験ができた)

ところが今回、2025年に登場したB4フロア「NEW WAVE PORT」の構造は、非常にシンプル。船をモチーフにした半円状のステージに向かうようにして、階段状の客席が設けられている。現実世界でもよく見る形状のステージだったのだ。

当然「ステージの周囲を取り囲む」ような形ではないし、パフォーマンス中は基本的に、固定位置からステージ上のアーティストを見る格好になる。実際、例年はステージの周囲を移動しながら写真を撮っている人も多かったが、今年はパフォーマンス中に移動する観客の姿はほとんど見られなかった(少なくとも、客席がこの階段状になっている状態では)。

一見するとシンプルなステージだが、それを見て最初に込み上げてきたのは、「ここからどうなるんだろう?」という期待感だった。

なんたってこのイベントは、サンリオの“バーチャル”フェスティバル。そこがバーチャル空間である以上、やろうと思えば、どのような空間にでもできてしまう。そのままのステージでライブをしてもいいし、別の場所に移動したっていい。あるいは、このステージの状態を起点として、曲の演出にあわせていろいろな方向に展開させていってもOKだ。

では、この「NEW WAVE PORT」という共通のステージで、どのようなパフォーマンスが繰り広げられ、どのような演出が見られたのか。本記事では、スタンダードに「そのままのステージでパフォーマンスをする」タイプは除いて、ざっくり3つのパターンに分けて振り返っていこうと思う。

① 空間そのものを書き換えるステージ

まずは、ステージの基本構造はそのままで、アーティスト色に書き換えるパターン。

「半円状のステージに立つアーティストを、観客はみんなほぼ同じ方向から見る」という構造は変わらず、そのステージや空間だけを切り替える。アーティストの世界観、あるいは楽曲のイメージに合わせて、空間を上書きするようなイメージだ。

P丸様。

このパターンで一番わかりやすいのが、P丸様。のステージだ。登場するやいなや代表曲「シル・ヴ・プレジデント」を歌い出し、瞬く間にステージを自分色に書き換えた。もともとの「船」の形状はそのままに、ステージと客席を彼女のカラーに染め上げている。

途中でMCを挟みつつ、とにかく喋って歌って踊り続けるパワフルなパフォーマンスだったが――記憶違いでなければ――途中、場面転換のための暗転・明転が一切見られなかった気がする。あれがノンストップかつノーカットだとしたらすさまじい。最後はポップコーンが弾け舞う空間で、キティちゃんと「ポップコーン!!」を歌って盛り上がった。

樋口楓

2021年のサンリオVfes以来4年ぶりの出演となる、にじさんじ所属ライバー・樋口楓さん。画面の中から「キティさんから招待状をもらって〜」と経緯を話す流れで始まり、手に持っていた石が輝いたかと思えば、次の瞬間には彼女も観客もライブ会場に立っていた。

大きなアリーナ風の空間で、楽曲ごとに異なるパーティクル表現に彩られながら、パワフルな歌声を轟かせる。最後に歌った「ジブンなジブン」は、ミュージックビデオ風の歌詞演出とダイナミックなカメラワークが目の前で繰り広げられる、見ごたえのあるパフォーマンスだった。

Screaming Color

ミュージシャン、ライター、写真家、3Dデザイナー、ビデオゲームクリエイターとして、マルチに活動するScreaming Colorさん。

2024年のサンリオVfesでは空間を丸ごと使ったパーティクルライブを披露したが、今回は彼自ら(?)がステージ上に登場。極彩色のライトと緩急のある音楽で観客の心を掴んだ後、ステージ上のスクリーンの中へと全員をいざなった。

VRChatでは、独特な没入体験を味わえるワールド「Gumball Lounge」の作者として有名だが、その世界観と色彩表現は今回のパフォーマンスでも健在。サンリオの企業理念「みんななかよく」を彼なりに解釈したかのような空間演出と言葉選びを堪能できるステージだった。

TOKYO WAIYOZ

日本で出会った台湾チーム・TOKYO WAIYOZ。客席の位置はそのままに、ステージ側を若干見下ろすような形にしつつ、360度丸ごと使った音と映像のDJパフォーマンス。「サンリオVfesの有料ライブ」としては、なかなかに新機軸なステージだったかもしれない。

Aqours

アニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」のスクールアイドルユニット・Aqours。「水」をグループ名の由来の1つとする彼女たちは、「船」のステージとの相性もばっちり。

