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ゲーム・アプリ 2020.04.29

話題作となったVRゲーム「Half-Life:Alyx」の軌跡を振り返る

Valve制作のVRFPS「Half-Life:Alyx」のリリースから1ヶ月が経過しました。シリーズ約12年ぶりの新作は発表当初より大きな注目を集め、製品版発売後もSteamの月間売り上げ上位にランクイン。約50万本~100万本の売上がデータ分析サイト「SteamSpy」にて発表されているほどの人気ぶりです。

本記事では「Half-Life Alyx」の発売前後の大きな動きを、MoguLiveに掲載された記事と共に振り返ります。

新作VRゲームを開発中の報せとソースコードの発見

現在はPCゲーム配信プラットフォーム「Steam」の運営元として名高いValveですが、元は「Half-Life」をはじめ「カウンターストライク」や「Portal」などのFPS作品を多く手掛けたことで知られています。

特に「Half-Life」は名作としての呼び声が高く、1998年の第1作リリース以降、拡張パックや続編「Half-Life 2」など様々なタイトルが発売されてきました。

しかし2007年の「Half-Life 2: Episode Two」リリース後、シリーズ展開はストップ。以降、続章「Half-Life 2: Episode 3」及び、ナンバリング新作「Half-Life 3」の噂が流れましたが、ほとんどが立ち消えました。

そして2019年、新型VRヘッドセット「Index」の発表間もなく、Vavleが3つの新作VRゲームのリリースを告知。その内、少なくとも1タイトルは2019年内発売を目標にしていると発表されました。

この時点では何のゲームを制作しているのかは伏せられていましたが、同年10月、Valve関連のニュースを扱うYouTubeチャンネルValve News Networkを運営するTyler McVicker氏が“HLVR(hlvr)”なる名称のソースコードを発見。「Half-Life」関連のVRゲームが制作されているのでは? との憶測が飛び交いました。

さらに同ゲームは初代「Half-Life」と「Half-Life 2」の中間を描く作品で、「Half-Life 2」の登場人物アレックスが主人公を務めるとMcVicker氏は主張。ほかにソースコードには「Half-Life 2」の象徴的な武器も存在しているといった情報が相次ぎましたが、Valveからは特に公式発表は何もなし。この時点では「Half-Life 3」など同様、ウワサのまま終わるかもしれませんでした。

念願の正式発表! Valve Indexが北米で在庫切れに

2019年11月、Vavleが「Half-Life: Alyx」を公式Twitter上で告知。シリーズ約12年ぶりとなる新作が遂に正式発表されました。

その数日後、11月21日に予告映像が公開。

Steamにもストアページが開設され、ソースコードの情報通り、「Half-Life」と「Half-Life 2」の中間を舞台に、「Half-Life 2」のヒロイン、アリックス・バンス(Alyx Vance)が地球外生命体の侵略軍「コンバイン」との熾烈な戦いに身を投じる物語を描く内容であることが確定しました。

発売時期は2020年の3月、価格は税込6,290円。対応ヘッドセットはOculus Rift、HTC VIVE、Valve Index、Windows Mixed Realityになることも合わせて発表。

さらにValve Index及び、同VRヘッドセット向けのハンドコントローラーを所有するユーザーに「Half-Life: Alyx」が無料で配布されることも発表。2019年末までにValve Indexを購入すると、アレックスの武器スキンなどが手に入るキャンペーンも告知されました。

その影響もあり、Valve Indexはアメリカやカナダで在庫切れになる事態に。日本でも2019年11月28日より、Valve Indexは店頭販売が開始されましたが、正規販売代理店、株式会社デジカの購入ページでは、ハンドコントローラー単体が「売り切れ」に。いかに「Half-Life: Alyx」の発表が大きな衝撃を与えたのかが察せます。

発売前にして高まる期待

正式発表以降も本作に関する話題は続きます。マイクロソフトのMRヘッドセット「HoloLens」の生みの親であるアレックス・キップマン氏は、自身のTwitterで「Half-Life: Alyx」に関する“感想報告”をツイート。「これは、私がこれまでにプレイしたVRゲームのなかでも、最も感銘を受け、没入感も素晴らしいものです。」と絶賛しました。

年が明けた2020年には、TheJQKTeamなるユーザーが画像共有サービスImgurにて、新たなスクリーンショットをリーク。未公開の敵を始め、MODへの対応を示唆すると思しき謎のエラー画像も明かされるなど、大きな注目を集めました。なお、この時点でValveは、本作発売と同時にマップ、ゲームモードを自作できる複数の開発ツールをリリースすることを発表しています。

さらにValveの開発チームが海外掲示板Redditにて、Q&A;セッションを実施。このセッションの中で、今回の「Half-Life: Alyx」には約80人程度という、Valve史上最大規模の人数が関わっていることが明かされました。

