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テック 2021.06.22

NVIDIA「Omniverse」の最新動向レポート。3Dデザインコラボの課題を解決

NVIDIA Japan(エヌビディア合同会社)は2021年6月16日(水)・17日(木)の2日間にわたり、オンラインカンファレンス「NVIDIA AI DAYS」を開催。同カンファレンスでは「Deep Learning for DX」をテーマに、AIとGPUコンピューティングを活用した最新事例とソリューションに関する60ものセッションが行われました。

本記事ではその中から、1日目に行われた「Omniverse Enterpriseの概要と今後の展開」、および2日目に行われた「Omniverseが進めるデジタルツイン、コラボレーション環境」の2つのセッションについてレポートします。

「Omniverse」とは

Omniverse」はNVIDIAが開発・提供する3Dシミュレーション&コラボレーションプラットフォーム。2020年10月にNVIDIAの年次カンファレンス「NVIDIA GTC 2020」で発表され、同年12月にはオープンベータ版も公開されました。さらに2021年4月に開催された「GTC21」では、法人向けの「Omniverse Enterprise」も発表しています(2021年後半発売予定)。

高まる3Dデザインコラボの需要に応えるOmniverse

Omniverseについて、NVIDIA AI DAYSでは 「Omniverse Enterpriseの概要と今後の展開」および「Omniverseが進めるデジタルツイン、コラボレーション環境」の2セッションを開催。Omniverseの解説や最新情報の紹介が行われました。

「Omniverse Enterpriseの概要と今後の展開」

1日目に開催された「Omniverse Enterpriseの概要と今後の展開」には、エヌビディア合同会社 エンタープライズマーケティング シニアマネージャー プロフェッショナル ビジュアライズ担当の田中秀明氏が登壇しました。

3Dコンテンツ制作のためのワークフローは、ツールやアプリケーションの急増やプロジェクト規模・範囲の拡大により、近年ますます複雑になっているという田中氏。さらに新型コロナウイルス感染症の影響などもあり、リモートでのコラボレーションの必要性も高まっていると言います。

また、建築・エンジニアリング・土木、エンタメ、プロダクトデザイン・製造、ロボット開発など、3Dコンテンツ制作は今やあらゆる業界で不可欠になっています。こうした現状に対し、リモートワークにおける3Dデザインコラボレーションの課題を解決するべく生まれたのが「Omniverse」です。

NVIDIAの社内向けソリューションとして開発がスタートしたというOmniverse。2017年のSIGGRAPHで登場したVR遠隔コラボレーションツール「Holodeck」を経て、2019年のGTCでOmniverseが登場。2020年の12月からはオープンベータの提供も始まっています。

続いて田中氏はOmniverseの基本構造を解説。Omniverseはリモートでのコラボレーションを可能にする共有の空間が基盤としてあり、そこに外部のツールやアプリケーションと接続するための機能があります。さらにOmniverse自身が提供するコンテンツ制作ツールやビューアーなどが加わることで、ひとつのプラットフォームとして成り立っています。

3Dコンテンツ制作ツールやアプリケーションをOmniverseに接続することで、個人が1台のワークステーションで作業する場合でも、リモートで複数人が共同作業する場合でも、アプリをシームレスに切り替えられます。これによりワークフローも簡略化され、作業の効率化も図れるとのこと。なお、Omniverseでは標準ファイルフォーマットとしてUSD(Universal Scene Description)を採用しており、異なるツールやアプリ間でのデータ交換のハードルを下げるのに一役買っています。

(MayaやBlender、Unreal Engineなど外部の3DCG制作ツールと接続できるほか、Omniverseが独自に提供するアプリケーションもある)

(NVIDIA Omniverseの技術でレンダリングされた、実際に遊べるデモ。ただし快適なプレイにはかなりハイスペックなPCが必要)

Omniverseの概要解説の後は、法人向けソリューションである「Omniverse Enterprise」が紹介されました。同製品は2021年後半販売開始予定で、ライセンスとサポートを含むサブスクリプション型の有償製品になるとのこと。また、同時に個人向けのパッケージもリリース予定で、こちらは基本無料で提供予定だそうです。

 

最後に田中氏はあらためてOmniverseの魅力をアピール。Omniverseは3Dプロダクションにおけるコスト削減や創造性・生産性の最大化に貢献するとしました。あわせて各種ドキュメントやチュートリアル動画を案内し、セッションは終了となりました。

なお、Omniverseに関して、日本ではアスクエルザジャパンが販売パートナーとして「アシストセンター」を開設予定。Omniverse導入から運用までサポートするとのことです。

「Omniverseが進めるデジタルツイン、コラボレーション環境」

一方、2日目に行われた「Omniverseが進めるデジタルツイン、コラボレーション環境」には、エヌビディア合同会社 エンタープライズ事業本部 プロフェッショナル ビジュアライゼーション ビジネスデベロップメントマネージャーの高橋想氏が登壇。Omniverseの推奨構成や、すでに各企業で行われている活用事例などについて解説しました。

高橋氏はまず、Omniverseオープンベータ版の利用方法やOmniverseの構成概要を説明。その後、実際にOmniverese Enterpriseのシステム構築例や推奨GPUについて解説しました。その中で、NVIDIAがハードウェアからソフトウェアまで一貫して提供する「NVIDIA EGXプラットフォーム」にも触れ、同社がOmniverseに必要なすべての環境を取り揃えていることを強調しました。

続いてはOmniverse対応アプリケーションについて紹介。Omniverseでは主要なコンテンツ制作アプリケーション向けにプラグインを用意しており、専用ポータルからOmniverseと連携させることができます。連携機能は現在も開発が進んでおり、対応アプリは今後も増える見込みとのことです。

また、高橋氏はOmniverseの今後のロードマップについても言及。2021年から2022年にかけてはデザインコラボレーションやシミュレーションの分野をターゲットにOmniverseの普及を目指すとのこと。さらにその先には仮想世界の行動なシミュレーション、いわゆるデジタルツインを視野に入れた展開を考えていると述べました。

 

最後に、Omniverseを導入している企業のテスト事例がいくつか紹介されセッションは終了。紹介された事例は建築、VFX、広告、デザイン、製造と幅広い分野にわたっており、Omniverseのポテンシャルの高さをうかがわせました。

なお、セッションの最後にはOmniverseに関するドキュメントチュートリアル動画についても紹介されました。Omniverseに興味を持った人、あるいは実際に導入を検討している人はぜひチェックしてみてください。

 

(GTC21で紹介されたBMWの事例。仮想空間上に自社工場のデジタルツインを作り、その中で機器のレイアウトや動線の検討を行っている)

(参考)NVIDIA AI DAYSNVIDIA公式サイトYouTube公式チャンネル


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