フィンランドの首都ヘルシンキでは、新型コロナウイルスによる外出禁止を受けて大規模なバーチャルイベントが開催されました。国を挙げてVR導入に取り組む同国では、すでに”コロナ後”を見据えて旅行産業が動き出しています。
約70万人参加の大イベント
2020年、フィンランドのVappu Eve(メーデー前夜に行われるイベント)は”これまでになく平和に”行われました。新型コロナウイルスの影響で外出が禁止される中、市民はオンラインで参加。人気バンドのライブ演奏を楽しみました。
バーチャルライブ鑑賞には46万台のPCが使われ、控えめに考えて1台あたり1.5人のユーザーが利用したとしても、およそ70万人の視聴者がいたことになります。また視聴者のうち、14万9,403人は自作のアバターとして参加しました。
2018年から取り組む「VRヘルシンキ」
VRを用いたフィンランドの取組は、これが初めてではありません。同国は2018年より、首都ヘルシンキをすべてデジタルで再現する「バーチャルヘルシンキ」のプロジェクトを開始。世界のどこにいても、観光名所等を体験できるコンテンツを作成してきました。
そこに発生したのが、新型コロナウイルスに伴うロックダウンでした。「我々は、バーチャルヘルシンキを地域社会でも活用できると気が付きました」とプロジェクトの関係者は話します。VRヘルシンキのプラットフォームにアバター機能等を追加し、Vappu Eveのイベントへと繋げたのです。
コロナ流行収束後、旅行体験の変化は?
今回の試みは成功を収めましたが、では「バーチャルヘルシンキ」の真の狙いはどこにあるのでしょうか?
新型コロナウイルスの流行により、人々が旅行をすることは困難になっています。バーチャルツアーは、旅行体験の完全な代替ではないかもしれません。しかし、実際にはできない新しい体験をもたらせると、ヘルシンキは期待しています。
そして人々が再び移動できるようになった時には、バーチャルだけでなく実際に現地を訪れてほしいとも言います。「このアイディアは、ここ(フィンランド)への旅に加え、旅行者に新たに都市を体験する手段を提供する、というものです」「コロナ後の消費者の行動は大きく変わると予想されます。旅行することはやめないでしょうが、その理由は変わります。”なぜ”そこに行くかが、より重要になります。将来の旅行産業の勝者は、旅行者の価値観を理解し、それに合うものを提供できる場所です」ヘルシンキのマーケティング代表はこう話しました。
この考え方については、イギリス、マンチェスター・メトロポリタン大学のTimothy Jung氏が次のように説明しています。「VRの役割は増していきます」「旅行産業は将来、ハイブリッド体験ー現実とバーチャルの組み合わせーについて考えなければならないかもしれません。そしてこの強制的な外出自粛の後、人々は交流や生活を楽しむ代替手段としてのバーチャル体験に、よりオープンになるでしょう。旅行体験の中で、ニューノーマルとして受け入れられる可能性もあります」
下記記事でも、「VRヘルシンキ」の取組やフィンランドの現地レポートを掲載しています。
(参考)The Guardian