そして、発売日が2020年3月23日(※日本国内向けSteamでは24日)になることが決定。

Road to VRの報道で、予告映像が公開からたった1日で累計1,000万回再生を達成していたことも判明しました。またワシントン・ポストやガーディアンなど、あまりVRゲームを取り扱わない大手メディアも本作の記事を掲載したとの情報も。いかに、今回の新作が大きな注目を集めているのかが分かる出来事と言えるでしょう。

満を持しての発売と驚異的な熱狂

発売まで1週間を切った3月17日には、国別のリリーススケジュールも発表。日本(東京)は3月24日午前2時になることが明かされました。

そして同日、ついに製品版がリリース。

合わせて海外インディーゲームの日本市場向けローカライズ、リリース支援を行っている「架け橋ゲームズ」が日本語版のローカライズを、テキスト全般の翻訳を翻訳者の伊東龍氏が担当していることも発表。伊東氏は「Hollow Knight」、「Dead Cells」、「Pikuniku(ピクニック)」など、国内でも人気の高いインディーゲームを手掛けたことで知られています。

リリース当日にはSteamの同時プレイ人数ランキングのベスト25にランクイン米メディアUploadVRいわく、確認されている「Half-Life Alyx」の最高同時プレイ人数は42,858人で、“VRゲームの中で唯一、ベスト25ランキングと公開されている同時接続人数リストの両方に、タイトル名が掲載された作品”であることも報じられました。

また、動画配信サービスのTwitchでは3月23日、「Half-Life Alyx」をプレイする各ゲーム配信を最大で約30万人が同時視聴したことも確認。「フォートナイト(約11万人)」、「Call of Duty: Warzone(約29万人)」の最大同時視聴者数を上回る数字とのことです。

直近のSteamのユーザー高評価ランキングトップ10にも10位にランクインしています。

VTuberの間でも話題に。そして、意外な遊びを提案するユーザーも。

VTuber(バーチャルユーチューバー)たちの間でも「Half-Life: Alyx」が話題となりました。

双子VTuberおめがシスターズは、本作をおめがレイさんがプレイし、その様子をおめがリオさんがツッコミを入れる動画を投稿。進行先の倒れたゾンビにビビり、エイリアンの巣を「嫌すぎる」と直球でコメントするなど、予想以上の怖さに翻弄される様子が見れます。特にヘッドクラブに襲われ、パニック状態になるシーンは必見です。

にじさんじの中でもFPSが上手いことで知られるさんも、面白いとの噂を聞きつけてプレイ。他のFPSのプレイ経験を得て獲得したスキルを駆使し、コンバインたちを倒し、探索もスムーズに進めていく華麗なプレイ模様を見られます。

さらに本作を思わぬ方向に活用するケースも。

新型コロナウイルスの感染拡大により、世界各国で学校の休校措置が次々と実行、多くの子供たちが自宅待機並びにオンライン授業の受講を余儀なくされる中、なんと「Half-Life: Alyx」で数学の授業を行う動画がYouTubeで公開。授業”を行ったのはCharles Coomberさん(Youtubeチャンネル名)で、ゲーム序盤の温室を舞台に、周囲に置かれたマーカーペンを駆使し、角度の求め方などを解説しています。

そして、やり込みプレイヤーの間ではピアノ演奏がブームに。作中に登場するピアノで、楽曲演奏に挑む動画が複数投稿されています。中にはValve制作の「Portal」の名曲「Still Alive」を演奏するものも。ハンドコントローラー操作の限界に挑むかのような演奏の数々が披露されています。

今なお熱を帯びる中、Valveが次に放つVRゲームとは……?

4月12日にはMoguLiveでライター・葛西 祝氏によるレビューも掲載されました。シリーズが徹底し続けた、その世界の中に入り込んでいると実感させる体験がVRでいかに昇華され、またアリックス・バンスという個性を持つキャラクターを主人公を据えたことによるデメリット、そしてヘッドクラブがいかに可愛く、推しになるほどの進化したかが解説されています。

なお、本作の翻訳を担当された伊東氏いわく、Vavleは日本での「Half-Life: Alyx」の反応を気にしている模様。メディアのレビューに限らず、ユーザー側からも積極的にレビュー、もしくは感想を届けると何かしらの応答があるかもしれません。

以上「Half-Life: Alyx」の発売から発売後の出来事となりますが、ほかにも様々なゲームの検証映像シリーズを投稿している「DefendTheHouse」がNPCへの落書きに挑む動画を投稿するなど、発売1ヶ月が経過した今もなお、その熱は冷めようとしていません。Valveも本作以外に2つのVRゲームを制作中と言われ、そのひとつは「Left 4 Dead」のVR版ではないかとの噂も。

これほど大きな注目と話題性を呼んだタイトルを出したValveが、次にどんなアプローチをしてくるのか。改めて、今後の動向が注目される次第です。

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