普通に目の前のステージ上だけで歌って踊るのかと思ったら、超至近距離まで近寄れるシーンもあり、「こんなに近づけちゃって大丈夫なんですか!?」と慄いたのは筆者だけではないはず。ファン必見の演出もあり、詳しくは個別のライブレポートを読んでみてほしい。

QuestMaker featuring サンリオキャラクターズ

PCVRだけでなく、Android環境でも同じように、“みんななかよく”楽しめる表現を探ってきた、QuestMaker。彼らがサンリオキャラクターたちと共に描き出すのは、キャラクターたちの個性と魅力を活かした楽しいステージだ。

シナモンロールくん、ポムポムプリンくん、ポチャッコくん、クロミちゃんのソロ曲を、それぞれに用意された別のステージによって演出。ピューロランドで体験できてもおかしくなさそうな、サンリオファンにこそ喜んでもらえそうな明るく楽しいステージだった。個人的にはポチャッコのステージが見られて嬉しい。

② 「船」のステージを活かした演出

バーチャルならではの空間を書き換える演出とはまた少し異なる切り口として、「今回のこのステージ」ならではの味付けが多かったことも、今年の有料ライブの特徴だと言える。

そう、ずばり「船」である。

今回のサンリオVfesでは、この船の形をしたステージそのものを動かすような演出がよく見られていた。ただし、その「動かし方」や「船の使い方」にもアーティストごとにバリエーションがあり、改めて見比べてみるとおもしろい。その代表例をいくつか見ていこう。

夕月ティア

2月9日にスタートした有料ライブの中で、この「船」を一番最初に動かしたのが、夕月ティアさんのステージだ。

ハレウタイ」を歌いながら、それまでいた空間を飛び出し、ピューロエントランス、バーチャルピューロビレッジ、CHILL PARK――と、サンリオVfesのワールドを次々に駆け抜けていく。

「自分が訪れたことのある空間の上空を船で飛んで行く」という体験は、それだけでもド迫力で興奮させられる。しかし、それだけではない。彼女がイベントで勝ち取った出演権によってサンリオVfesのステージに立っている」ことを考慮すると、この演出がさらに味わい深く感じられる。

キラキラなパーティクルの中でシナモンくんと一緒に歌う姿も素敵だったが、それ以上に刺さったのが、イベントの決勝に出場したアイドルのみんなと一緒に歌う「プラットホーム」と、その際に彼女の口で語られた言葉だ。自らの手で夢を掴み取る“バーチャルアイドル”の力強さが、そのステージを構成するすべての要素から感じられる。断片的にしかイベントを知らなかった自分ですら感動させられる、圧巻のパフォーマンスだった。

TONEVOK

TONEVOKのパフォーマンスは、その導入からして印象的だった。

開演時間になり、アーティスト紹介の映像が流れ、静まり返った会場で、どこからか聞こえてくる水の音。その音の出どころを探すように視線を下に向けると、いつの間にか、そこには穏やかに波打つ水面が見える。ややあってステージが移動を始め、大海原へと漕ぎ出した船は、水平線の向こうへと消えていく――。

眼前に見えていたステージが海の向こうへと消え去り、その場に残されたのは、さざなみの音しか聞こえない夜の海の波打ち際で、周囲を見回す観客たち。潮の香りすら感じられてきそうなその空間で、やがて水平線に火が灯り、音と光が織りなすパフォーマンスが始まる。

時折響く和太鼓の音と、遥か彼方の水面に揺らめく炎を見て、「漁火」を想起した人も少なくなかった様子。船そのものは消え失せてしまったが、このフロア名にある“PORT”らしさを感じられたパフォーマンスの1つが、このTONEVOKのステージだった。

月ノ美兎

みんな待ってた、我らが学級委員長・月ノ美兎さん。樋口さんと同様に「キティさんから招待状をいただき〜」という導入に始まり、最初に歌った1曲目は「アンチグラビティ・ガール」。

ライブでも盛り上がる人気曲であると同時に、「それでもこの船で飛んでみたい」という、このステージにお誂え向きの歌詞が含まれた楽曲。彼女が声を高らかに響かせるイントロに合わせて、まるで重力を失ったかのようにステージが解体されていく流れは、「月ノ美兎がVRで歌う『アンチグラビティ・ガール』」としては最高の演出だったように思う。

また、甲板の上が解体されたことですっきりした船上へと誘われる形で、「観客が船の上に乗せられ、船頭で歌うアーティストを見る」という構図も予想外でおもしろかった。楽曲ごとに異なる演出を楽しめたステージだったが、特に委員長ファンには「みとらじギャラクティカ」を浴びてほしい。あのギャラクティック洗濯機の上に行けるのはVRだけ!

