株式会社奥村組は、XR技術を活用して地盤改良工の施工進捗と周辺地盤への影響をリアルタイムに可視化するシステム「施工影響XRウォッチャー」を開発しました。
このシステムは、センサーからクラウド経由でデータを取得し、HoloLens2やiPad Proを用いて施工位置と進捗、地盤の変位量をXR空間内でリアルタイムに表示することが可能です。これまでも地下構造物に近接して行う地盤改良工の現場に適用され、災害の発生防止に有効なことが確認されています。
施工影響XRウォッチャーは、地下構造物に近接する地盤改良工の安全管理を支援するために開発されました。地盤改良工は周囲の土圧への影響により、周辺地盤の隆起などの公衆災害発生リスクがあります。従来、施工管理者は地下構造物内で動態観測を行い、管理値以上の地盤変状が認められた場合は作業を中止していましたが、地下構造物内からは施工位置を目視できないため、観測が必要な位置の把握が困難でした。
この課題を解決するために開発された施工影響XRウォッチャーは、施工機械に設置したセンサおよび施工箇所周辺に設置した沈下計から、クラウド経由で施工深度・鉛直変位量の情報を取得します。これらのデータに基づき、HoloLens2やiPad Proを用いて施工位置と進捗、沈下計の計測結果をXRで可視化します。
施工影響XRウォッチャーでは、地盤改良工の施工位置が円柱状の三次元モデルで表示され、施工進捗に合わせて着色部(グレー)が増加していく仕組みになっています。また、沈下計の計測結果は、設置場所にシリンダー状の三次元モデルで表示され、計測結果に合わせて高さが変化します。
さらに、計測値がどの管理基準値に相当するかを色分けして表示することで、状況を直感的に把握できるようになっています。
奥村組は、地下鉄営業線に近接して高圧噴射攪拌工法による地盤改良工を行う建設現場において、このシステムの試行を実施しました。地下鉄トンネル躯体内から地盤改良工の施工位置と進捗をリアルタイムに把握することで、重点的に監視すべき場所を容易に特定できたとのことです。また、躯体の沈下・隆起の状況をその場で把握できるため、現場の安全性向上と公衆災害の発生防止に有効であることが確認されました。
奥村組では2025年度より、施工影響XRウォッチャーの適用現場を拡大する予定とのことです。また、他の計測機器等との連携を進め、地盤改良工以外の工事進捗も可視化できるように開発を進め、より幅広い現場での適用を目指していくとしています。
(参考)プレスリリース