ぽこピー × 狸豆建設

船のステージで実際に“出港”したパフォーマンスと言えば、ぽこピー × 狸豆建設のステージも外せない。

時空を超える船を駆り、目まぐるしく変化していく景色を旅する体験は、まるでテーマパークのライドアトラクションのよう。ピーナッツくんのアニメに登場するキャラクターたちだけでなく、キティちゃんをはじめとしたサンリオキャラクターたちが次々に登場する場面にも注目だ。こちらも詳しくは、個別レポートをチェックしてほしい。

キヌ

宇宙や大自然、あるいはバーチャルピューロランドなど、バーチャルならではの空間へと漕ぎ出した船が多いなか、このNEW WAVE PORTをその名の通りに“港”として見立てたうえで、実際に大海原へと“出港”したのが、「kinu 7th live “トーチライト”」と題したキヌさんのパフォーマンスだ。

水兵風の衣装を身にまとった専用のモチポリに着替えて、アナウンスに従いステージの上に移動して待っていると、やがて船は出港。しばらくは順調に海上を進んでいくが、暗雲が立ち込め、雷鳴も轟き、周囲はすっかり時化模様に。激しさを増す嵐の中で、観客たちが目の当たりにするものは――。

音に合わせて次々に展開していくパーティクル演出と、紡ぐ言葉が織りなす世界観。昨年と比べると全体的に暗い色が目立っていた印象もあるが、それゆえに灯火が、ライブタイトルの“トーチライト”が際立って見える。全体を通して滾るような熱を感じるステージだった。

「とにかく圧倒され、“バーチャルYouTuber”のくだりでマジ泣きした」というのが率直な感想になるが、気になったポイントも何箇所かある。その1つが、ステージや演出の節々に垣間見えていた、過去のサンリオVfesの文脈だ。

「voices」のアレンジで初回のサンリオVfes(kinu 3rd live “コネクト”)を思い出し、周囲をよく見れば、漂う瓦礫はCHILL PARKのものに見える。足元に散らばる文字は2023年のサンリオVfes(kinu 5th live “はじまりのおわり”)のものと似ているし、渦巻く文字に吸い込まれる表現も、2023年のライブの終盤を想起させられる。あの時は飲まれなかった観客たちが、今回は共に繭の中へといざなわれ、眩い灯りに照らされて、花開くように解き放たれる――。そこに何かしらの意図を見出そうとするのは、考えすぎだろうか。

何と言っても象徴的に感じられたのが、「バーチャルYouTuberのいのち」の変節だ。何か主義主張が変わっているわけではないが、6年を経て明確に変化している箇所もあり、あれやこれやと思いを馳せずにはいられない。こんなに眩い夜だから――。

嵐の夜を越えて、船は朝焼けの浜辺へとたどり着く。野生のカイコが打ち立てた灯台のような煌めく世界を、ぜひ会場で目の当たりにしてみてほしい。

(パーティクルに焼かれてこんがりしてしまったモチポリたちもかわいい)

③ ライブに来たはずが、みんななかよくゲームで遊んでいた――インタラクティブな体験ができる参加型ステージ

サンリオVfesは、その名の通り「フェス」である。さまざまな分野で活躍するアーティストが出演し、十人十色のパフォーマンスを楽しむことのできる、音楽フェスである。それは間違いないのだが、その“パフォーマンス”とは、何も音楽ライブに限らない。

前回のサンリオVfesでも見られた体験型ステージが、今回はさらにパワーアップ。より自由な表現で、アトラクションのようなステージ(?)を観客みんなで楽しめた。前述のぽこピー × 狸豆建設も当てはまりそうだが、ここでは「体験型」や「インタラクティブ性」という括りで整理してみよう。

memex

いわゆるアトラクションではないし、パフォーマンスとしては間違いなく「音楽ライブ」なのだが、ちょっとした「体験型」の要素も含んでいたのが、memexのステージだ。

すぐにステージ上に登場して歌い出すのではなく、それどころか、ステージは最初に消失。その代わりに輝く人型のシルエットが現れ、会場の奥へ向かって歩き出す。それを見て踏み出してみると、自分たちも“そちら側”に行けることがわかる。光に先導され、周囲に立方体のオブジェクトが出現するのを見ながら、先へ先へと歩を進めていく。

たどり着いた先でmemexの2人が現れ、ライブがスタート。あの船のステージを起点として、ここまで奥行きのある空間に仕立て上げたのは、memexくらいだったのではないだろうか。実際に全体を俯瞰して見ると、それなりの距離を歩いたことがわかる。

また、演奏に合わせてステージ上で弾んでいた、球体も特筆すべきポイントだ。ステージの周囲や頭上で展開されている演出の1つ――かと思いきや、この球体には干渉することができる。下から触れると軌道が変わり、ポンポンと別の方向へ跳ねて行ってしまうのだ。観客の1人がそれに気づくやいなや、みんなで球体を触りに行っていておもしろかった。

orange & MIRA_sk featuring サンリオキャラクターズ

 観客側にもアクションが求められる体験型コンテンツと言えば、「orange & MIRA_sk featuring サンリオキャラクターズ」のステージは、インタラクティブかつエキサイティングだった。

前回のサンリオVfesは観客全員で「クロミパワー」を集めるミニゲームのようなパフォーマンスだったが、今回は、サンリオキャラクターたちと一緒にアイスクリームづくりに挑戦。パステルカラーに彩られた円形の空間に移動すると、すぐに楽しいクッキングが始まる。

一言で説明するなら、「パーティーゲームのミニゲーム」と言えば伝わるだろうか。

具材を集めて投入したり、鍋に落ちないように走り回ったり、フォークでクッキーを砕いたり、トッピングを玉入れの要領でカゴに投げ入れたり。「音楽フェスのステージに来たはずなのに、僕はなぜクッキーを叩いているのだろう……?」などという疑問が浮かぶ余裕もないほど次々に指示が飛んでくるし、ゲーム性もどんどん変わっていく。が、それが楽しい。

『Fall Guys』のようなステージで悲鳴をあげながら鍋に落ちていく仲間たちを見送ったかと思えば、数分後には、キティちゃんたちの歌と掛け声に合わせて「ハイ!! ハイ!!」と威勢よく声を出しながら、みんなで一緒にクッキーを砕きまくる。

休む暇なく体を動かすことになったが、終わってみればあっという間。わずか10分とは思えないほど満足感の高いステージだった。ちなみに再公演では、「ハイスコア目指そうぜ」「がんばりましょう!」という観客同士のやり取りも交わされていた様子。タイムシフト公演に参加できる人は、ぜひあのインタラクティブな体験とアイスの味を味わってほしい。

exxp

同じく、観客が協力して遊べる体験型ステージとしては、exxp「妖怪となかなおり」と題したパフォーマンスもぜひとも体験してほしいコンテンツだ。ストーリー性のあるゲームワールドの一種と言ってしまってもいいかもしれない。

開演時間になると何やらホラー風味のテキストと演出が始まるが、決して怖い要素はないので安心してほしい。そこで観客一人ひとりの目の前に現れた扇子を降ると、色のついたシャボン玉が発生。「この扇子を使って、都市に発生した“悩み妖怪”にシャボン玉を当てよう!」という簡単なチュートリアルを終えると、観客全員が“都市”へと呼び出される。

そこは文字通り、東京都内に普通にありそうな“都市”だった。そうと知らなければ「VRChatの路地裏系ワールドの1つ」と言われても信じてしまいそうな、そこそこ広い空間が広がっている。

その街中を走り回って“悩み妖怪”を探しつつ、カラフルなシャボン玉を飛ばしまくる。「色鮮やかなシャボンが飛び交う空間の一部になる」という体験はそれだけでも心躍るものだったし、夢中になってシャボン玉を飛ばしていると、不思議と心がスーッとするような感覚もあった。

また、街に点在するグラフィティは「チャージ」をすることができ、シャボン玉の色を変えられるのだが、このチャージ音やシャボン玉が弾ける音など、聞いていて心地よい音作りもポイント。エンディング後はワールド内を散策する時間もあるので、時間の許すかぎり見て回ってみてほしい。

何より、「妖怪となかなおり」というタイトルが良い。色とりどりのモチポリたちが一丸となり、カラフルなシャボン玉を繰り出すことで、誰にとっても身近な悩みと、“なかなおり”しようとする。みんなで一緒に楽しめる体験型ステージであると同時に、今日もどこかにいる悩みビトに寄り添おうとする、優しさの詰まったコンテンツだと感じた。

ex. アンダーノースザワへようこそ

ここまでに取り上げた3つのパターンとは別枠になるが、今回のサンリオVfesで印象に残った点として、『SHOW BY ROCK!!』関係の話は外せない。

2023年の初出演以来、サンリオVfesでも存在感を発揮している、4人組Freshガールズバンド「Mashumairesh!!」。もともとアニメやゲームで彼女たちのことを知っていたファンのみならず、「サンリオVfesで知ってハマった」というVRChatユーザーの声も少なくない。特に2024年に登場したバーチャルパレード『キセキかもしれないレゾナンス』にはコアなファンも多く、再演されるたびに話題になっている。

また同時に、Mashumairesh!!の4人としてだけではなく、メンバーが他のクリエイターとコラボレーションする形で出演しているのも、サンリオVfesならではの特徴だ。このコラボもすっかり定番になりつつあるが、今回は「作中のアンダーノースザワで演奏をする」という流れが共通して見られていた。

LuminaPalette featuring ほわん

VRChatで活動しているクリエイターチーム・LuminaPaletteは、ほわんとコラボ。前回以上に多彩で美しい、とにかくバリエーションが豊富なパーティクル演出に見入るばかりのステージだった。

演出面では、アニメ『SHOW BY ROCK!! ましゅまいれっしゅ!!』の第1話を思わせる列車に乗って登場し、作中の都市・アンダーノースザワのステージで、アニメの挿入歌でもある「まっしろスタートライン」を歌唱。同じくアニメで見覚えのある海岸でマシマヒメコとデュエットをする場面もあるなど、明確にアニメの展開に則った演出が詰め込まれていた。

約束 with デルミン

前回のサンリオVfesと同じ「アノカナタリウム」のデュエットからスタートした、約束さんとデルミンのステージ。

2人の掛け合いも毎回楽しみなコラボだが、今回はなんと、スペシャルゲストとしてルフユが登場。アンダーノースザワのステージに立ち、3人で「キミのラプソディー」を歌い上げた。後半は3人でワイワイと話すMCを経て、Beatcatsの「Nyaightmare Party」をMV風の空間演出で堪能。ゲスト面でも演出面でも贅沢なステージだった。

Mashumairesh!! / DOKONJOFINGER

そして、今回の「Mashumairesh!!」の4人としての出演は、同じく『SHOW BY ROCK!!』のボーイズバンド「DOKONJOFINGER」と共に、対バンスタイルでの共演となった。しかもタイムテーブル上は、サンリオVfes全体の大トリでもある。

バイク&チャリに乗って颯爽と登場した、DOKONJOFINGERの4人。MCでの定番のやり取りでファンの期待にもしっかりと答えつつ、3曲を熱唱。感情の乗った動きで演奏をしながらの歌唱&パフォーマンスは、やはり見ていて楽しいものがある。

サンリオVfes全体を通して最後のステージとなるMashumairesh!!のパフォーマンスでは、プラズマジカのシアンがサプライズゲストとして登場! 『SHOW BY ROCK!!』を知らない人でも、彼女の姿はきっとどこかで見たことがあるはず。まったくの予告なしのこのサプライズには、観客のあいだからも大きな歓声があがっていた。

ますます広がる、バーチャルテーマパーク

このような多種多彩なステージが約1ヶ月間にわたって楽しめた、2025年のSanrio Virtual Festival。初出演のアーティストやクリエイターも少なくなく、これまでになかった個性的な“パフォーマンス”も楽しめるなど、VRユーザー必見のイベントだったと言えるだろう。

他方では、期間中に楽しめるゲームワールドや関連コンテンツの幅も広がっており、「バーチャルテーマパーク」としての魅力もますますましているように感じた。

生成AIをテーマにした新作パレード「RYUGU – Generated Paradise」や、現実のピューロランドでもおなじみのアトラクションをVRならではの表現で楽しめる「サンリオキャラクターズ バーチャルボートライド」。みんなで一緒にタワーディフェンスゲームを遊べる「マイメロディ&クロミの Precious Harmony♪」に、子供の頃の思い出を呼び起こす物語「The Hello Kitty Phone’s Secret Messages」などもある。

ほかにも、コラボVRクロブフロアを始めとするコミュニティコラボや、人気VTuberと会って話せる「サンリオバーチャルグリーティング」に、にゃんたじあ!と合同で行われた初のリアルイベント「Sanrio Virtual Festival 2025 :Real」と、関連コンテンツまで挙げればキリがない。そのようなコンテンツの幅広さと、気になるものだけを楽しんでもOKな参加ハードルの低さも、サンリオVfesの魅力と言えそうだ。

次回開催への期待も高まるが、タイムシフト公演が行われる3月16日から3月17日までは、各種ワールドもまだ楽しむことができる。体験しそびれているコンテンツがある人は、ぜひ今のうちに足を運んでみてほしい。

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